キズナ
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ピンチの中で
前書き
お待たせしました!
俺は麻痺した身体に動くように命令するが、俺の命令とは裏腹に身体は動かない。
俺がそうこうしているうちに、グレートパピヨンの突進が俺に衝突し全身に不快感が襲う。
「ぐわああああああっっっ!!」
吹き飛ばされた俺は全身を覆う不快感と共に木へとぶつかり口から血が出る。
「がはっ…!ゴホッ…ゴホッ…!!何だよ…血まで再現してんのか…、全くリアル過ぎるぜ…。」
…ったくよ、さっきジャストガードして回復したHP無けりゃ全損じゃないか。俺のHPはイエローゾーンを切り、レッドゾーンへと突入していた。
「流石に1人じゃNMは分が悪かったか…。」
とは言うものの…。
この迷いの森では助っ人など望めない。
俺は改めてグレートパピヨンへとタゲを取る。
まだグレートパピヨンのHPは半分残っている。
対して俺はHPはもう5分の1と言ったところだ。
何だろう、追い込まれてる筈なのに、筈なのに。
「すっげぇ楽しいぜ…。」
俺はノーマルソードを握り締めると立ち上がる。
俺は左の袖で口の血を拭うと、バックラーを構えてグレートパピヨンに叫ぶ。
「さぁ…ラストゲームと行こうぜ…!」
俺はグレートパピヨンを翻弄するように、木の間へと周り、タゲを取らせないように少しずつ木で隠れながら近付いていく。
「ギャアアアアアアッ!!」
そんな俺に苛立ったのかグレートパピヨンは奇声を発しながら、風起こしを始めた。
グレートパピヨンの風起こしにより俺が隠れていた木々を破壊していく。
「チッ…!何でもありかよ…!」
俺は倒されていく木々を上手く避けながらグレートパピヨンの背後へと回っていく。
「まずはアイツの羽を叩き斬る…!はぁっ!」
ザシュッ…!
「ギャアウウウッ!」
俺が振り抜いた一閃は、見事にグレートパピヨンの右羽の上部分を切り裂いた。
先程の攻撃で右羽の下部分が部位破壊されていたこともあり、今の攻撃で完全に右羽の活動を停止させた。
「よし!これで…」
これで倒せる。
そう思った。
キュルルル…バシュ…!
「な…っ!?」
俺の手と足に違和感を覚え、確認する。
「く…っ、やっちまった。」
完全に忘れてた。
グレートパピヨンに集中し過ぎた。
俺の手と足にはフォーモスの糸が絡まっていた。
「しくじったな…。倒したと安心していた。よく考えてみたらそうだよな、再ポップすることくらい考えられた。」
今回は俺の完全なプレミだ。
怒り狂ったグレートパピヨンは俺へと向かい溶解液の準備をしている。 完全に俺へと攻撃範囲の示唆が出ている。
あー。惜しかったな、くそ…。
俺がそう思い下を向いた時だった。
「諦めるのは早いよサクマ!」
俺の背後からそんな声が響く。
そんな、嘘だろ?俺がそんなことを考えるよりも早く俺の後ろから、短い武器を持った少年が駆け抜けてグレートパピヨンへと斬りかかる。
「サーペンタイン!!」
あれは短剣が覚えるスキル。
物理の必中攻撃。だがヘイトが大きく上昇し狙われやすくなる技だ。
いや、そんなことはどうでもいい、だって。
「ユウ…!」
動きが止まった少年の武器。
見間違えるわけがない。簪。
あんな武器装備してる奴はユウしかいない。
「サクマ!大丈夫!?」
そんなことを言いながらユウは俺へと微笑む。
「…ああ。すげー助かった…!」
「サクマ、助っ人は僕だけじゃないよ!」
後ろから短い詠唱が聞こえてくる。
「敵を燃やし尽くせ…ファイア!!」
「ピギャアアアア!!」
その詠唱と共に俺の手と足を絡めていた糸と共にフォーモスを炎が燃やしていく。
「カレン…!」
こんなことってあるんだろうか。
ピンチの場面に助っ人、しかもこんなに頼れる2人が。
「お前ら…、ったくタイミング良すぎなんだよ!」
ヘイトが上昇したユウがグレートパピヨンのタゲを取っている間に、カレンが俺の元に駆け寄る。
「大丈夫サクマくん!?」
「なんとか…な。本当カレン達が来なかったら死んでたぜ…。」
カレンはメニューウィンドウを開くと、オブジェクト化させたモノを俺に渡す。
「サクマくん、これ飲んで?」
カレンが俺に差し出したのは青い液体が入った瓶。
「ポーション…!いいのか?」
カレンは「うん!」と言うと、ポーションの蓋を開け俺の口元に近付ける。
「ほら、口開けて?」
「お、おう…。」
ゴクッ…ゴクッ…ん…。
みるみると俺のHPがグリーンゾーンまで回復していく。
カレンが俺の口元からポーションを離す。
「すまねぇ、本当に助かったカレン。」
「…………。」
……?
俺がカレンを見ると顔を赤らめてる。
「ん?どうした?」
カレンは俯いたまま俺に話す。
「…わざわざ飲ませなくても、サクマくんに渡せば良かったかなって…。」
俺も顔を赤らめていた理由を理解すると、俺まで変に意識してしまう。
だがそんな空気は長く続かなかった。
「サークーマぁぁぁ!!」
そんな叫びが響き渡り、ハッとする。
時折俺とカレンの方を見ながらユウがグレートパピヨンと戦いを繰り広げていた。
ユウが振り回す武器は、何かに八つ当たりしているようにも見えるが気のせいだろうか。
「ユウ!一気に仕掛けるぞ!」
その言葉を聞いたユウは頷く。
「カレン、倒すぞアイツを!」
「うん!」
俺はタゲを取られているユウとは逆方向に走り、近くに落ちていた石を拾い上げグレートパピヨンに投げつける。
だが、それでもヘイトを大きく上昇させたユウからこちらへとタゲを取ることは出来なかった。
「好都合だ…!カレン!ファイアの詠唱だ!」
「うん!弱点を突くんだね!」
俺は後ろからグレートパピヨンへと少しずつ攻撃を繰り出し、徐々にユウへのタゲが俺へと変わっていく。
「ユウ!連携で行くぞ!」
「僕とサクマなら行けるよ!」
俺はその返事を待ってました、と言わんばかりに走り出すとユウと一緒に連続攻撃を放っていく。
「「はああああっっ!!」」
俺とユウの休みの無い攻撃にグレートパピヨンは攻撃のモーションすら起こすことができない。
「サクマくん!準備出来たよ!」
カレンの声に反応して俺とユウはアイコンタクトを交わすと、左右に避ける。
俺とユウが避けた事により、グレートパピヨンの視界にはカレンの姿が目に入ったことだろう。
それも真っ赤な炎と共に。
「行けカレン!!」
カレンの詠唱によりカレンの周りを赤い魔法陣が浮かぶ。
「私の今の全力…! ファイアボール!!」
RPGでは定番の初級火炎弾系攻撃魔術。
しかし、こんなリアルな世界で見るととても初級火炎弾系攻撃魔術には見えない。対人でウィザードとか当たりたく無いなぁと、こんなタイミングですら思ってしまう程だった。
カレンが放ったファイアボールはグレートパピヨンへと直撃し、グレートパピヨンは炎に覆われてみるみるHPが削れていく。
「トドメ…!ファイア!!」
追撃のファイアを発動し、グレートパピヨンへのトドメへとなった。
「グギャァァァァァァァ……」
グレートパピヨンは断末魔をあげると、その場に倒れ込み青いポリゴンと化し爆散した。
【LAST ATTACK BONUS】
prayer カレン
アクセサリー 蝶の指輪
後書き
サクマ「ラストアタックボーナスおめでとうカレン!」
カレン「うん…ありがと!」
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