ある晴れた日に
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176部分:輝けダイアモンドその十
輝けダイアモンドその十
「荘麗っていうのか?これって」
「そうかも。それじゃあね」
「ああ、中に入るか」
「そういうこと。入りましょう」
「わかったさ」
未晴の言葉を受けて建物の中に入る。白いその物々しさすらあるその階段を二人で登っていく。そのうえで扉をくぐる。扉はイギリス風のものだがそれでも白く塗られ建物の色になっていた。二人はその扉を開けて中に入るがその中はギリシア風から一転していた。
「!?ええと、こりゃ何だ?」
「ギリシアじゃないわよね」
「ああ、どちかっていうと」
「イギリス?」
未晴が言った。
「階段とかね」
「そうだよな」
二人の目の前には階段があった。ブラウンの木造のそれは床と同じ色である。その色の真鍮の手すりのある階段が二階と一階をつなげていた。二人がいるのは一階であり上に吹き抜けを囲むようにして配されているダークブラウンの扉が幾つも見えた。
「どの部屋かしら」
「その申請する部屋だよな」
「ええ。けれど二階見たら」
「どの部屋かわからねえよな」
「そうよね。何処かしら」
「ええと。一階も部屋が多いな」
正道は一階も見た。ここも奥に向けて扉が連なっている。上が白で下がブラウンのこの建物の中でダークブラウンのその扉が連なっているのだった。
「本当に何処が何処かわからないな」
「けれど。ここにあるのよね」
「話じゃな」
これは前以って聞いていて確かめていることであった。
「ここだよ」
「けれど。こんなのじゃ」
「何処にあるかわからないな」
「誰かに聞いてみる?」
未晴はここでこう提案してみた。
「誰か。いたらいいけれど」
「ああ、あそこ」
正道が言った。
「あそこな」
「あそこ?」
「ほら、窓口」
彼が指差したのは二人から見てすぐ右手であった。見ればそこに窓口があった。ガラスの窓は下半分が空いていてそこから若い女の人の顔が見えた。
「あそこで聞こうぜ」
「窓口あったの」
未晴もここではじめて気付いたのだった。
「何だ。それだったら」
「ああ。すいません」
正道が早速窓口のその女の人に声をかけた。
「ちょっと御聞きしたいことがあるんですけれど」
「何でしょうか」
女の人は無表情だった。その顔で事務的な調子で彼に応えてきた。
「俺達ですね」
「はい」
「八条中央高校の生徒なんですけれど」
「八条中央高校のですか」
「はい。実はうちの学校で演劇会がありまして」
「それでしたらこちらです」
演劇会の話が出ると即答であった。
「衣装及び道具の貸し借りの許可はここで行っています」
「あれっ、ここでなんですか」
「そうです」
やはり事務的な返答であった。
「ここで行っていますので。書類も用意してあります」
「そうなんですか」
正道は話が急に進んだので内心呆気に取られていた。
「ここで手続きが出来るんですか」
「そうです。はい」
女の人は彼に言葉を返すと共に書類を出して前に置いた。
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