ある晴れた日に
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167部分:輝けダイアモンドその一
輝けダイアモンドその一
輝けダイアモンド
「ふうん」
「こんなお話なの」
その助六を皆で観てだった。観終わるとまず主役を務める二人が言った。
「何か私のやる役って思ったよりずっと派手ね」
「私があの服を着るのね」
「服はあるらしいよ」
ここで加山が皆に話す。
「衣装も舞台もお金の心配はいらないからって」
「またどうしてなの?」
「ほら、八条学園」
この辺りの学校の中心的存在のその学園だ。この学校にしろ公立は公立なのだがそれでも実際は姉妹校と言ってもいい関係にあるのである。
「あそこが衣装とか貸してくれるから」
「そうなの」
「うん。だからそちらは心配しないでいいって」
こう言うのであった。
「全くね」
「それはいいけれど」
「それにしてもね」
明日夢も凛もそれは納得した。しかしそれでも言うのであった。
「けれど。本当に何でもあるのね、あそこには」
「しかも気軽に貸し出してくれるなんて」
「うちの学校とあの学園の関係ってそんなに深いんだ」
桐生もそのことをあらためて知ったという感じだった。
「何か。意外っていうか何て言うか」
「別に意外でもないんじゃないの?」
ところがここで咲が彼に言ってきた。
「それって」
「そうなの?」
「桐生君の家だって確かあれでしょ?」
「うん。叔父さんが八条銀行の支店長で親父は八条リーグのフロントにいるよ」
八条グループだけで野球リーグも持っているのだ。独立リーグ扱いである。
「ああ、そういえば皆何だかんだで八条グループと縁あるんだね」
「あたしの姉貴だって八条大学だしな」
今度は春華が言った。
「他の皆もそうか」
「それに」
ここでこうした場面では沈黙する主義の江夏先生が言ってきた。
「あのグループは気前がいいのよ」
「それでですか」
「そういうこと。まあそのおかげでお芝居がやり易くていいじゃない」
「確かに」
「とりあえずこれで衣装と舞台の心配はいらないわ」
「わかりました」
この問題はあっさりと解決されたのであった。話はそのうえでさらに進む。
「じゃあ後はどういうのかわかった?」
「ああ、何となくだけれどな」
明日夢の問いに答えたのは野茂だった。
「わかることはわかったぜ」
「とりあえず俺達のやることはな」
「おおよそな」
「脚本は?」
「今書いてるところだよ」
竹山が答える。
「それももう終わるかな」
「早いわね、また」
「書くのは速い方なんだ」
明日夢の問いに答え続ける竹山だった。
「それにこれ全部書くってわけじゃないしね」
「所々カットするのね」
「そうじゃないと。学校のお芝居だから」
だからそんなに長くはできないということであった。
「だからね。そういうことでね」
「けれどそんなにやたらにカットしなくてもよさそうよね」
凛がここで言った。
「この長さだと」
「そうだよね。いけんじゃね?」
今度は佐々が言った。
「この長さだとそんなにカットしなくてもよ」
「まあそうだね」
それは竹山も否定はしなかった。
「細かいところだけかな。もう一回チェックしてみるよ」
「けれどそれだと脚本遅れない?」
奈々瀬はそこが少し心配になった。
「だったら結構まずいけれど」
「ああ、それも大丈夫だから」
しかし竹山はそれも安心するように話すのだった。
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