徒然草
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74部分:七十四.蟻の如く
七十四.蟻の如く
七十四.蟻の如く
蟻のように群がりそのうえで西に東に走り回り南へ北へ慌しく動き回っている人達がいます。その人達の中には偉い人もいれば貧しい人もいます。子供までいます。出掛けるところがありそして帰る家もあります。夜には眠くなり朝になると目が覚める。この人達は一体何をしているのでしょうか。節操もなく長生きしたがりその利益はさながら高利貸しであります。それがもう止まることはない有様であります。
己自身を保養しながら何かいいことはないのだろうかなどと呟きながら思わぬ幸福を待っている。とどのつまりはただ老いぼれて死ぬだけです。老いぼれて死ぬのはそれこそあっという間で思いの刹那も留まることを知りません。老いぼれてそのうえで死ぬのを待っている間に何か楽しいことはあるのでしょうか。迷える人は老いぼれてそのうえで死ぬことを恐れはしません。名前を売ることとお金儲けに溺れてそのうえで命の終わりが近いことに気付きはしないからそれでいて愚かですから死ぬことを悲しみます。この世は何も変わらないと思いそのうえで運命の大河に流されているということがわかっていないのです。
慌しく生きても仕方のないことです。むしろ身を委ねて生きるべきです。そう思いますがそれをわかっている人は実に少ないのもまた事実であります。
蟻の如く 完
2009・6・29
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