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戦国異伝供書

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第三十六話 越後の次男その十三

「大うつけどころかな」
「左様ですな」
「名君ではないか」
「それがしもそう思いました」
「左様じゃな」
「若しかすると」 
 その織田家の大うつけはというのだ。
「大業を為す」
「そこまでの者か」
「そうも思いました」
「左様か」
「尾張でもそう言われていますが」
 しかしと言うのだった。
「家臣はまとまり民達もです」
「慕っておるか」
「善政をしているので」
 それ故にというのだ。
「そうなっておりまする」
「民を観ればじゃ」
 それでとだ、宇佐美は述べた。
「おおよそのことはわかるが」
「では」
「うむ、これからもじゃ」
「尾張のことはですか」
「他の家のこともじゃが」
 それに加えてというのだ。
「尾張もじゃ」
 是非にと言うのだった。
「見ていこう」
「では」
 こうしてだった、宇佐美は信長についても観る様にした。このことを晴景そして景虎にもいうとこれがだった。
 景虎がこう言ったのだった。
「尾張の織田殿ですね」
「ご存知ですか」
「名は聞いています」
 こう言うのだった。
「わたくしも」
「そうでしたか」
「少しですが」
「大うつけと」
「はい、しかし」
 それでもというのだった。
「わたくしは違うと思います」
「大うつけとはですか」
「あの方は傑物です」
 こう言うのだった。
「天下に轟く」
「そこまでの方ですか」
「今は確かにあまりです」
「名は知られておらず」
「知っていてもです」
 それでもというのだ。
「大うつけですが」
「大きな間違いで」
「その実はです」
「かなりの方ですか」
「そう思います」
 これが景虎の見立てだった。
「あの方が天下を正す為に動かれれば」
「かなりのことになりますか」
「この乱れた天下をです」
 まさにというのだ。
「正しきものにです」
「されると」
「はい、そしてそれはです」
 景虎はさらに話した。
「甲斐の武田殿もです」
「武田太郎殿もですか」
「あの御仁も心が正しく」
 そしてというのだ。
「そのお力をよき方向に使われれば」
「天下の戦乱をですか」
「収められますでは」
「ではこのお二人方は」
「私は是非です」
 まさにというのだ。
「力を貸して頂きたいとです」
「思われていますか」
「左様です」
 まさにというのだ。 
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