ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第99話:Weapons Stockpile
通信から10分後、ハンターベースにルナが駆るハーネットカスタムが到着した。
彼女の乗るハーネットカスタムはレプリフォース大戦後、使い捨てられたハーネットを回収して魔改造を施したことで、アディオンに匹敵する速度と、ハーネットの高い操作性を併せ持つ機体となったのだ。
モニターで見ていたルインはルナのハーネットカスタムを見て感嘆する。
「ルナって本当に凄い技術者なんだね」
「そうだね、彼女は優秀な技術者…特に武器関連の製作に関してはこの時代で彼女の右に出る者はいないだろう。断言してもいい」
「あなたが素直にそう言うなんてね…」
ハーネットカスタムから降りると、ルナがハンターベースに入り、エックス達が彼女を迎え入れた。
「おう、ハンターベースの諸君。お出迎えご苦労さん」
ヒラヒラと手を振りながら言うルナに、エックス達は苦笑した。
「やあ、ルナ…今回は頼りにしているよ」
「おう、で?その頼みの綱のエニグマとやらはどこにあるんだよ?」
「あれがそうだ。」
ダグラスが指差した方向を見遣ると、空に向けられている巨大な砲身が見えた。
「あれが、ギガ粒子砲・エニグマか…ふむ、どうやら100年前に建造されたのが幸いしたようだな。流石のシグマウィルスも100年前の骨董品に感染することは出来なかったようだな…しかし、オンボロ過ぎるぜ。曲がりなりにも貴重な大気圏外への砲撃が出来る兵器なんだから整備くらいしとけよ」
「……それについては返す言葉もないな…」
彼女の言う通り、きちんと整備をしていればこのようにパーツを集める必要などなかった。
必要ないからとエニグマの整備を怠ったこちらの怠慢が招いた事態だ。
「まあ、今更言っても仕方がねえ、任せとけ。俺のプライドにかけて、エニグマを完璧以上の物にしてみせる」
拳を鳴らしながら言うルナに、頼もしい何かを感じたエックス達はエニグマのパーツを集めに向かう。
「待て!!」
エックス達を呼び止めるルナに疑問符を浮かべる一同だが、エックス、ゼロ、ルインに強化パーツを手渡す。
「これからウィルスまみれの外に出るんだ。そのウィルスバリアとウィルスバスターを持って行け。ウィルスバリアはシグマウィルスの影響を半減させ、ウィルスバスターはバスターに組み込むと実体化したシグマウィルスを破壊することが出来る」
その言葉に全員が目を見開いた。
これさえあればシグマウィルスへの影響を最小限に抑え、より安全にパーツの確保に向かえる。
「あれ?でもウィルスバリアはともかく、ウィルスバスターは抗体ウィルスを武器にインストールすれば良いんじゃないの?」
パーツを見つめながら疑問符を浮かべるルイン。
これと同じ効果を発揮する抗体ウィルスがあるのに何故渡すのか?
「抗体ウィルスは1回しか使えないからね。恐らくそれは武器に組み込めば無制限に使える代物だろう?」
「そう言うこと、ゼロ。修理を頼まれていた武器…トリプルロッドの改良も終わったぜ。トリプルロッドの改良型の武器、チェーンロッド!!」
ルナがゼロに渡したトリプルロッドの改良型はどこからどう見てもゼロが愛用しているZセイバーの柄である。
「普通のZセイバーの柄にしか見えないが?」
「説明は最後まで聞きな。チェーンロッドは鎖状に伸びるロッドの先端に槍がついた武器なんだ。天井や壁に引っ掛けてぶら下がったり、特定の物を引っぱることが出来る。それだけじゃなくてチェーンロッドは強度と柔軟性を併せ持ち、遠心力と“しなり”を獲得することにより凶悪な威力を誇る武器になる。鞭として使った時の威力はライドアーマーの装甲さえ一撃で両断する。あ、普通にセイバーとしても使えるぜ」
「ほう」
「ただなあ、チェーンロッド用のセイバーじゃ、必殺技は使えねえ。あんたのラーニングシステムとリンクしてるようで…時間が足りなかった」
「構わん、バスターとシールドは?」
「バスターショットもシールドブーメランも完璧に修復したぜ。バスターショットには改良を施して、あんたの手から直接エネルギー供給が出来るようにしたからZセイバーの柄をマガジンにしなくてもチャージショットが放てる。出来るだけあんたが昔使っていたバスターと同じ感覚で扱えるようにしてみたから」
「心遣いに感謝する」
ルナから数々の武器を受け取って万全の状態となるゼロ。
因みにチェーンロッド用のセイバーはバックパックの空いている部分に取り付けた。
やろうと思えば二刀流も出来るようになったために近接戦闘での戦い方の幅が広がった。
「よし!それじゃあ、まずは今の段階で出来ることをやろうぜゲイト!!オッサン!!」
「ああ」
「(オ、オッサン…)ああ、そうだな」
地味に気にしていたことを言われてショックを受けるダグラスであった。
そしてハンターベースを出たルインは、グリズリーの武器密売の秘密倉庫に向かっていた。
倉庫にエニグマの補強パーツの1つであるオリハルコンが存在する為である。
真夜中を猛スピードでトラックが走り、辺りに地面の土塊と騒音を撒き散らしている。
『暴走するトラックを追跡して。秘密の倉庫に辿り着くはずよ』
エイリアの通信に従って、ひたすらトラック上を駆け抜ける。
グリズリーが所有するオリハルコンは希少な金属で、国家と国際企業の間で高値で取引されている代物だ。
どういった経路で入手したのかは不明だが、それがこちらに渡れば、エニグマの強化に大きく関わる。
オリハルコンは現在一番硬度が高いと言われるセラミカルチタン合金よりも硬い。
それだけでなく、熱伝導率が極めて0に近いという、伝説の金属の名に相応しい理想の性質を持っていた。
ルナによるとこれをエニグマの砲身の強化だけではなく、オリハルコンの性質をエンジンに応用することでダグラスが予想していた出力の3倍以上になると言う。
ゲイトもオリハルコンを他に使えないかと考えを巡らせている最中である。
「それにしても、グリズリーはどうして貴重なオリハルコンを大量に所持してるんだろうね?オリハルコンはハンターベースにだってないのにさ」
貴重な金属を大量に所有しているグリズリーに対して疑問が浮かぶ。
『そうね…確か…戦力が集中しないように、レプリフォースやエネルギー研究所に預けられたらしいわ。100年前の過去の大戦では、1人の科学者が莫大な資金と資源、兵器を所持していたために起こった…再来を防ぐためにパーツが分散されたという説があるわ』
「へえ…とにかく急がないとね…行くよ!!」
HXアーマーに換装して、エアダッシュを駆使して一気に突き進む。
トラックの動力炉のコアは光線を放つ機能を併せ持っていたために、破壊は容易ではなかった。
「プラズマサイクロン!!」
光線をかわしながらトラックのコアに電磁竜巻を叩き込んで破壊する。
何とかトラックの暴走を止めることが出来たが、暴走を止めたら止めたで、爆発のカウントダウンが始まった。
大破していくトラックをエアダッシュとダッシュを駆使して駆け抜けると、別のトラックに突っ込む直前に離脱した。
「あ…危なかったあ」
着地して前を向くと、洞窟の前にいた。
恐らくはここがグリズリーの拠点なのだろう。
『大丈夫ルイン?この先に強力なエネルギー反応があるわ…気をつけて』
「うん…」
洞窟の中は土壁で作られた要塞で、暴走トラックやメカニロイドが迫り来るが、ルインがXアーマーに換装して即座にダブルチャージショットで破壊した。
要塞内を突き進むと、ふと見慣れたカプセルが視界を過ぎった。
「ライト博士?」
カプセルに近づくと、ルインの前にライト博士のホログラムが現れた。
『ルインよ。またしても大変なことになってしまったようじゃ…レプリロイドにとってウィルスまみれの現状は正に地獄じゃ!!今までのようにパーツをこの場で作成するのはウィルスの危険があって不可能…安全な場所でプログラムを解析し、パーツを作成するのじゃ。聞こえるかねエイリア?』
『はい、ライト博士』
ルインの通信機越しからエイリアがライト博士の問いに答えた。
『君ならこのプログラムを解析出来るはずじゃ、出来れば全てのプログラムが集まった時にパーツを完成させて欲しい。万が一、世界の希望を邪悪な意思に奪われないためにも』
『分かりました。ルイン、ライト博士からプログラムを受け取ったらすぐに転送して頂戴』
「エイリアに渡せばいいの?…分かりました。プログラムを受け取ります。」
『このカプセルにはファルコンアーマーのフットパーツのパーツファイルがある。ファルコンアーマーは君が使用しているHXアーマーを参考にしている。このフットパーツを装着すれば自由に天を翔け、全身を纏うエネルギーフィールドで敵の攻撃を防ぎ、体当たり攻撃を仕掛けることも可能だ。その名も“フリームーブ”』
ルイン「(つまり…今度は私のHXアーマーと同じで空を飛ぶアーマーって事だね。HXアーマー以上の空戦能力なんて最早何でも有りだねエックス…)」
『わしの息子を頼んだよルイン、エイリア。エックスはロックやブルースのように無理をして、色々と溜め込みやすい』
「はい」
『分かりました』
カプセルに入ると表面にFと刻まれたパーツファイルを入手したルインはライト博士に頭を下げた後、パーツファイルをハンターベースに転送してグリズリーの元に向かう。
そして秘密倉庫の最奥部に着いたルインは辺りを見回したが、誰もいない。
「いない…?あの情報、デマじゃないよね…?あの~、すみませ~ん!!グリズリー、いるなら出て来て下さ~い!!」
あまりにも原始的だが、他に方法がないために声を上げてみる。
すると真上の天井が崩れ、そこから目当ての人物であるグリズリーが現れた。
「誰かと思って来てみたら、噂に名高いルインとは…何とも光栄なことだ」
「あなたがクレッセント・グリズリーですか?」
「そうだ。ルイン、お前の噂は聞いているぞ。同じレプリロイドとしてエックス同様に尊敬している。それで?一体俺に何の用だ?まあ…、イレギュラーハンターが武器ブローカーの俺の前に現れる理由など1つしかないだろうが…」
闘志を漲らせ、戦いの呼吸を取りながらルインに変形させたドリルアームを向けるグリズリーに対してルインはHXアーマーから通常形態のZXアーマーに戻ると、セイバーを下ろしてホールドアップの体勢を取る。
「グリズリー、私はあなたと戦うために来たんじゃなくて、あなたが所有しているレアメタルのオリハルコンを求めて来たんです」
「オリハルコンだと?」
「はい、えっと…今、地球に向かって落下しているスペースコロニー・ユーラシアを破壊するために使用する今から100年前に建造されたギガ粒子砲・エニグマの強化に必要なんです。オリハルコンを砲身とエンジンに使えば、エニグマの強度と出力を大幅に上げることが出来る…市場取引価格の倍値に当たる対価も用意しました。つまり、客として来たんです。だから…売ってくれれば嬉しいなあ…って、足りないならお金を後程手配しますから…」
武器ブローカーのグリズリーにルインを向かわせたのは最も上手く交渉が出来そうだったからだ。
次点でエックスだが、彼はマッコイーンのいる海に向かっている。
「成る程な…」
確かにオリハルコン以上に兵器の強化を行うのに相応しい物は存在しない。
100年前のギガ粒子砲なら、最新鋭の大型兵器類に性能が大きく劣るが、オリハルコンをエンジンに応用すれば、熱伝導率がゼロに近いことにより、効率よくエネルギーを生み出すことが出来るだろう。
「いいだろう。オリハルコンはあの奥の扉の方にある。好きなだけ持って行け。ただし…」
猛烈な勢いで繰り出されるドリルアーム。
ルインはその攻撃を察知すると瞬時に後方に跳躍し、まずはグリズリーの先制攻撃を回避した。
「何を…」
「オリハルコンが欲しいなら、俺を倒してみろ。」
「私は戦いに来た訳じゃないんです!!オリハルコンさえ売ってくれれば…すぐにここを…」
「…俺は既にウィルスに侵されている…このままでは俺は正気を失い、イレギュラーとなるだろう。正気のあるうちに俺と戦ってくれないか?意識のないうちにお前と戦いたくはない!!」
「でも…」
「…全て定められたもの…逃げることは出来ない…お前も分かっているはずだ。これも任務じゃないのか?さあ、俺と戦ってくれ!イレギュラーハンター・ルイン!!」
「…分かりました…イレギュラーハンターとして、あなたとの勝負、受けて立ちます!!」
「行くぞ!!」
その巨体に見合わぬ軽やかなステップで跳躍しルインに迫るグリズリー。
「っ!!」
「クレッセントショット!!」
予想外の身軽さに硬直したルインに対して、グリズリーの豪腕から繰り出される三筋の衝撃波がルインに迫る。
「ハッ!!」
その衝撃波の弾道を見極めるとルインはそれをZXセイバーで掻き消した。
そしてセイバーからバスターに切り替え、バスターの銃口をグリズリーへと向ける。
「チャージショット!!」
チャージを終えるのと同時にチャージショットをグリズリーへと放つルイン。
勢い良く放たれたチャージショットの一撃は見事にグリズリーに直撃した。
「がはぁっ!!」
クレッセントショットを放った隙を突かれたグリズリーは回避出来ずにまともに喰らってしまう。
「やるな…だが、この程度で!!」
腕をドリルアームに戻し、それをルインに向けて突き出しながら突進する。
ルインは跳躍してかわし、バスターから再びセイバーに切り替えると落下の勢いを加算してセイバーを振り下ろす。
「はあああっ!!」
「ぬうぅんっ!!」
しかしグリズリーは素早くドリルアームを元の腕に戻し、それを爪で容易く受け止めた。
「っ!?」
「かつて俺は武器の調達のためにこのドリルアームを駆使して数多くの猛者に戦いを挑み、その得物を戦利品として奪い売り捌く事で利益を得ていた。その中には当然、お前のようにセイバーを扱う物もいた。その対策は既にしている」
「ああ、そういえばルナが言ってたね。グリズリーは武器ブローカーとしてじゃなくて、戦士としても一流だって」
「ルナか…あのジャンク屋の娘の…」
「知ってるの?」
「商売の取引相手の1人だ。あいつの造る武器は高性能のメカニロイドのジャンクパーツから造られているからな。」
そうして溜めた貯蓄を元手に政府軍やレプリフォース、各地の武装勢力或いは軍需産業などと提携し、自ら開拓した非合法のルートから大量の武器や兵器を横流ししたグリズリーは、今では世界に名を轟かせる屈指の武器ブローカーとして知られていた。
「次はこちらから行かせて貰う!!」
「え!?」
目を見開くルインの目の前でドリルアームで即座に床面を掘削すると素早く地中へと潜る。
地中への潜行能力があるのは、一部の陸戦型レプリロイドだけであり、そんな特殊な技能まで彼はパーツ集めから入手したのだ。
「(機動力を補うための秘策がこれ…)」
「土竜の真似事は見た目は格好は悪いが結構有効なものだぞルイン。もし生き残れたのなら覚えておけ」
「え!!?」
突如背後の壁を吹き飛ばし、そこから姿を現したグリズリーの爪がルインの背を斬り裂いた。
「ああああああっ!!」
背中にまともに受けたルインは絶叫を上げて倒れ伏す。
だがルインは直ぐさま体勢を立て直すとバスターに切り替えてショットを放ち、反撃を試みる。
「っ…流石に油断ならんな」
しかし素早く顔を引っ込めたグリズリーにはギリギリの所で当たらない。
「今度は……」
今度はルインの足元からドリルアームを構えたグリズリーが姿を現し、高速回転させたドリルを突き出す。
「おおおお!!」
ドリルアームがルインの肩を掠る。
流石に世界中に名を轟かせた武器ブローカーと言おうか。
武力、知力、財力…。
あらゆる力が試されるその世界で生き抜いてきた人物だけに、その実力は特A級クラスである。
しかも決して力任せに能の無い攻撃だけを繰り出してくる事をせず、自らの性能を最大限に活かす戦法を取ってくる強敵だった。
ルインは気を落ち着けてグリズリーの現在位置を把握しようとする。
地中を掘り進み、移動するその速度は背部のバーニアを併用しているためか恐ろしく速い。
しかも…。
「うおおおお!!」
地中から大型バーニアを活かした突進を繰り出すグリズリーを間一髪でかわすが、すぐに別の場所から突進を繰り出して来る。
「(速い!!)」
大型バーニアの恩恵で直線的なスピードは凄まじく、更に地中の中にいるためにどこから出て来るのか分からない。
なら、全ての感覚を研ぎ澄ませ、グリズリーの気配を探るしかない。
僅かに聞こえてくるドリル音の発生源は自身の真上で、ルインはFXアーマーに換装し、チャージした二丁のナックルバスターを真上に向けた。
「ダブルメガトンクラッシュ!!」
崩れた天井から落ちてくるグリズリーに2発の火炎弾を直撃させる。
「ぐおあああ!!?」
火炎弾をまともに受けたグリズリーは勢いよく落下し、地面に叩き付けられた。
「や、やった…」
ようやくまともなダメージを与えられたことに笑みを浮かべるルインに対して、グリズリーも笑みを浮かべた。
「流石だな…だが、俺も全ての手の内を見せた訳ではない。受けてみろ!俺の最高の技を!!」
そう言って豪腕を翳すグリズリー。
先程放ってきたクレッセントショットの構えと全く同じモーションだ。
放ってきたのも予想通り何の変哲も無いクレッセントショット。
「メガクレッセントショット!!」
しかし今度放ってきたのは先程とは比較にならないくらいにとてつもなく巨大な衝撃波。
「っ!!?」
グリズリーの最強の一撃に目を見開くルイン。
完全に不意を突かれたルインはまともにこれを受けてしまう。
「ーーーーっ!!」
受けたルインは悲鳴すら上げられずに倒れ伏した。
先程とは比べ物にならない巨大な衝撃波をルインは受け、体に刻まれた傷跡から夥しい血液が噴出する。
しかし、ルインは歯を食いしばって何とか立ち上がり、それを見たグリズリーは感嘆した。
「(流石は最強のイレギュラーハンターだ…だが…)」
これで終わらせると言わんばかりに再びメガクレッセントショットの体勢に入るグリズリーに対し、ルインは二丁のバスターを構えて突進する。
「(我が身を捨てての勝負に出るか?面白い!!)メガクレッセント…」
「エディットバスター!!」
グリズリーが爪を振り上げようとした刹那、がら空きとなった脚部に向けて、ショットを放つ。
ショットは不規則な軌道変更をし、グリズリーは回避しきれずに脚部にショットをまともに受けて体勢を崩す。
「ぬぅ!!?」
「たああああっ!!!」
グリズリーの隙を見逃さず、FXアーマーからHXアーマーに換装し、オーバードライブで攻撃力増強とダブルセイバーに属性付与させると、グリズリーの腹部に電撃を纏わせた強烈な斬撃を繰り出す。
「ぐあああああっ!!」
強烈な電撃を纏ったセイバーの斬撃を受けたグリズリーは苦痛のあまり絶叫する。
「これで…終わりだっ!!ダブルチャージショット!!」
とどめにXアーマーに換装してダブルチャージショットをグリズリーに喰らわせ、まともに受けたグリズリーの動力炉を貫いた。
「ぐはっ…流石だ…」
地面に倒れ伏したグリズリーは満足げな笑みを浮かべながら、扉の奥を指差した。
「あそこにある密売用の転送装置を使え…レプリロイドの転送は出来ないが、オリハルコンをハンターベースに転送することは出来る……」
「ありがとう…グリズリー……」
荒く息を吐きながら言うルインは、自身の簡易転送装置が壊れていることに気づいて、心中で溜め息を吐いた。
死期が近いグリズリーは最後に口を開いた。
「お前があのゼロと並び称されたイレギュラーハンターなら…言っておくことがある……」
「え?」
「今からでも遅くはない…ゼロを…あの悪魔をイレギュラーとして破壊するんだ……」
「何で…」
仲間をイレギュラーとして破壊しろと言うグリズリーにルインは思わず目を見開いた。
グリズリーは忌まわしい過去を思い出したのか、苦々しそうに表情を歪めた。
「奴は…危険過ぎる……奴はシグマ以上のイレギュラーだ…。今から大分前の話だが、かつてイレギュラーハンターだったシグマを素手で圧倒した紅いイレギュラー…それが奴の正体だ…俺の傷も奴に付けられた……この俺も赤子扱いされて…命からがら生き延びた後も、あの時のことを一時たりとも忘れたことはない…お前なら…出来る…奴を…ゼ、ロ…を破壊し、ろ…」
そう言うとグリズリーは機能停止した。
ルインはゼロがイレギュラーと言われても信じられず、それを振り払うように踵を返してオリハルコンが保存されている扉を開いた。
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