Fate / the beelzebub comes.(魔王来たりて)
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第7話 赤色交差
前書き
とりあえず、この小説の引っ越しは終わりました。
ひょっとしたら、他の小説もアップするかも知れません。
(飽くまでもかもですが・・・)
「ふぅ~・・・やはり、縁側で緑茶を啜るのは良いな。」
新たな拠点の1つとなった―――衞宮の武家屋敷の縁側で、
シリウスはほのぼのと渋めの緑茶を啜り、
固めに焼き上げられた煎餅をかじりながら寛いでいた。
(シリウスサイド)
今の時刻は午前11時――――
シロウが学校に行った後、俺はずっと家の縁側で日向ぼっこをしていた。
「この家は住み心地が良いな。南側に縁側があるし・・・寛げる。」
「マスター・・・結界が万全な状態とは言え、流石に警戒を緩め過ぎではありませんか?」
「まあ、久し振りの寛ぎ時間だからな。少しは見逃してくれ。
おお!?茶柱が立っとる!今日は縁起が良いなw」
「シリウス様・・・やけにこの国の事柄に詳しいですね?」
「ん?・・ああ、ゼルレッチのじーさんに貰った記憶媒体の中に、かなり日本の事柄についての
データがあってな。そのおかげで、かなり日本の事には詳しくなったんだよ。」
「成る程・・・しかし、それにしても・・・」
「案外、あのじーさんも日本通だったりするんじゃないか?」
「イメージ出来ませんわ・・・」
「ま・・要するに、気にするなって事だろうな。
俺もあのじーさんが日本通だったなんて、全然知らなかったしな。」
「・・・・分かりました。宝石翁に関しては気にしない事にします。」
「それが良いだろうな。あのじーさんに関しては一々気にしてたらキリが無い。
あの“じーさんだから”って認識でいいだろ。」
一旦会話を区切り、脇に置いてあった煎餅に齧り付く。
ポーン・・ ポーン・・・
「ん?・・・もう昼か。」
居間の時計に目を向けると、時計の針が12時を指した所だった。
しかし、のんびり出来る環境を楽しむのも良いが、流石に丸一日こうしてるのも何だな・・・
「よし!昼飯を食ったら、シロウの通ってる学校とやらに偵察がてら行ってみるか?」
「・・・突然ですわね(汗)」
「そこに他のマスターが通っている可能性もある訳だし、シロウの対人関係を知っておくのも良いかもしれん。
何より、丁度良い暇潰しにもなるしな。」
「・・・一番最後のが本音臭いですわよ。」
「そうと決まったら、とりあえず飯にしよう。
実は昨日の晩からし込んでいた良い物があるんだよ。そろそろ良い頃合だろ。」
「ふう・・・分かりました。私はシリウス様に付いて行くだけです。」
キャスターは半ば呆れた様な、諦めた様な、それでいて何処か楽しそうな顔で、
キッチンに向かう俺に付いて来たのだった。
(士郎サイド)
ドン!
俺は重量感たっぷりの重箱を自分の机の上に置いた。
「なんだ、衛宮・・・そのドでかいお重は?今から大食い大会でも開くというのか?」
「一成・・・流石にこの量を一人で食べきるのは無理に決まってるだろ?
って言うか、何時からソコにいた?」
「親友に向かって酷い事を言う・・・チャイムが鳴って直ぐに来ただけの事だ。
それにしても、お前が料理に失敗するとは考えられんし・・・・誰か他の人物が作ったのか?」
「桜の事言ってるのか?だったら違うぞ。これは昨日から居候してる人が作ってくれたんだよ。」
「どう見ても、一人分の量ではないようだが?」
「そいつが言うには俺はもっと食を太くしないといけないらしい。
頑強な身体を造るにはコレ位食べろってさ・・・・」
「ふむ・・・確かに衛宮は食が細い感はあるが・・・それでも限度があると思うのだが?」
「まあ、俺も最初からコレを全部食べきれるとは思ってないよ。
何なら一成も食べてみるか?悔しいけど、味は俺のより上だからな。美味いぞ?」
「ほう、ならばご相伴に預かるとしよう。」
一成は俺の前の席の椅子を借りて、俺と相対する形で座る。
「む・・・箸が3膳入ってるな。」
「と言う事は・・・」
「最初から1人で食べられないって事は分かっていたみたいだな。」
「ん?こんな所に紙切れが・・・って、何か書いてあるな。」
『シロウへ―――
このメモ紙を見付けたって事は、今頃弁当箱を広げている所だろ。
ま、今回は少し多く造り過ぎたとは思ってたから、周りの人間に分けてやると良い。
箸も一応3膳つけて置いたしな。
だが、少しずつでも食を太く努力はしとけよ?
何事も積み重ねが大切だからな。
後、帰ったら感想を聞かせてくれ。明日以降の参考にしてみるからな。
シリウスより』
「・・・・。」
「どうやら、良い様にからかわれた様だな、衛宮よ。」
「何でさ――――――――!?」
昼の校舎に、俺の絶叫が木霊した・・・
(凛サイド)
「何でさ――――――――!?」
!?
今の悲鳴は・・・隣のクラスから?
ひょっとして・・・今のは、衛宮君かしら?
悲鳴上げるなんて、一体何やってるんだか。
どうせ碌でもない事なんだろうけど。
私は今朝買ってきたパンを口に運びながら、
隣のクラスに耳を傾ける。
しかし、それ以降は昼休み特有のざわついた喧騒が聞こえるだけで、
詳しい状況は全く分からなかった。
全く・・・昼休み位、少しは静かに出来ないものかしら?
って、無理か・・・この学校じゃあね~・・・
『凛、今少し良いか?急ぎ報告したい事があるのだが。』
『っ!?・・・・ちょっと、アーチャー・・学校では余り念波での会話は控える様に言った筈よ?』
今驚いちゃって、ちょっと変な顔になっちゃったじゃない・・・
心なしか、クラスメートの生暖かい視線が、私に集まっている気がするわ・・・(汗)
『緊急事態だ。他のサーヴァントらしき魔力が此方に近付いてきている。
傍にマスターらしき人物の姿も確認した。』
っ!?
『それ、本当なの!?』
『ああ、遠距離からだが確認した。剣士風の男と魔術師風の女だ。
どちらかがサーヴァントであると思われる・・・流石にこの距離では、どちらかは判別が出来なかったがね。』
『・・・貴方から見て、どんな感じなの?勝算はありそう?』
『両者共にサーヴァント並の魔力を保有している様だ。
正直な所、片方は押さえる事が出来ても、もう片方は君に押さえて貰わなければならない。』
『私次第って事ね・・・』
『そういう事だな。』
『ま、相手の出方しだいで対応していくしかないわね。相手も私がマスターだとは気付いてないかもしれないし・・・
アーチャー、摂りあえず私は屋上に向かうわ。そこで合流しましょう。』
『了解した。』
私は相席していたクラスメートと別れ、足早に屋上へと向かった。
(アーチャーサイド)
屋上――――
私が敵サーヴァントを監視しつつ屋上に到着した頃には、凛が既に待機していた。
「それでアーチャー、状況に変化はあった?」
「・・・いや、奴等は校庭に侵入してからは敷地の四方をうろついているばかりで、
此方に気付いている様子は無いな。」
「そう・・・何をしているのかしら・・・・まさか、ここの生徒を襲うつもりなんじゃ・・?」
「いや、それは無いな。」
「・・・なんで断言出来るのよ?」
「先程から奴等の行動を観察していたが、この学校の人間には全くと言っていいほど接触していないからだ。
魔術の行使も認識の疎外以外の行っていなかった。・・いや、あるいは態と我々に気付かせたのか?」
―――――よく気が付いたな―――――
っ!?
突如背後から発せられた声に、私と凛は咄嗟にその場から飛び退いた。
そして、即座に戦闘体勢を取り背後を振り返る。
振り返った私達の眼前には、全身が赤色な様相の長髪の男と、フードを深く被った魔術師風の女の姿があった。
「・・・行き成り背後から声を掛けるとは、些か作法に欠けると思うのだが?」
「それは済まなかったな。生憎、俺は作法や礼儀と言った物に縁遠くてな・・・気が付かなかった。」
「・・・・。」
私の皮肉にも、全く意に介した様子も無く、赤い長髪の男―――恐らくは他の6人のマスター・・・いやサーヴァントか?
そして、背後の寄り添っている女が、マスター?
どちらとも人間の持ち得る魔力量ではないな・・・
これでは、どちらがマスターか、サーヴァントか判断が出来ん・・・
それに・・・赤髪の男には隙が全く無い。これは難敵だぞ・・・
「さて・・・折角、他のマスターと遭遇したんだ。少しはそれらしい事でもするか?」
赤髪の男は虚空から赤い長剣を抜き放ち、無行の位のまま一歩此方の踏み出した。
「・・・その前に一つ聞きたい事があるわ。」
私の背後で先頭体勢を維持したままの凛が、魔術用の宝石を構えつつ赤髪の男を睨み付けた。
「ふむ・・・何だ?」
「貴方達・・・どっちがマスターなのよ?」
「「・・・・・・・・・・。」」
「・・・凛、流石にそれはストレート過ぎるのではないかね?」
相手も流石にその質問は予想外だったのか、目が点になってしまっている。
「しょうがないじゃない!私は交渉術は苦手だし、聞くだけならタダでしょ!
勿論、相手が正直に答えてくれるなんて、流石に私も思ってはいないわよ。」
・・・・成る程、凛なりの相手のペースを乱す算段だったのか。
それに、少しでも会話を長引かせて、相手の情報を引き出そうとしていた様だ。
凛も苦手という割には、なかなかやる物だな。
「しかし、もう少しやり様があったと思うのだがな・・・」
「う・・!?」
「プ!?・・・プククク・・・ハハハハハハハハ!!良い!良いな、お前等!プフ!!
・・ココに来る前も含めて、久し振りに腹の底から笑ったわせて貰ったぞ!!ゴホッゴホッ!」
「・・・・//////」
「凛・・・顔が耳まで真っ赤になっているぞ?」
「誰のせいよ・・・」
「あ~~~~腹が痛え・・・・面白い芸も披露してもらったし、特別に教えてやるよ。」
「・・・何?」
「俺達のどっちがマスターか教えてやるって言ってるんだよ。
因みに俺がマスターでシリウス・インバース・ガヴリエフと言う。そして、こいつがサーヴァントのキャスターだ。」
「ちょっ!?何でそんな重要な情報をばらしてるのよ!?」
「ん?・・ああ、気にするな。
俺達にとって、どっちがマスターか、サーヴァントかなんて事を知られても、大して関係無いんだよ。」
「どういう意味なのよ!」
「凛、感情的になるな!冷静になれ!」
「お前等、サーヴァントの方が押さえ役なのかよ?・・・まあ良い、俺は前衛、キャスターは後衛。
基本的にはそんな所だが、俺は大概はオールマイティーにこなせるからな。大抵の相手なぞ、相手にもならんしな。」
「なっ!?」
「・・・・言ってくれるな。」
赤髪の男―――シリウスからは自信が感じられた。
それも、こちらがサーヴァントだと分かった上で―――それでも尚、揺ぎ無い程の圧倒的な。
「さて――――そろそろ始めようか?」
「っ!?」
突然、シリウスから尋常ならざる殺気が迸る。
私はソレに反応して咄嗟に凛を庇う様に、構える干将・莫耶を構え「遅いな・・」―――何!?
気付けば私の鼻先に、紅い直剣の切っ先が突き付けられていた。
「!?アーチャー!?」
「意識の切り替えが遅いな。そんな事ではこの戦争・・生き残れんぞ?少なくとも俺の前ではな。」
「敵である君に心配される云われは無い・・な!!」
ギイィィン!!
左手の干将で切っ先を弾き落とす。
「っと、双剣か・・・面白い構造してるみたいだな、ソレは?」
「そんな事を一々敵に答える馬鹿が居るとでも思っているのかね?」
「違いない。」
私と敵のマスター――シリウス・インバース・ガヴリエフは互いの切っ先を交差し――剣戟を再開した。
(シリウスサイド)
ギギギギギ・・・
「ほ~・・防御主体のカウンター狙いがお前の基本スタイルか?」
俺は剣戟を交えつつ、相手の――アーチャーの戦闘能力を分析する。
「戦闘の最中に考え事とは、余裕だな!」
左右からの連撃―――これは、スウェーで交わす。
「何、余裕を持って相手をしているからな。何より、本気になっていない奴を相手取るのに、
本気を出す必要も無いだろう?」
「ぬかせ・・・余り油断していると、足元を掬われる事になるぞ?」
「油断・・?違うな、コレは圧倒的優位から来る確信に満ちた自信だ。
何より、お前からは微塵も脅威を感じない・・・少しは本気をだせ。これでは話にならん。
それとも、本気になれない理由でも有ると言うのか?」
「言ってくれるな!」
再び双剣での時間差を付けた連撃―――今度は、剣の腹で受け、切り返し様にアーチャーの手首を切り払う。
「クッ!?・・凛!」
「分かったわ!」
アーチャーが少し後退して、マスター――確かリンと言ったか?
ソイツが何やら呪文を唱える。
「・・!成る程、魔術による治癒か。」
アーチャーの手傷が見る見る内に塞がっていく。
となれば、一撃ないし回復の間を与えず屠るしかない訳だが・・・
「・・様子見の段階で倒してしまうのは、ちと面白くないな。」
「・・・何?」
「やめだやめ!」
俺は剣を“蔵”へと仕舞い、戦闘態勢を解いた。
「・・・何のつもりだ?」
アーチャーが先ほどよりも剣呑な視線で、俺を睨み付けてくる。
「何、このまま決着を付けるのは勿体無いと思ってな。今日は様子見のつもりだったし・・
今日はここいらで引き上げる事にする。」
「私がみすみす逃すとでも思っているのかね?」
「・・別に、離脱中に攻撃して来ても構わん・・・捕らえきれれば、な!」
――――明り――――
俺の放った閃光で、一瞬屋上が白く染まる。
その一瞬を突いて、俺はキャスターを回収―――そのままシロウの屋敷へと転移したのだった。
ま、この世界に来てからまだ日も浅いし、もう少しノンビリと楽しませて貰わないとな。
TO BE CONECTED
後書き
感想お待ちしていますw
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