サンタは本当に
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第二章
「私が言っていることはだ」
「何についてですか?」
「サンタクロースのことだ」
「クリスマスの主役の」
「そうだ、何がサンタクロースは実在するだ」
ドナーさんはご自身のデスクで怒って言いました。
「そんなことはだ」
「ないですか」
「有り得ない」
リュッケさんよりも強い否定の言葉でした。
「それも絶対にだ」
「ですがサンタさんが飛ぶ方向とかが」
「ネットにも出ているか」
「はい、それで毎年話題になってますよ」
「悪質なジョークだ」
ドナーさんはこのことについて吐き捨てる様に言いました。
「それはな」
「悪質なですか」
「そうだ、ジョークだ」
それに過ぎないというのです。
「あくまでな」
「そうでしょうか」
「そうだ、そしてだ」
「そしてですか」
「サンタクロースがプレゼントをするなぞな」
そうしたこともというのです。
「ある筈がない」
「あの、先生はどうして」
リュッケさんはドナーさんにどうかというお顔で尋ねました。
「サンタクロースをそこまで否定されますか」
「幼い頃から有り得ないと思っていたからだ」
「だからですか」
「そうだ、考えてみることだ」
まさにというのです。
「この世界に子供は何億人もいるが」
「宗教っていう括りは別にして」
「しかしだ」
それでもというのです。
「その何億の子供に一晩でプレゼントを全て渡せるか」
「そこからお考えになってですか」
「幼い私はわかったのだ」
まさにその時にというのです。
「サンタクロースはいない」
「そう思われたんですか」
「そうだ、いる筈がない」
「先生はプロテスタントですよね」
リュッケさんはドナーさんの宗教について尋ねました。
「そうですよね」
「ルター派だが」
「信仰心はおありですよね」
「神の存在は信じている」
ドナーさんはそこははっきりと言いました。
「毎週日曜日には教会にも行っている」
「この事務所の近くの」
「それは欠かしていない」
「けれどですね」
「だが私は神は信じていてもだ」
それでもというのです。
「サンタクロースはだ」
「信じておられないですか」
「今言った理由でな」
「一晩で何億人の子供にプレゼントなぞ配れない」
「そんなことは出来る筈がないのだからな」
それ故にというのです。
「サンタクロースはいない、この世では神がいなければ説明出来ないことも多いが」
「それでもですね」
「サンタクロースはいない、若しいればだ」
「どうされますか?」
「今日仕事で幼稚園に行ったが」
このことからお話するのでした。
「あちらで私にサンタクロースがいると言い切った子供達に謝罪する」
「サンタクロースは本当にいたと」
「ケーキを持って行ってな」
そのうえでというのです。
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