ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第87話:Cyber Space
ゼロはアイリスと共に拠点に戻り、ルナに武器のメンテナンスを頼むと部屋を後にした。
「……この短期間でよくもまあ、ここまでボロくしたもんだ」
ここまで手荒に扱われるといっそ感心してしまう。
もうちょっと武器の強度を上げようかとルナは思った。
「それにしてもレプリフォースは大分追い詰められてるようだな…まあ、イレギュラーハンター側もただでは済んでねえようだけど」
前に少しばかりハッキングをしてイレギュラーハンター側の状況を調べてみたが、ルインが消息不明になっているらしい。
今はエックスが何とか保たせているらしいが。
「まあ、俺は俺の仕事をするまでさ」
工具を取り出して武器のメンテナンスを始めるルナであった。
凄腕のメカニックでもある彼女は傷んだ箇所を的確に修理していく。
あと少しと言うところで部屋の扉が勢い良く開かれた。
「ルナさん!!」
「い゙っ!?」
勢い良く開かれた扉の音にルナは肩を震わせながら振り返るとアイリスの仲間が息を切らせて立っていた。
「何だ?どうしたんだいきなり?」
「大変なんです!!ムラダの奴が勝手にサイバースペースにダイブして…」
「何だと!?」
詳しい事情は移動しながら聞くとしてルナは部屋から飛び出す。
この拠点のコンピュータールームに急ぐと既にゼロとアイリスの姿もあり、そしてサイバースペースにダイブしたはずの変わり果てた姿となったムラダの姿があった。
「ぐっ、これは…」
「ま、まさか…」
変わり果てたムラダの姿にルナは顔を顰め、アイリスは口元を手で押さえた。
「ムラダです。ムラダのデータをネットにインプットしたら………いきなりウィルスが逆流してきて………」
「無茶だったんだ!戦闘型じゃない我々がサイバースペースにダイブして“バグ”を取り除くなんて!!」
仲間の1人が機材を殴り付けながら叫ぶ。
「お前らはオペレーターとかの後方支援型だもんな」
だからこそレプリフォースから抜け出すことが出来たのかもしれないが。
「このままネットが使えないと……各地の仲間と連絡が取れないで……負傷者の数も分からず、救済活動を続けることが出来ない……戦災はどんどん広がっていく!!何が正しいか分からないけど……人が苦しむのは見たくない……そのために出来ることをしてるだけなのに……」
「仕方ねえな、俺がサイバースペースにダイブして…」
アイリスの言葉にルナはサイバースペースにダイブして“バグ”を取り除こうとするが。
「いや、俺が行こう。サイバースペースには任務で何度かダイブしたことがあるからな…お前はここに敵が来た時、迎撃を頼む」
「へっ、そうかい。聞いたなアイリス?ゼロをサイバースペースにダイブさせる。準備だ!!」
「は、はい!!…ゼロ、ありがとう…」
「気にするな、世話になったからな…借りは返す」
こうしてサイバースペースにはゼロがダイブすることになり、その準備が慌ただしく始まる。
ゼロの電子頭脳にホストコンピュータからの端子が幾つも接続され、アイリス達によって予備のドライブにゼロの精神プログラムが転送されていく。
「それじゃあゼロ。行くわよ?」
「気を付けてな」
「ああ…」
「サイバースペース内では仮想ボディで動けるけど不具合を感じたらすぐに教えてね」
全ての準備が整い、アイリスがEnterキーを押した瞬間にゼロの意識は予備ドライブから、サイバースペースへ飛ばされた。
その頃、ハンターベースでエックス達が慌ただしく動いている時、エックスとルインの部屋では、サイバーエルフ・ソニアが膨れていた。
[退屈だなあ…エックスおとーさんやルインおかーさんも危険だって言って連れてってくれないし…]
チラリとエックスのデスクにある端末を見遣るソニア。
[暇だからサイバースペースに行っちゃえ]
端末からサイバースペースに向かうソニアであった。
そして場所はアイリス達の拠点に戻り、アイリスとルナがオペレートを開始する。
「おーい、ゼロ。武器のデータを転送したけど届いたか?」
Zセイバー、バスターショット、トリプルロッドのデータをサイバースペース内のゼロに転送したルナは無事に届いたかどうかをゼロに尋ねる。
しかしゼロからの返事はない。
「どうしたのゼロ!?ゼロ!?ゼロっ!!」
ゼロから返事が返ってこないことに不安を感じて何度も名前を呼ぶアイリス。
この拠点のコンピューターは旧式でサイバースペース内の様子を見ることが出来ないのだ。
『少し待っていろ!!今、メカニロイドのデータ共と遊んでいるところだからな』
ゼロは転送されたセイバーとバスターでメカニロイドのデータを迎撃していた。
「メカニロイドのデータ?成る程、ムラダの奴がやられた理由が分かったぜ」
『そうだな、これは軍に所属していても非戦闘型の奴らには荷が重いだろうな』
護身のために戦闘訓練は受けているだろうが、戦闘型メカニロイドの相手をするには厳しすぎるだろう。
「よし、ゼロ。俺とアイリスがオペレートするからお前はネットを使えなくしてる悪質な“バグ”をぶっ潰してくれ」
『ああ、分かった』
「お願いねゼロ…ごめんなさい、こんなことをあなたにさせて」
『気にするなアイリス、それに言ったろう。借りは返すとな』
「ゼロ…」
「それじゃあ、今からビーコンを出すからそいつを追ってくれ。“バグ”まで最短ルートで行けるはずだ」
ルナはキーを叩いてサイバースペースのゼロの近くにビーコンを出現させる。
『これか、了解した。』
ゼロはビーコンを追い掛け、サイバースペースの“バグ”の元に向かっていく。
一方、カギキラジャングルではライト博士のカプセルから光が放たれていた。
光の放出が終わると、カプセルからルインが出てきた。
「………OXアーマー…解放」
朱色のアーマーがまるで血を思わせる紅に変わり、見た目の変化は他のアーマー程激しくはない。
武器はセイバーと携帯銃型バスターのバスターショットとオーソドックスな物だが、そのアーマーを纏うルインからは今までとは桁違いの力が発せられていたが…。
『ルイン、私は君が望んだ通りに君に秘められた力を解放した。じゃが、ルイン…上手く言えんが…あまりその力は使わないで欲しい…そのアーマーからは禍々しい力を感じるのじゃ…いずれ君の身を…』
冷たい表情を浮かべたルインはライト博士の言葉を聞き終える前に飛び出してしまった。
『ルイン!!…自分の力不足があそこまであの子を追い詰めてしまうとは…あの子は何も悪くないと言うのに…エックス…どうかあの子を止めてくれ…あのままではあの子に待つのは“滅び”だけじゃ…』
ルインの修理とアーマーの解放を同時進行でやっていた際に、失礼だと思いながらも状況把握のために記憶を見せてもらったライト博士はエックスがルインを救ってくれることを祈った。
そして場所はサイバースペースに戻り、ゼロはメカニロイドのデータを迎撃しながら進んでいたが。
『ゼロ、防衛用プログラムのミル・トラエルの反応があった。ミル・トラエル破壊用ウィルスを武器にインストールからあまり近寄るな…』
「了解…と言いたいところだが…ミル・トラエルがこちらに迫っている」
『何?セイバーかバスターで攻撃して別方向に移動させろ!!ミル・トラエルに捕まったらダメージを喰らうぜ!!』
「チッ!!」
バスターショットを取り出し、ショットを連射してミル・トラエルを別方向に移動させようとするが。
「バスターが効かない!?」
『何だとお!?まさか、“バグ”の影響で別物化してるのか?逃げろゼロ!!』
ゼロはセイバーやロッドでミル・トラエルを弾き飛ばそうとするが全く手応えがない。
いつの間にか迫っていたミル・トラエルに挟まれてしまう。
「ぐっ…普通のミル・トラエルとは違うようだが、何だこの感覚は…!?」
触れていると、どんどん意識が朦朧としていく感覚にゼロは抵抗出来ずに他のミル・トラエルに襲われてしまう。
『ゼロ!しっかりして!!』
「だっ……大丈夫だ」
『大丈夫って……あなたのアイコンが消えかかって…』
『ゼロ、後少しでインストールが終わるからもう少し耐えてくれ!!』
「あ、ああ…分か…った…」
しかしゼロの意識は途切れ、そのままミル・トラエルと共に落下していく。
『ゼロのアイコンが消えちまった…!!』
『………嫌あーーーーっ!!!』
アイリスの悲痛な叫びが、現実の世界とサイバースペースに響いた。
そしてゼロの意識が闇に沈んだ時、あの夢の言葉が脳裏に響き渡る。
『ゼロ…ワシの最高傑作……』
「(またあんたか…あんたは一体誰なんだ?)」
『倒せ、アイツを!!わしの敵、わしのライバル、わしの生き甲斐…!!』
「(一体何なんだあんたは!?)」
『行け!そして破壊しろ…あいつを!!』
「(うるさい…!!止めろ…!!嫌だ…俺は…俺が俺でなくなるのは…!!)」
激しい頭痛と謎の老人の言葉によってゼロの精神はどんどん弱っていく。
「(もう…駄目なのか…)」
[諦めちゃ駄目だよゼロ]
「(この声は…ソニアか?何故ここに…)」
[サイバースペースで遊んでたら偶然ね。ねえ、ゼロ…ゼロが死んだらアイリスおねーちゃんが泣いちゃうよ?]
「(アイリス………っ!?)」
ゼロは何故か温もりを感じた。
まるで自分を守るように、アイリスが自分を抱き締めていた。
「(これは…)」
[おねーちゃんの意識だよ、おねーちゃんのゼロを想う気持ちをここまで持ってきたんだよ私。]
「(…もうあの頭痛と老人の声もしない…情けないな…また彼女に救われるとは…!!)」
武器にインストールされたウィルスでミル・トラエルを破壊する。
[私はおねーちゃんの意識を戻してくるね!!]
「任せたぞ」
アイリスの意識をソニアに任せてゼロは一気に“バグ”の元に向かう。
そして現実の世界ではソニアが飛び出し、アイリスの意識をボディに戻す。
「あれ…私…」
[ヤッホー、アイリスおねーちゃん]
「あなた、ソニア!?どうしてここに!?」
[暇だったからサイバースペースに遊びに来てたんだ。おねーちゃん、ゼロが復活したよ]
「え?」
モニターを見るとソニアの言う通り、確かにゼロのアイコンは復活していた。
「本当だ。しかも“バグ”の近くにいやがる」
[ゼロにね、届いたんだよおねーちゃんの想い。ミル・トラエルにやられそうになったゼロを助けたのはおねーちゃんなんだよ]
「ソニア……ゼロ…無事に帰って来てね」
アイリスはゼロが無事に帰ってくることを願った。
隣で見ていたルナも真剣な表情でゼロの勝利を祈る。
ミル・トラエルから脱出し、サイバースペースの悪質な“バグ”の元に辿り着いたゼロ。
「俺に訳の分からん“まやかし”を見せてくれた礼をしてやる!!さあ、姿を現せ!!サイバースペースに巣食う悪質な“バグ”プログラムめ!!」
「私の名前はもっとエレガントにサイバー・クジャッカー様とお呼びなさい。ところであなた、一体何を見てきたのかしら?美しい恋の思い出?それとも儚い別れの記憶?」
「さてな」
ゼロの前に現れたのは孔雀を模したようなコンピュータープログラム。
『こいつは確か、ハッカーからネットワークを守る最新のガードプログラムだったはず』
「ガードプログラムか…悪質な“バグ”となってしまった今ではな」
「だからサイバー・クジャッカー様とお呼びなさい。まあいいわ…例えあなたが何を見たとしてもその思い出は二度と蘇らないわ………だってあなたそのものが思い出になるんですもの。まあ、あなたを覚えていてくれるお友達がいればね」
「難しいな…昔から人付き合いは苦手でな」
一気に跳躍すると、ゼロはセイバーを抜いてクジャッカーを両断しようとする。
「戦っている時の方が楽なくらいだからな」
セイバーが当たる直前にクジャッカーはデータ化して攻撃をかわす。
「こっちよ」
「ぐっ!!」
クジャッカーはゼロの背後に現れると、ゼロを蹴り落とす。
「ふふん」
ゼロが体勢を立て直す前にクジャッカーは再びデータ化して姿を消した。
「かくれんぼか?人付き合いは苦手と言っただろう」
「自分を押し付けていたら友達は……出来ないわよ!!」
再びゼロの背後に現れたクジャッカーは尾羽のようなレーザーユニットをビーム状にしてゼロに繰り出し、吹き飛ばした。
「心を開いてみなさいよ。現実は本当に現実なの?幻は本当に幻なの?あなたの“心”の奥に眠ってた“記憶”が呼び起こされたものと違うのかしらねぇ?」
その言葉にゼロは動きを止めた。
「(“心”の“記憶”なのか………)」
恐怖に怯えるシグマの姿と、懐かしさを感じるどこかの研究所の内部…。
そして何故か血塗れになった自分の手…。
何かの設計図…。
様々な光景が脳裏に浮かんでは消えていく…。
「本当、何を見てきたのかしら」
追尾レーザーを放ち、動きが止まっているゼロを吹き飛ばす。
ゼロは受け身も取れずに叩き付けられた。
「なぁ~にぃ~?かなりショックを受けたようねぇ~~~。拭いきれない過去でも見てきたの?私も見てみたかったわぁ~~~ホホホホホッ!!」
倒れ伏すゼロを見下ろしながら高笑いするクジャッカー。
「あなた自身ですら思い出せない“思い出”をね……さぞかし凄惨なものだったのね……」
「…………」
「……………何よぉ~~何とか言いなさいよぉ~」
無反応なゼロに苛立ってか、クジャッカーがゼロを見遣りながら言うが、ゼロは答えずにゆっくりと立ち上がった。
目を閉じ、戦いの呼吸を取りながらだ。
「ひ……人の………話をぉお…聞いてないわね~~……失礼よ!あなた!!いいわぁ!過去を悔やめないように未来を無くしてあげるわぁ!!」
怒り狂うクジャッカーはゼロの動力炉に照準を合わせるとロックオンする。
「死になさぁぁい!!」
ゼロに向けて放たれる追尾レーザー。
しかしゼロは感覚を研ぎ澄ませ、セイバーでレーザーを弾き始めた。
「断片的にしか思い出せん“過去”も予想もつかん“未来”も必要ない。」
「な!!全て弾いた!?」
追尾レーザーは全て弾いたゼロは飛燕脚と空円舞でクジャッカーとの距離を詰める。
「俺に必要なのはただ1つ……“今”のみ!!(そう、戦って戦って、戦うことで感じることの出来る“今”を信じるだけだ…!!)」
セイバーでクジャッカーの脇腹を深く斬り裂き、尾羽のユニットも斬り裂いた。
攻撃手段を失い、深手を負ったクジャッカーは何とか立ち上がるとゼロを睨み付けた。
「死ぬなら道連れよ。このサイバースペースからは帰さないから…………ね~~~っ!!」
クジャッカーの体が光に包まれて消滅すると、サイバースペースがかなりの勢いでデリートされていく。
「サイバースペースそのものをデリートするのか!!」
何とか脱出しようとするが、デリートの速度が速すぎて間に合わない。
「しまった、追い付かれた…仮想ボディが消えていく!!」
デリートに巻き込まれ、ゼロの仮想ボディが消えていく。
そして現実の世界ではコンピューターのメインパネルにも影響が出ていた。
「やべえ!!早くゼロの帰還ルートを確保しねえとゼロのデータがデリートされちまう!!」
「そんな…そんなことはさせない!!助けてみせる。絶対に!!」
「アイリス!!ルナさん!!止めて下さい!危険です!!」
「やかましい!危ねえから離れてろ!!チビ助!!お前もだ!!」
[チビじゃないもん!!でも、分かった!!]
仲間の制止も聞かずにルナとアイリスはゼロの帰還ルートを確保しようとする。
しかし間を置かずにコンピューターが爆発を起こしてルナとアイリスを吹き飛ばす。
「くっ!!アイリス、大丈夫か!?」
「私…よりも…ゼ…ロは…?」
「ゼロ…おい、ゼロ!!」
駆け寄ってゼロを揺するルナだが、ゼロは反応を返さない。
「そん…なぁ…」
ゼロを救えなかったと思ったアイリスは涙を流しながら意識を失った。
【アイリス!!】
[アイリスおねーちゃん!!]
仲間達とソニアがアイリスに駆け寄り、少ししてゼロが意識を取り戻した。
「ゼロ!!」
安堵の表情を浮かべるが、ルナはアイリスを見遣ると悲痛な表情を浮かべた。
ゼロもルナの視線を追うと倒れているアイリスが視界に入った。
「アイ…リ…ス?アイリスーーーっ!!」
倒れているアイリスを見たゼロは急いで彼女に駆け寄り、ルナも急いで彼女の元に向かうのだった。
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