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提督はBarにいる。

作者:ごません
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艦娘とスイーツと提督と・33

 
前書き
まさかのドイツ艦2連投です。ダイス神も中々面白い事をしますねwww 

 
~グラーフ・ツェッペリン:カイザーシュマーレン~

「にしても、まさかドイツ組に2人も当選者が出るとはな」

「私も驚いている。これまで海外組に当たった者は居なかったのだろう?」

「あぁ、それがいきなり今年は2人……それも、どっちもドイツ艦だってんだからな」

「全く、偶然とは恐ろしい物だ……っと、そろそろ良いのではないか?」

「そうだな。……おぉ、グラニュー糖がキャラメルっぽくなっててこりゃ美味そうだ」

「コーヒーの準備も出来たぞ。さぁ、食べよう」

 今年3枚目のチケットを持ってきたのは、ドイツの空母グラーフ・ツェッペリンだった。その注文は

『コーヒーは私が淹れるから、アトミラールはそれに合いそうな甘い物を。出来ればドイツの菓子が良い』

 という物だった。そこで俺が作ったのはカイザーシュマーレン。皇帝の名を冠する、ラム酒が仄かに薫るパンケーキだ。

 カイザーシュマーレンは18世紀頃、オーストリアのハプスブルク家でその産声を上げたと言われている。蒸留酒に浸けられたレーズンとメレンゲを加えて柔らかく焼き上げられたパンケーキを、小さく切り分けてから砂糖を振り供するのが特徴で、プラムソースやクリーム等を添えて食べる。最近だと、仕上げにグラニュー糖やシナモンパウダーを振ってオーブンで溶かし、キャラメルコーティングするのが流行りらしいが。当時のオーストリア皇帝・フランツ=ヨーゼフ1世も大層気に入り、皇帝を示す『カイザー』を付ける事を許可したとかなんとか。まぁ、そういう歴史と権威のある焼き菓子ってワケだ。ハンドミキサーがあればそう難しい物ではないので、レシピを置いておくから気が向いたら作ってみてくれ。


《皇帝も愛したカイザーシュマーレン!》※分量4人前

・卵:6個

・牛乳:350~400cc

・薄力粉:180~200g

・バニラシュガー:8g(無ければグラニュー糖小さじ2とバニラエッセンス数滴)

・レモンの皮:少々

・レーズン:大さじ2

・ラム酒:適量

・グラニュー糖(メレンゲ用):大さじ3

・塩:ひとつまみ

・バター(焼く時用):50g

・バター、グラニュー糖(キャラメリゼ用):各15g

・粉砂糖、シナモンパウダー(仕上げ用):適量




 作り方としてはまず、レーズンをラム酒に浸けてラムレーズンを用意する。レーズンの中にはオイルコーティングしてある物もあるので、表示を良く見てから下準備をしよう。オイルコーティングしてあった場合はお湯をサッとかけてレーズンを洗ってからよく水を切り、それからラム酒に浸けると良いだろう。

 ラムレーズンを支度している間にパンケーキの生地を作る。卵を割り、卵黄と卵白に分ける。卵白は後でメレンゲにするので捨てないように。ボウルに卵黄、牛乳、すりおろしたレモンの皮、バニラシュガー、ふるった薄力粉を入れて、滑らかな生地になるまで混ぜる。

 生地が出来たら今度はメレンゲだ。卵白にグラニュー糖と塩を加え、角が立つまでしっかりと泡立てる。その間にオーブンを180℃に余熱しておく。メレンゲが出来たら、さっきの生地に加えて混ぜておく。

 オーブン調理対応のフライパンにバターを塗り、生地を流し込んで強火にかけて1~2分焼いていく。ラムレーズンを散らして更に焼き、今焼いている面が良い色になってきたらひっくり返す。返したら余熱していたオーブンに入れて、6~8分焼く。

 オーブンで焼いたら一旦取り出し、フォーク等を使ってパンケーキを小さくカットする。そこにバターを全体に散らし、グラニュー糖を振り掛ける。オーブンに戻し、振り掛けたグラニュー糖が溶けてカラメル状になるまで焼いていく。

 フライパンを取り出し(熱いので火傷に注意!)、皿に盛り付ける。仕上げに粉砂糖とシナモンパウダーを振れば完成。お好みで酸味の強いベリーやプラムのジャム、果物のコンポート、甘いのが好きならアイスやクリームを添えて召し上がれ。





「カイザーシュマーレンか。相変わらず、アトミラールの料理の腕前には脱帽するな」

「そうか?お前のコーヒーの知識も中々のモンだと思うぞ?」

 グラーフの奴が淹れて来たのは『カフェ・コーディアル』。ホットコーヒーにグラニュー糖とオレンジジュース、それに香り付けのブランデーとラム酒を少し加えたホットなコーヒーカクテルだ。……え、『酒は出さないんじゃなかったのか』って?お菓子作りでも風味付けとかに酒使ってるし、誤差だよ誤差(目逸らし)。

《カフェ・コーディアルのレシピ》分量:1杯分

・コーヒー:120cc

・グラニュー糖:小さじ1~2

・ラム酒:5~10cc

・ブランデー:5~10cc

・オレンジジュース:20cc

・オレンジスライス(お好みで):1枚

《作り方》

 お湯を注いで温めておいたカップに、グラニュー糖、ラム酒、ブランデー、オレンジジュースを注いでよくかき混ぜ、グラニュー糖を溶かしておく。コーヒーを注ぎ、更に混ぜる。仕上げにお好みでオレンジスライスを乗せたら完成。


 ホットコーヒーにオレンジジュース!?と最初は身構えるかも知れんが、オレンジジュースが酒とコーヒーを上手く繋ぎ合わせてくれる上に、その酸味が口当たりをさっぱりさせてくれる。今回のように甘い物を食う時に飲むには中々マッチした1杯だ。

「そ……そうか、喜んで貰えたのならそれでいいんだ」

 グラーフの色素の薄い白い肌が赤く染まる。まるで触れたら壊れてしまいそうな儚い雰囲気すら漂わせて、此方を熱っぽく見詰めてくる。身体の奥の芯の部分がカッと熱くなって来たのは、コーヒーに入っている酒のせいだけじゃないだろう。

「これなら十分に店が開けるレベルだぜ?実際」

「カフェ、か……ふふふ」

「何だよ、いきなり笑って」

「いや、もしもこの戦争が終わって私が生き残っていたら、そういう第二の人生もいいかもしれないと思ってね」

「……バカ言え、お前には生き残ってもらわんと困る」

「あ、アトミラール?それは一体どういうーー」

「あんまり人には話した事はねぇがな、俺は提督を引退したらここの土地と建物を買い上げてリゾート施設を作ろうと計画してんのよ」

 まだ具体的な計画も出来ていない、夢物語に近い与太話だ。だが、グラーフになら話してもいい……直感的にそう思った。

「そこには遊ぶ施設だけでなく、寛ぎを提供する場が必要だ……どうだ?艦娘を辞めた後も、俺の側で仕事する気はねぇか?カフェのオーナーとして」

 グラーフは少し悩んだ様子を見せて、ポツリと呟いた。

「……それは、この戦争が終結したらの話だろう?」

「そうだ。それまではこのクソッタレな殺し合いの現実からは降りられない」

「でも……そうだな、そういう未来への希望を持って戦うのも良いかもしれないな」

 グラーフはしみじみと、心からそう願うように呟いて、朗らかに笑って見せた。



 
 

 
後書き
途中で提督が押し倒す展開になるかと思ったら、何か良い話にまとまったのでセーフ!w 
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