戦国異伝供書
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第三十一話 九州攻め前その四
「成敗せねばならんか」
「若し本当にいれば」
「そうも考えておる、思えばじゃ」
「思えばといいますと」
「古事記や日本書紀を読んでおるとな」
信長はこうした書についても言及した。
「まつろわぬ者達が出て来る」
「確か鬼や土蜘蛛が」
「そうじゃ、実はな」
「まつろわぬ者達ですか」
「まつろわぬ者達の多くのもやがては本朝に入っていったが」
「全てはそうとは限らないですか」
「そうであろう、そして若しやな」
やはりまさかと思いつつだ、信長は話した。
「その入っておらぬ者達がな」
「天下の裏で蠢いて」
「悪しきことをしておるか、そしてな」
「殿にも」
「そうでないかとな」
「今でも思われていますか」
「そうじゃ、だからな」
それ故にというのだ。
「天下統一が成ってな」
「それからですか」
「その者達のこともじゃ」
「探してな」
そおうえでというのだ。
「若し悪しきことをしておるなら」
「成敗されますか」
「そう考えておる」
「左様ですか」
「何かがおらぬと説明がつかぬ」
信長はいぶかしむ顔で帰蝶に述べた。
「その様なことがこれまで幾度もあった」
「勘十郎殿のことや室町様のこと」
「そして浅井家のこととな」
「本願寺もですね」
「わしが何かしようとすれば常にじゃ」
信長は金ヶ崎から退いた時のことも思い出しつつ話した。
「起こっておる」
「そして起こしているのは」
「その闇の者かとな」
「思われていますな」
そうじゃまさにというのだ。
「わしもな」
「左様ですか」
「お主はどう思うか」
ここまで話してだ、信長は帰蝶に問うた。
「このことについて」
「あまにも妙かと」
帰蝶もこう答えた。
「これまで殿の為されることにです」
「常にじゃな」
「殿の言われる通りにです」
まさにというのだ。
「起こっていますので」
「妙なことがな」
「そのことから考えますと」
「やはりか」
「何かがいる」
その様にというのだ。
「思えます」
「やはりそうか」
「しかしです」
「それがまつろわぬ者かはか」
「わかりませぬ」
帰蝶にはというのだ。
「私はあの者達には詳しくないので」
「だからか」
「はい、しかし」
「わしと同じくじゃな」
「この天下にはじゃな」
「裏があり」
そしてその裏にというのだ。
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