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戦国異伝供書

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第三十二話 青から赤と黒へその一

               第三十二話  青から赤と黒へ
 織田家の面々の話は終わった、その全てを聞いて真田幸村は目を強く閉じてそのうえで確かな声で述べた。。
「ううむ、実にです」
「よい話であったか」
「はい」
 柴田の問いにも確かな声で答えた。
「この源次郎感服致しました」
「そこまで言われると恥ずかしいのう」
「全くじゃ、我等も恥ずかしいことが多かったからのう」 
 柴田の横にいる佐久間が柴田と顔を見合わせて笑って話した。
「そこで感服とまで言われるとな」
「我等としてはな」
「いささか恥ずかしいわ」
「全くじゃ」
「いや、まことにです」
 幸村は二人に身を乗り出し真摯な顔で述べた。
「それがしそう思っておりまするぞ」
「真田殿だけではありませぬ」
 直江兼続も言ってきた。
「それがしもまたです」
「直江殿もか」
「感服したと言われるか」
「はい、天下統一までにそこまでのことがあったのかと」
 幸村と違って落ち着いているがこう言うのだった。
「思う次第であります」
「ううむ、そこまでの話とは」 
 丹羽も少し苦笑いで述べた。
「我等も話して思わなかったが」
「どうもかなりの話であった様で」
「我等も驚いています」
 滝川と明智も述べた。
「何かと生臭い、困った話もあって」
「いい話ではないがのう」
「てっきりじゃ」
 前田は自分の甥を見て述べた。
「慶次の悪ふざけの話が注目されると思ったが」
「それがしのですか」
「実際お主今もそうであるが」
 それでもと言うのだった。
「悪戯ばかりしておるからのう」
「ははは、今も止められませぬ」
 慶次はその口を大きく笑って叔父に応えた。
「どうしても」
「だからそれをじゃ」
「天下の笑い者にされるとですか」
「思ったがな」
「慶次殿の傾奇者の話もです」
 幸村がまた熱く言ってきた。
「それがし感服致しました」
「お主何でも感服しておらぬか」
 佐々は幸村のそのことに気付いて言った。
「どうにも」
「いえ、それはです」
「違うのか」
「それがしまことと思った話にのみです」
「感服するのか」
「左様です」
 こう佐々に言うのだった。
「そのことはお話します」
「そうなのか」
「それでこれまでのお話で、です」
「お主は感服してか」
「後学にしたいと思っています」
 その様にともだ、幸村は話した。
「それがしは」
「左様か、しかし我等がしたことは」 
 佐々は幸村に袖の中を腕を組んで述べた。
「殿のお供をしたまで」
「うむ、全ては殿がおられてこそ」
 このことは林も述べた。
「今の天下も我等もある」
「若し殿がおられないとどうなっていたか」
 川尻はそのことについて言うのだった。
「わからぬわ」
「尾張一国もどうなっておったか」
 森は自分達の故郷のことを思った。
「果たして」
「まさに殿がおられてこそじゃ」
 池田もそのことについて深く考えていた、そのうえでの言葉だ。 
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