徒然草
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59部分:五十九.大事を
五十九.大事を
五十九.大事を
世の大事というものを意識していない人は簡単には捨て去れず気にかかっている身辺整理といったことなぞ考えはしないで全てそのまま捨てるべきです。もう少し経ってから、これをやってからとかどうせ死ぬまで放心しているのならあのことを整理してからとかこのままでは馬鹿と思われる、何とか汚名を返上して将来に目処が経ってからとかどうせすぐ終わるからあれを済ませてから。慌てることはないなどと考えているうちに違った逃れられないことが積み重なっていき予定が詰まってしまいます。それでは大事を意識しない日が来る筈もありません。世の中の家庭というものを覗いてみますと少し利口なふりをしている人というものは大体こんな感じで日々を暮らしてそのうえで死んでしまいます。
隣が火事で逃げる人が少し待ってくれなどと言ったりするでしょうか。死にたくなかったならばその時は恥ずかしい姿でも大事なものを捨てて逃げるしかありません。命が人の都合を舞ってくれるでしょうか。儚い命がはじまる時は水害や火災よりも速いものです。逃れられないことですから死ぬ時に自分の死にそうな親や首のすわりの悪い子や師匠への思い、優しい人への気持を捨てられそうもないと言ってはみても捨てることになってしまうものです。そういうものになってしまうのであります。
大事を 完
2009・6・14
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