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麗しのヴァンパイア

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第百十四話

                第百十四話  作者の義務
 博士はコーヒーだけでなくマカロンも出した、そしてそのマカロンの味も楽しみつつ小田切君にさらに話した。
「作者が飽きることもあるが」
「人間やっぱりありますね」
「しかしな」
「飽きたからといってもですね」
「作品を放り出して未完にしておくことはな」
 このことはというと。
「やはりな」
「作者失格ですな」
「そうなる、作品が泣く」
 博士はここでもはっきりと言い切った。
「だからじゃ」
「書きはじめたならですか」
「商業誌だと打ち切りもあるが」
「例え打ち切りでもですか」
「終わらせねばじゃ」
 やはりそうしなければというのだ。
「ならんのじゃ」
「それが作者の義務なんですね」
「揺るぎないな、だから若しも小田切君もじゃ」
 小田切君自身にも言うのだった。
「小説なり漫画を執筆するとな」
「最近どっちも投稿サイトありますしね」
「やはりじゃ」
「完結させてこそですか」
「作品でな」
「創作者ですか」
「時折多く書くが一作も完結させておらぬ作者もおる」 
 世の中そうした作者もいるのだ。
「スランプで書けないのならそれはやはり仕方ないが」
「飽きたとかいう理由で放り出すと」
「失格じゃ、またスランプもな」
 これもというのだ。
「理想を言うとな」
「乗り越えないといけないですか」
「わしはスランプは感じたことがない」
 博士の場合はそうだった。
「知能指数二十万の頭脳にはその様なものはない」
「まあそれだけあればですな」
「それにはならんが」 
 それでもというのだ。
「しかしじゃ、スランプになってもと思う」
 博士はさらに言った。
「人間は苦難を乗り越えるものだからスランプもな」
「乗り越えるべきですか」
「そうするのが理想じゃ、それでじゃ」
「作品は何があっても完結させる、ですか」
「そうでなければならん」
 博士は小田切君に持論を述べた、そうして彼にもマカロンを勧めて食べさせるのだった。今は文学モードの博士だった。


第百十四話   完


                  2018・12・12 
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