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麗しのヴァンパイア

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第百三十話

                  第百三十話  出会い
 カーミラは姿を消させた使い魔達を連れてそのうえで夜の神戸の街を歩いていっていた。その中でだった。
 目の前に一人バーから出た女を見た、その女はかなり泥酔しており顔は真っ赤でしかも足取りも怪しかった。
 その女を見てだ、カーミラは言った。
「随分酔っているわね」
「泥酔と言っていいですね」
「今十一時半ですが」
「仕事が終わって今まで飲んでいたのでしょうか」
 見れば膝までのスカートでコートという恰好だ、黒髪は長く伸ばしていて切れ長の黒い目と紅の唇は艶やかだ。
「見たところ中々の美人ですが」
「相当無理な飲み方をした様ですね」
「足取りがふらふらしています」
「あの酔い方をみますと」
「間違いなく何かありましたね」
「あの目は」
 女の目を見てだ、カーミラは言った。
「泣いていたわね」
「そういえば赤いですね」
「瞼も腫れています」
「酔ってあの瞼を腫らすまで泣くとなると」
「それは」
「失恋ね」
 すぐにだ、カーミラは看破した。
「これは」
「やはりそうですか」
「失恋ですか」
「そしてその傷を癒す為に」
「飲んでいたのですね」
「そうね、しかも」
 カーミラは悠然としたいつもの態度を崩さなかった、だがそれでも目にあるものは強くさせて言うのだった。
「酷い失恋の仕方をしたわね」
「それはよくないですね」
「今日で吹っ切れたらいいですが」
「失恋の傷は時として深くなります」
「そして心を蝕みます」
「私は恋愛は好きよ、けれど」
 それでもと言うのだった。
「失恋は嫌いよ」
「だからですね」
「この度はですね」
「ええ、すぐにね」
 まさにと言うのだった。
「声をかけるわ」
「そうされますね」
「これから」
「ええ、そうするわ」
 こう言ってだ、カーミラは泥酔状態の美女の方に足を進めた。これがこの夜のカーミラの物語のはじまりだった。


第百三十話   完


                2019・2・6 
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