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ヒュアデスの銀狼

作者:蜜柑ブタ
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SS6  悪い子(魔女)は、オオカミのお腹の中

 
前書き
ユウリ編。

原作介入。

ユウリ(あいり)が可哀想かも、注意。

あとグロ注意。

腕欠損とか、臓物とか……。 

 

 結果から言えば、魔女に飲み込まれたカオルと海香は助かった。
 しかし、確実に消耗しているのは分かる。
 プレイアデス聖団は、ジュウべえを使い、ソウルジェムの浄化を図っているが……、浄化されているのは表面だけだ。そのことに彼女らは気づいていない。
 いずれ、突然破綻するだろうとカンナは笑っていた。
 そして、プレイアデス聖団に恨みを持つ魔法少女ユウリが、かずみを攫い、プレイアデス聖団に復讐を果たそうと動き出した。
「いいのか? かずみが傷つく。」
「……限界そうだね。アイツ(ユウリ)はもうダメだ。」
 ソウルジェムの浄化を知らないユウリは、限界が近づいていた。
 彼女は憎しみと怒りがが突出しており、自分の限界が近いことに気づいていない。いや、無視している。
「カズ。気配も魔力も全て消して近づいておいて。いつでもかずみを奪えるように。やり方は…分かってるでしょ? 練習したじゃない。」
「分かった。」
 カズは、空間に穴を空け、そこに入ると、そのまま移動を開始した。





***





 ユウリが張ったバリアの中に侵入する。
 今まで喰らった魔女達の力を使えば、それぐらい容易い。

 かずみ…。

 カズは、自らの結界の中から、近距離から見えるかずみを見ていた。
 本来なら、彼女のようなるはずだった自分。かずみになれなかった自分。そんな想いが脳を駆け巡る。
 しかし、やるべきことはある。
 ユウリが自身の正体を明かした。
 ユウリは、かつてプレイアデス聖団に殺されたと言った。

 ああ…分かったよ。

 匂いで分かる。彼女は、“ユウリ”ではない。
 ユウリの姿を引き継いだ、あいりという人物だ。
 ユウリの姿を見て動揺しているプレイアデス聖団に見せつけるように、ユウリ(あいり)がイーブルナッツをかずみの額に押し当てようとした。
 マルフィカ・ファレスであるかずみなら、イーブルナッツでは、変異しないだろう。だが確実に魔女化への近道になる。

 今…。


『悪い子は、オオカミに食べられちゃうよ』


 その声と共に、空間を開き、オオカミの魔獣へと変化したカズが、口を出した。

「えっ?」

 ユウリが、そしてかずみが、プレイアデス聖団がポカンッとする。
 そして、イーブルナッツを持っているユウリ(あいり)の腕を噛んだ。
「な…、があああああああ!?」

「な、なに!?」

「お…オオカミ?」

 カズに腕を噛まれて狂乱するユウリ(あいり)。
 拘束された状態で困惑するかずみ。
 空間に空いた穴から出たオオカミの口を見て驚くプレイアデス聖団。
 それぞれが、反応する中、カズがヌウッと姿を現わした。
「まさか、あれが…!? オオカミの魔獣!?」
 大きな銀色のオオカミの姿、しかし大きなヤギの角と、背中の鳥の翼。
「魔獣だぁぁぁぁ!? 邪魔しやがって、ころ…っ、ぐがあああああ!?」
 カズは、噛みついていたユウリ(あいり)の腕をかみ砕き、噛み千切った。
 ぼう然としていたかずみの顔に、ユウリ(あいり)の血が降りかかる。
「ぶち殺す!!」
 ユウリ(あいり)が残されたもう片手に銃を握り、乱射した。
 パスパスっと、カズの体に命中する。だが微動だにしないし、傷つきもしない。それを見たユウリ(あいり)は、目を見開き顔を青くした。
 その直後、カズの前足の爪がユウリ(あいり)の胸から腹にかけて、斜めに切り裂いた。
「あああああああああああ!! な…んで? なんでだあああああああ!?」
「逃げてユウリ!」
「なっ。」
 その時、拘束から逃れたかずみがユウリの前に立った。
「かずみ、逃げろ! そいつは…。」

『かずみ、そこをどけ。』

「えっ!?」
「喋った!?」
「…まずい。」
 ニコが無表情な顔で言った。
「ユウリのソウルジェムが、孵る。」
「うがああああああああああああああああああああああああああああ!?」
 臓物を振り乱し、血を撒き散らしながら、ユウリ(あいり)が頭を抱えた。
 直後、彼女の体からソウルジェムが離れ、落ちた。
 それは、あっという間にグリーフシードに変わった。
 そして、凄まじい光が天へ向かって伸びた。
 カズは、黙って見ていた。
 そして、景色が変わり、十字架の磔にかずみ達が張り付けられて拘束された。
「なんで? どうして? なんでソウルジェムから、魔女が!?」
 かずみが目の前にいる、ハートのような姿をし、プチプチと鳴く魔女を見て驚愕していた。
「ねえ、どうしてなの!? うっ!?」
 仲間達に問いかけようとしたとき、茨のような影が伸びて、彼女らの体に絡みついた。
 そして流れ込んでくるのは、ユウリとなった、あいりの記憶。
 それは、あいりがかつて不治の病に冒されたが、ユウリが密かに魔法少女となる代わりに病を完治させたことを知らず、そしてユウリが魔女へと変じてしまった姿だと知らずにその魔女を倒したプレイアデス聖団にお礼を言ってしまったことを、その跡間もなく知って悔い、そして彼女らに復讐するため自分自身をユウリにしてくれという願いによって魔法少女へとなったということだった。
 だが、カズには、そんなことはどうでもよかった。
 あいりがプレイアデス聖団に恨みを持つのは別にいい。
 すべては、カンナのために。
 カズは、あいりの記憶に苦しむかずみをチラリと見た。
 …自分がやるべき事は変わらない。
 プチプチと鳴くハート型の魔女が、電源コードのような腕を伸ばしてきた。
 カズは、それを前足で切り裂き、そして魔女に飛びついた。
 暴れる魔女を体重を増加させて押さえ込み、噛みつき、さらに前足の爪でズタズタに引き裂く。
「やめてえええええええええ!!」
 その時、かずみの悲鳴じみた叫びが聞こえて、カズはつい手を止めてしまった。
「あいりを殺さないで、お願い!」
 拘束から逃れたかずみがカズの後ろ足に抱きついて引き離そうとした。
 魔女・あいりは、カズの下でプチ…プ…チ…っと弱々しい鳴き声を漏らしている。あと少しで死ぬ。
 カズは、かずみの泣き顔に、魔女・あいりの上からどきそうになったが。
『……それは、できない。』
「どうして!?」
『お前の…ためでもある。』
「えっ?」
 キョトンとするかずみ。
 顔を前へ向けたカズは、下を向いて、口をパカッと開けて、灼熱の火球を吐いた。
 大爆発が起こり、魔女・あいりが炎上する。
「あいりーーーーー!!」
 かずみが泣き叫ぶ。
 そして、カランコロンっと、グリーフシードが落ちた。
 そのグリーフシードを、舌で広い、口に運んでガリッボリッとかみ砕いた。
 駆け巡る痛みを口に出しかけるが耐え、カズは、翼を広げた。途端、中空に結界の穴が空き、そこにカズは飛び込んだ。
「うわああああああああああ!!」
 カズは、かずみの泣き叫ぶ声を聞きながら、結界を通って、カンナの元へ戻った。





***





 ビルの屋上で待機していたカンナのもとへ戻った途端、人間の姿へと戻ったカズは、倒れ込んだ。
「…よく頑張ったね。でも、かずみを奪ってこれなかったから80点ってところかな。」
「…ごめん。」
「でもまあ…、今のかずみを連れてきても、アイツらの所に舞い戻っちゃうだろうし…、真実を知ってもらうしかないか。」
「真実は…辛い…。」
「でも、ヒュアデスの世界に連れて行くためには必要な試練だよ。私が味わったようにね。」
 カンナは、倒れているカズの傍に来て、膝をついた。
「さあ、立って。カズ。まだまだこれからなんだよ。」
「うん…。」
 カズは、無理矢理立ち上がった。
 そして、腰に手を置いて、はあ…っと息を吐く。苦しみは少ない。慣れてきたのだろうか?
「次の手は打ってあるから、さあ、行こう。」
「うん。」
 カンナの手を握り、カズは翼を広げて飛んだ。
「う、ん?」
「どうしたの?」
「腹に……。うぇ。」
 カズは、ペッと何かを吐き出した。

 それは、金色のスプーンだった……。
 胃液と、唾液まみれの金色のスプーンは、誰もいないビルの屋上に落ちて、誰にも拾われることなく空しく残された。

 
 

 
後書き
ユウリ(あいり)…、最初の予定じゃこうじゃなくて、原作通りだったんだけど、どうしてこうなった?

オオカミの魔獣の姿お披露目。でもかずみそっくりの顔は見せてないので正体はまだ知られていない。


かずみも、あいりの仇と、オオカミの魔獣に敵対意識を持つと思う。 
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