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ある晴れた日に

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109部分:谷に走り山に走りその五


谷に走り山に走りその五

「ったくよお、俺のギターはその為だけにあるんじゃねえぞ」
「けれどバラード聴いてたら何か」
「眠くなるのかよ」
「私の癖だけれどね」
「まあそういう奴はいるな」
 正道も彼女のその癖は否定しなかった。
「別にな」
「私は巨人の主題歌聴いたら無性に腹が立つけれど」
 明日夢はここでこう言った。
「これは何なのかしら」
「そりゃ只のアンチ巨人だ」
 そして彼女にはこの一言で済ませた。
「俺もそうだけれどな」
「ああ。やっぱり」
「巨人関係の曲に絶対にやらねえから断言しろ」
 これははっきりと断言した。
「何があってもな」
「っていうかあの曲楽しい?巨人の応援歌」
「死ぬ程むかつくな」
 加山に答えた言葉はこれだった。
「あれ聴いたら大暴れしたくなってくる」
「私より酷いじゃない」
 そのアンチ巨人の明日夢に言われる。確かに彼女よりも悪質である。
「何か聴いた後絶対に変な夢だって見るしな」
「どんな夢?それって」
「ハードゲイSMスカトロのガチホモ軍団に言い寄られる夢だ」
 忌々しげに皆に語る。
「もうな。皮の服に手に鞭だの蝋燭だの持ってな」
「それでスカトロかよ」
「そうさ。バリバリのな」
 話しながら顔に暗鬱たるものを漂わせていく正道だった。
「もうな。朝起きたら汗で身体中な」
「成程な。まあそれはな」
「聞いてるこっちも辛いよ」
「思わず思い浮かべて」
「精神障害になったわよ」
「何であんな夢見たんだ?」
 正道にしてもそれが不思議なのだった。
「全くよお。幾ら巨人の歌が嫌いでもよ」
「それわかったら凄いしよ」
「ああ、それで音橋よ」
「ああ」
 最後に坪本の言葉に顔を向けた。
「夜のキャンプファイアーでもやっぱり持って来るのか?」
「ギターか?」
「それ。どうするんだよ」
「勿論持って行くぜ」
 それは当然と言わんばかりの正道の返事だった。表情もそうなっている。
「当たり前だろ」
「やっぱりな」
 それを聞いて納得した顔で頷く面々だった。
「じゃあ一応期待はしとくからな」
「何でも好きなのやってね」 
 こう言われてその場は終わった。そして夕食と後片付けをしてからそのキャンプファイアーだった。最初は恒例の怪談であった。
「・・・・・・というわけなのよ」
 皆に怪談をしているのは千佳であった。わざわざ火のところに来てマイクで話をしていた。
「お婆さんだと思っていたのが魔女でその女の子は悪魔に」
「うわあ・・・・・・、あっちの怖い話って」
「マジ怖いっての」
 咲と春華が本当に怖そうな顔で聞いていた。皆火を囲んで車座になっている。女の子は体育座りか女の子座りで男は大抵胡坐をかいて座っている。
「っていうか何であっちの話ってねえ」
「ああ。無茶苦茶ハードだよな。幽霊とかでも」
「そうなのよ。私ね」
 その千佳がクラスの皆のところに戻ってきた。そうして話に加わるのだった。
「エドガー=アラン=ポーの小説好きだけれど」
「江戸川乱歩!?」
 咲は名前を聞いてついついこう言ってしまった。
「少年探偵団!?」
「二十面相は特に怖くないよな」
「っていうか面白い」
 野茂と坂上はよく知っているようである。
「あれはな」
「違うのかよ」
「そっちじゃなくてアメリカの小説家の方」
 こう皆に説明する千佳だった。
「そっちがその少年探偵団の人のペンネームの由来だし」
「そうだったのかよ」
「そういや呼び方そのまんまだな」
 野茂と坂上は今の千佳の言葉で納得して頷いた。
「言われてみれば」
「そのものだな」
 これで納得した。確かにそのままであった。
 
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