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戦国異伝供書

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第三十四話 内外を治めその十

「食うぞ」
「はい、それでは」
「我等の忍道に入り」
「そうしてすぐにですな」
「飯を食いますな」
「そうしようぞ」
 こう言ってだ、幸村は十勇士達と共に忍道に入った。そうしてすぐに飯を食ったがその飯はというと。
 干し飯だ、幸村はその飯を食いつつ十勇士達に言った。
「干し飯はよいのう」
「ですな、こうした時はこれです」
「旅や戦の時は」
「これを食ってです」
「そして進めばいいです」
「そうじゃ、干し飯と水でじゃ」
 この二つでというのだ。
「充分な時もあるからのう」
「こうした時ですな」
「こうした時は干し飯と水です」
「狩りや漁が出来ればそちらを食いますが」
「獣や魚を」
「今はこれでよい」
 これが幸村の返事だった。
「ではな」
「はい、では干し飯を食い」
「そしてですな」
「また旅を続けますな」
「甲斐まで行きますな」
「そうするが」
 ここでだ、幸村はさらに言った。
「わしもお主達も普段から食いものに贅沢は言わぬ」
「豪華な馳走なぞです」
「我等には縁がありませぬ」
「そうしたものを食うことなぞ考えられませぬ」
「到底です」
「それなら畑で採れたものがありますし」
 十勇士達はその具体的なものを挙げていった。
「山や川のものもあります」
「そうしたもので充分です」
「そうではありませぬか」
「あと酒があればです」
「余計にいいです」
「全くじゃな、その酒もな」
 幸村も十勇士達も酒は好きだ、それでしこたま飲む。しかしその酒もとだ。幸村は真剣な顔で述べた。
「やはりな」
「ですな、質素なものでよいです」
「高価な酒はいりませぬ」
「我等は飲めればそれでいい」
「そうした考えですな」
「そして服も家もでな」
 そうしたものもというのだ。
「ただひたすら鍛錬と学問に励む」
「それが我等です」
「贅沢にはとんと興味がありませぬ」
「我等は修行に励む」
「それが喜びです」
「その通りじゃ、そしてわしが願うことは」
 それはというと。
「お主達とずっといたい」
「生きるも死ぬも同じ」
「死ぬ時と場所は同じ」
「そう誓い合ったのですから」
「そうじゃ、わしはお主達と最後の最後までじゃ」
 まさに死ぬその時までというのだ。
「共にいたい」
「我等もです」
「殿と最後の最後までいたいです」
「無論我等十勇士の間もです」
「十一人で終生の主従と誓い合いましたが」 
 幸村に十勇士達が仕える、それが彼等の主従関係だ。
「しかしです」
「その時にさらにでした」
「我らが友の誓いもしました」
「義兄弟のそれも」
「そうじゃ、我等は血はつながっておらぬ」
 それは決してというのだ。 
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