| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

楽園の御業を使う者

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

CAST36

「うみゅぅ…みゅぁう…」

屋台で食べ物を買い長テーブルに移動した一行は昼食を取る事となった。

水波が白夜を膝に乗せ、その両隣を真夜と深夜が、深夜の隣に穂波、真夜の隣に深雪、達也と続く。

その対面には摩利、真由美、香澄、泉美が座る。

「せっかくの九校戦なんだしバチバチやってないで楽しめば? 人生損するよ?
うみゅぁ…みゃふ…」

「君は能天気でいいなぁ…」

「能天気じゃダメかな摩利さん? みゅあ…」

「ダメではないのだけど……」

真由美が真夜と深夜に目を向ける。

両者手を伸ばして白夜の頬をむにむにと弄っていた。

「みゃふぁ…」

「ああ、真由美さん気にしなくて結構よ。私達は白夜君で遊んでるから」

「安心していいわよ。真夜に関して弘一さんには思う所はあるけど、娘である貴女に何かするほど器量は小さくないから」

真夜と深夜が立て続けに言った。

「七草様、渡辺様」

二人を呼んだのは達也だった。

「ここは一つ、九校戦期間中は互いに無干渉という」

「にゃぅぅ…だからなんでそう喧嘩腰なのさ? 飴でも食べて落ち着けよ達也」

白夜が懐から飴玉を取り出す。

七草の姉妹には見覚えのある包み紙だった。

達也は貰った飴玉を敢えて口にした。

中身が何かを知っていて。

「…………………」

無言。

達也は無言で飴玉を舐め続ける。

「おい達也、飴玉完食した程度で優位に立つ気か?」

「……………………すまん席を外す」

達也が席を立ち、トイレへ駆け込んだ。

白夜の対面に座る四人が、走る達也の背中に哀れみの視線を向けた。

ああ、コイツも振り回される側の人間なのか、と。

そんな中、深雪は内心白夜を評価していた。

四人に達也に対して憐れみを、振り回される側という仲間意識を持たせた事に関して。

「みゃふぅ……ねぇ昼御飯たべないの?
屋台物は出来立てだから旨いんだぞ」

と白夜が袋から焼きそばのパックを出す。

「そ、そうだな。では食べるとしようか」

四葉との因縁がない摩利が白夜に続く。

「あ、淑女諸君。歯に青海苔がついてたら浄化魔法やったげるけど?」

「嫌よ。あれゾワッとするもの」

「やったことあんの深夜さん?」

「歯を磨くのが面倒な時に時々やるわ」

「あら、ちゃんと磨かないとダメよ姉さん」

「誰のせいで私が歯磨きも面倒なほど疲れてると思ってるのかしら?」

「しょうがないじゃない。私が出ていったら絶対に面倒になるもの」

「はぁ……毎回メイクするの面倒なのだけれど」

「マジックペンでいいじゃない」

「殺されたいのかしら真夜?」

「あら病弱な姉さんに私が負けるとでも?」

四葉姉妹がバチバチと視線を交える。

「真夜さん、深夜さん。俺はいいけど水波がチビりそうになってるからやめたげて」

「ふふ、水波さんに救われたわね真夜」

「ええ、姉殺しの汚名を被らなくて済んだわ」

白夜の斜め前の摩利が口パクで尋ねた。

(いつもこうなのか?)

(九校戦ではしゃいでるだけでしょ。今日は護衛もそんなについてないし)

(護衛?)

(深夜さんの隣の人と、俺と、達也。
それぞれ深夜さん、真夜さん、深雪さんの護衛)

(君もなのか?)

(真夜さんの護衛に頼まれてるのさ)

(そうか)

白夜の頑張りで、食事が終わる頃には『それなりに』打ち解けてはいた。

戻ってきた達也は雰囲気を察して特に何も言わなかった。

深雪と真由美のガールズトークを面白くなさそうに見ていた達也だったが、こちらはこちらで摩利と話す程度の仲にはなった。

二人とも武人の気があり、そういった所では気が合うのだ。

摩利には別の思惑もあった。

摩利が達也に相談があると、二人で少し離れた。

「何でしょうか渡辺様」

「摩利でいい。それで相談なんだが…」

そう切り出した摩利は乙女の顔をしていた。

「君は白夜君と一番近しい同性だろう? 彼の好みとかを知らないか?」

「……………………………はぁ」

と達也がため息をついた。

「摩利様、残念なお知らせがございます」

「な、なんだ」

「白夜は既に交際している女性が居ます」

「…………………………」

無言だったが、摩利の目に涙が浮かぶ。

普段強気な女性の涙という、そういう趣味の人間なら喜ぶシチュエーションだが、無論そんなものに反応する達也ではない。

そして達也は冷徹であっても鬼畜ではない。

「それと朗報です。白夜は二人の女性に迫られ、二人とも受け入れました。
チャンスはまだあるやもしれませんよ」











摩利を残して達也が戻ってくる。

「何の話してたんだ達也?」

戻ってきた達也に白夜が声をかける。

「お前の兄が好きそうな物を聞かれた。身内ではなく、一般論的に男性が喜びそうな物は何か、とな」

「ふーん」

そして唐突に、達也が白夜にデコピンを見舞った。

「ふみゃぁっっっ!?」

額を押さえる白夜。

「何すんだよいきなり!」

「ん? 何。そこにちょうどいい額があったからな」

「登山家みてぇに言ってんじゃねぇよ!?」

白夜はぎゃぁぎゃぁいっているが、真夜や真由美は達也がなぜそうしたかを察した。

「この無自覚鬼畜男の娘が」

「いわれのない罵倒だ!」 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧