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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第七十二話 呂蒙、学ぶのことその三

「朝廷からなんですけれど」
「というと勅命か」
「はい、勅命です」
 陸遜は大事を呑気に話した。
「帝からの勅命とのことですが」
「帝が直接出されたのではあるまい」
 太史慈はこのことを察してそのうえで陸遜に問い返した。
「おそらく。董卓殿が」
「そうみたいです。ただ」
「今南越は我が漢王朝に忠実だ」
 そうでなければ孫策が最初から征伐していた。そういうことだ。
「それでどうしてだ。兵を送れなど」
「私達の勢力を弱めたいと思います」
 陸遜は軍師として董卓のその狙いを指摘した。
「そうしてそれからです」
「適当な理由をつけて我々を征伐するか」
「絶対にそうします」
「ううむ、それではだ」
「はい、この征伐は避けるべきです」
 陸遜はまた軍師として話した。確かに口調は穏やかだがそれでもだ。見ているものは見ている。そのうえでの言葉なのである。
「そうしないといけませんよね」
「絶対にな。それで雪蓮様はどう御考えなのだ?」
「動かれるおつもりはないとのことです」
 孫策もこう考えているというのだ。
「兵を無闇に動かすことはお嫌いな方ですし」
「戦はお好きだがな」
「はい、ですから」
 孫策は動かないというのだ。彼女は確かに好戦的だがそれでもだ。無駄な出兵やそうしたことはしないのだ。牧としての節度である。
「然るべき理由をお話してお断りするとのことです」
「それがいいな」
「それにです」 
 陸遜はさらに話すのだった。
「出兵を命じられたのは私達だけではないですし」
「他の牧の方々もか」
「袁紹さんは高句麗征伐を命じられています」
 袁紹もだというのだ。各州の牧の中でも最大勢力の彼女もだというのだ。
「曹操さんはその補佐としてやはり高句麗に」
「高句麗にか」
「そして袁術さんは南蛮に」
 こう話していく。それを聞いてだ。
 太史慈はだ。その顔をいよいよ曇らせてであった。
 そうしてだ。こう陸遜に言うのであった。
「どの勢力も我が国に好意的な国ばかりだが」
「南蛮はもう完全に帰順していますよね」
「それでも出兵を命じるとなると」
「はい、明らかに私達の勢力を弱めることが目的です。それに」
「それに?」
「宮殿や陵墓を造るとかで」
 今度は建築だった。国を衰えさせるものであることは始皇帝以前から指摘されていることだ。
「多額の献上を要求してきてもいます」
「金までか」
「そうなんです。それでも力を弱めさせて」
「最後はだな」
「はい、征伐です」
 それに行き着くというのである。結局は。
「私達は全員謀反人となります」
「馬鹿な、我々は漢王朝に弓を引いたことはない」
 それは絶対だとだ。太史慈は確かな顔で言い切った。
「何故その我等が征伐させるのだ」
「邪魔だからです」
 またのほほんとした調子でにこりとして核心を言う陸遜だった。
「董卓さんにとって私達が」
「だからか」
「多分。董卓さんの背後にはもう一人おられますし」
「もう一人!?」
「宮廷に誰かおられるようです」
 陸遜はそのことを察していた。その口調には緊張はないがそれでもだ。彼女のその読みは鋭い。軍師たるに値するものである。
「張譲さんは確か亡くなられましたが」
「それでもか」
「はい、おられるみたいですね」
 こう指摘するのである。
「その方が私達を弱らせようとしています」
「では。このままでは」
「協力しても征伐です」
「協力しなくても征伐か」
「どちらにしろ征伐です」
 未来は一つしかないというのだ。彼女達のそれはだ。
 
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