ある晴れた日に
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
145部分:妙なる調和その十七
妙なる調和その十七
「丁度安橋だよな」
「恵美なの」
「ああ、三人の中じゃ安橋が中心じゃねえか?」
「言われてみればそうかしら」
「そうね」
明日夢と茜は彼のその言葉に顔を見合わせて確認し合うのだった。
「やっぱり。昔から恵美いてくれて助かってるし」
「強いししっかりしてるし助かるし」
「私だって助かってるわよ」
だが恵美はここで静かに微笑んで二人に言うのだった。
「いつも二人がいてくれてね」
「だといいけれど」
「私そんなに役に立ってるかな?」
「少なくともこの連中よりましだろ」
野茂はあからさまに五人を目で見て二人に告げた。
「何て言うかあれだよ。六人のバンドで一人が突出してるってやつだよな」
「バンドかよ」
「イメージ的にはそう感じるんだよ」
また野本は言った。
「見ていたらな」
「じゃあ私等はあれ?」
「三人組のバンドになるのね」
野本の例えを聞いて明日夢と茜は自分達にもそれを当てはめて考えた。
「私がギターで」
「私がベースで」
「私がドラムね」
明日夢と茜だけでなく恵美も続いた。
「それでヴォーカルは三人で」
「そんな感じかしら」
「まあこの連中は適当にやるんだろうけれどな」
「ふん、どうせうち等は適当だよ」
春華は野本の今の言葉にわざとふてくされてみせた。
「けれど未晴がヴォーカルつうんだろ?それだとよ」
「あっ、そこまでは考えてねえよ」
野本はそれは否定したのだった。
「それはな」
「考えてねえのかよ」
「リーダーが竹林ってだけでな」
彼が考えていたのはそういうことだった。
「後は本当に楽器とかは考えてなかったな」
「何だ、そうだったの」
「何かって思ったら」
「リーダーがかなり重要なのは間違いないだろ?」
何故か普段の野本より頭が切れているのだった。
「バンドってよ」
「まあそうだよな」
「それはな」
野茂と坂上が彼の言葉に頷いて賛成してきた。
「御前の言う通りだな」
「やっぱりリーダーだよな」
「そういうことだよ。で、リーダーがいなくなると」
「終わりだな」
坪本はあっさりと言い切った。
「っていうか扇の要なくなったら洒落にならねえぜ」
「竹林さんはそうだね」
桐生も坪本のその言葉に同意して頷いた。
「扇の要だね。本当にね」
「そういえば私達って」
「確かに」
五人も五人で皆の指摘に対して思うところがあるのだった。それで凛と静華が顔を見合わせて言うのだ。
「未晴いない時って何か」
「元気もないし」
「未晴横にいてくれたら頼りになるのよ」
「そうなのよね」
咲と奈々瀬も言う。
「いてくれているだけで」
「何でもないんだけれど」
「だよな。いてくれたらそれだけでいいんだよ」
春華も皆に続く。
「安心できるんだよな」
「そういうのって凄かねえか?」
佐々はここで皆が遂にスパゲティを食べ終えたのを見ながら述べた。
「それだけ頼りにできるってよ」
「そうだよね。そんな人そうはいないよ」
竹山が彼の今の言葉に頷く。
「竹林さんってそういうの考えたら」
「ああ。すげえよな」
「全く」
皆あらためて未晴の凄さを思うのだった。ここで話が一段落した丁度いいタイミングで店にまた一人やって来たのであった。
ページ上へ戻る