徒然草
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176部分:百七十六.黒戸は
百七十六.黒戸は
百七十六.黒戸は
清涼殿の黒戸御所は光孝帝が即位された後で帝がかつてただの人であられた頃の自炊されていた生活を忘れない為に何時でもまた炊事ができるようにしていた場所であります。そこは自炊をする時に火を使うのでそれにより薪で煤けていましたのでそれで黒戸御所と呼ばれるようになったのであります。
それだけのことであるのですがそこにあるものはやはり意味の深いものであります。帝の様な尊い方になられてもそれでもそうしたことを忘れないでおこうという御心こそまことに尊いものであります。世の中ついつい偉くなってしまうとそれで鼻を天狗の様にさせてしまい胸を反らせている人もいますが光孝帝は違いました。帝の様なお立場でもこうした心を忘れないのです。それならば我々も忘れてはいけません。忘れていなく最初から身に着けていなければそれを身に着ける、そうでなくて何が立つのでしょうか。まずはそうしたことから心を構えていかなければならないのです。そうはいってもこのことをしかと備えている人が少ないのもこれまた事実であります。まことにそうした心の無い人が多いものです。それが残念なことであります。そしてそれと共に自分もそうではないのかと常に考えていくのも大事なことでありましょう。
黒戸は 完
2009・11・6
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