ある晴れた日に
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155部分:共に生きその五
共に生きその五
「それは歌舞伎でも同じなんだよ」
「じゃあ特にそこまでこだわらなくていいってこと?」
「つまりは」
「そう、そういうことなんだ」
穏やかに笑って皆に言うのだった。
「その辺りはね」
「じゃあまずは江戸時代の服ならいいってことね」
「本当にいい加減ね」
「あとあらすじに突っ込んだら駄目だよ」
今度はあらすじについてであった。
「それもね。絶対にね」
「ちょっと待ってよ」
その言葉には桐生がすぐに言ってきた。
「あらすじに突っ込んだら駄目って」
「歌舞伎じゃ生き別れが凄く多いから」
その桐生に対して述べた言葉だった。
「それも物凄く偶然に会うから」
「そうなの」
「歌舞伎の世界って凄く狭いんだ」
これは作品の中での世界ということである。歌舞伎の特徴の一つであるがその世界は極めて狭い。とかく人が偶然に出会い再会するのである。
「だからそういうところはね」
「いちいち突っ込まないの」
「奈良県に追お寿司屋さんがあったりするし」
「それって普通じゃないの?」
咲がお寿司には言った。
「普通にあるじゃない。何処にも」
「その頃冷凍とかできなかったぞ」
食堂をやっている佐々がその咲に言ってきた。
「それでどうやって生魚とか扱うんだよ」
「あっ、そうか」
「そうだよ。っていうか御前将来和菓子屋の家に嫁さんで入るんだろ?」
「まあね」
それを言われると急にのろけた感じになる咲だった。
「まだ正式には決まってないけれどパパ同士が許婚にって」
「じゃあ余計にそういうの覚えておけよ。冷凍技術なかったらそういうのできねえだろうが」
「そういえばそうよね」
「わかったな。ったく今と昔じゃ違うんだよ」
佐々の口が尖っていた。
「そういうのがあるのとないのとで全然違うんだよ」
「わかったわ。山月堂ってケーキも扱ってるし」
「うちも仕入れてるしね」
スタープラチナの看板娘の言葉だ。
「美味しいわよ。実際に評判だし」
「一つ勉強になったわ」
「まあとにかく。そういうところはね」
また竹山が皆に対して話しだした。
「考えたら負けだから」
「負けなのね」
「そう、負けだから」
そこを強調するのだった。
「考えても仕方のないことだからね」
「わかりたくはないけれどわかったわ」
「俺も」
皆このこともそれでかなり無理をして納得することにした。そうしてそのうえでまた竹山に対して尋ねた。
「まあそれでもオタク大王よ」
「何、その仇名」
今度は竹山から春華に突っ込みを入れた。
「はじめて聞くけれど」
「ああ、今ちょっと考えたんだよ」
こう彼に返す春華だった。
「どうだよ。いい仇名じゃね?」
「何か今一つっていうかできれば聞きたくない仇名だね」
「そっか。大王なんだけれどな」
「大王って言ったら変な感じがするから」
実際に彼はその目を不快げにさせている。
「いいよ。それはね」
「そっか。じゃあ没にしとくな」
「そうしてもらうと助かるよ」
「じゃあよ。竹の子山」
「うん」
今度の名前はまあいいとするのだった。
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