ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第36話:Meyer Ruby
前書き
マーティ出ませんよ?
だから大幅に話変わってます
とある海域にてハンターベースに輸送されるはずだった大量の物資を載せた輸送船がイレギュラーに襲われて沈められると言う事件が何度も発生し、この事態を重く見たケインは沈められた船の共通点を調べ、あることに気付いたのである。
「「マイヤールビー?」」
疑問符を浮かべるエックスとエイリアにケインは重々しく頷いた。
「うむ、お前さん達はマイヤールビーとは何なのか分かるかのう?」
「はい、水中用レプリロイドのエネルギー源ですね」
エイリアがケインの問いに答える。
基本的にレプリロイドは基となったエックスと同じくエネルゲン水晶と太陽光でエネルギーを賄っているのに対して、水中用レプリロイドは基本的に太陽光の恩恵を受けられない上にボディと内部機関の温度調整が地上以上に行われる水中での活動が主なのでエネルゲン水晶とマイヤールビーと呼ばれるエネルゲン水晶以上の高エネルギー物質で賄っている。
「しかし、マイヤールビーがどうかしたのですか?」
「うむ、どうやら襲われた輸送船には一つの共通点が見つかったのじゃ…それがこのマイヤールビーなんじゃよ」
エックスの問いに答えるようにケインは厳重に収められているかなりの大きさのマイヤールビーを見せる。
それを見たエックスとエイリアは感嘆の息を吐いた。
何しろ指で摘まめるくらいのサイズでさえ長時間の水中での稼働を可能とするエネルギー物質だ。
それが両手にようやく収まるようなサイズだとあまり物欲を持たないエックスやエイリアでも凝視してしまうのも無理はなかった。
「このマイヤールビーを狙っての犯行と言う訳ですね?」
「そうじゃ、マイヤールビーは使い方を変えれば大量破壊兵器の量産も容易く出来るようになる。それだけのエネルギーがこのマイヤールビーにはあるんじゃよ。そして高値で密売される代物でもある。そして今の情勢でこのようなことをする者と言えば…」
「シグマ…ですね」
「うむ、少なくともシグマの関係者であることは間違いあるまい。そしてそのようなことをする者にも目星が付いておる。蟹型レプリロイドのイレギュラーハンター第6艦隊に所属していた元特A級ハンター…バブリー・クラブロスじゃよ」
「クラブロスって…あの守銭奴で有名だった…」
「うむ、先のシグマの反乱の際に行方を眩ませていたのじゃが、ここで本格的に活動を始めたようじゃな」
「クラブロス…」
クラブロスがシグマの元についた理由は何となく理解出来る。
恐らくクラブロスは反乱に加われば莫大な大金を得られると思ったからだろう。
何せイレギュラーハンターに入隊した理由も給料が他よりも良いからと言う理由である。
「クラブロスのことだからマイヤールビーを素直にシグマに渡すはずがないのが救いか…今から輸送船が沈められた海域に行きます!!」
「待ってエックス!!地上用のレプリロイドであるあなたは水中で満足には動けないわ!!」
「だけど…」
「水中用の装備を手配するわ」
エイリアがエックスのために水中用の装備の手配をし、エックスは背中に外付けのジェットパックを装備して出動した。
「っ…成る程、これは予想以上に動きにくいな」
水中のためか何時もより動きが鈍い。
もしエイリアが水中用のジェットパックを用意してくれなければ素早い動きは不可能だった。
慣れない水中ながらも何とか此方に向かってくるクラゲのようなメカニロイドを撃破していくが、背後から元々先程のメカニロイド…ジェリーシーカーを休ませたり、整備や補給をするための母艦として開発された深海作業艇で今は輸送用に改造されているが、追尾ミサイルやレーザー光線などを装備したシーキャンスラーがエックスを追い掛けてくる。
エックスは追い付かれないようにジェットパックの出力を上げながらシーキャンスラーの周囲を動き回ってチャージショットを叩き込む。
水中用の調整を施されているために水中でもエネルギーが放電されてしまうこともなく放てるのだ。
「よし、チャージショットが撃てる!!」
ケインの調整が上手くいったことにエックスは至近距離でショットを連射してシーキャンスラーを破壊していく。
時折ミサイルが飛んでくるものの、チャージショットで薙ぎ払うとエックスは止めとばかりにチャージショットを放って破壊した。
一方、深海基地の司令室に相当する場所ではクラブロスが輸送船から奪ったマイヤールビーに舞い上がっていた。
「これだけのマイヤールビーがあればどれだけの儲けになるでしょうか?」
「まあ、待たんかい。今計算中や…今、貯金箱に入っとる金や宝石、マイヤールビーも合わせて~90億ゼニーや!!」
「90億ゼニー!?それだけあれば…」
部下のレプリロイドが最後まで言い切ることは出来なかった。
何故なら上から放たれたチャージショットがクラブロスの部下の頭部を粉砕したからだ。
「あ?何や何や?」
部下のエネルギー源となっていたマイヤールビーを回収しながら上を見上げるとエックスがクラブロスにバスターを向けていた。
「クラブロス…人々を守るイレギュラーハンターでありながらこんなことをしていたのか!!」
「あ~?何やエックスやないか。久しぶり…って言うべきなんか?昔は随分甘ちゃん面やったのに随分と変わったやんか…甘ちゃん卒業おめでとうやな」
クラブロスがどうでも良さそうに回収したマイヤールビーを貯金箱に放り投げると口に相当する部分に入った。
『毎度ぉ~只今の品物で現在総額90億8900万とんで17ゼニー也~っ!!』
「90億…!?」
あまりの法外な金額にエックスは絶句する。
これだけの金額を得るためにどれだけの悪行をしたのかエックスには理解出来なかった。
「かーたまらん!!貯金箱に金が貯まる瞬間が大好きなんよーっ!!」
「クラブロス!!お前はこれだけの金を得るのにどれだけの悪事を働いたんだ!!」
「これだけやないでエックス!!この基地にはシグマに献上するためのマイヤールビーがぎっしり入った部屋もあるんや…その部屋にあるマイヤールビーを合わせれば300億ゼニーになら~~~!!金の力でシグマさえこの手の中に牛耳ってみせるわいーっ!!」
「貴様…っ!!」
「おっと、待つんやエックス…こいつらを見てもらうで~」
次の瞬間、魚の骨のような物が出現し、そこには沈められた輸送船の船員が磔にされていた。
「こ、これはまさか!!沈められた船の船員か!!」
「そうや、こいつらも水中用レプリロイドやからこいつらの体の中にもマイヤールビーがある。動くんやないで?動いたらこいつらはこうなる!!」
「ぐはっ!?」
クラブロスの肩から伸びるビームの鋏…ビームシザーで虫の息の船員を破壊し、マイヤールビーを回収した。
「貴様っ!!」
「動くとこいつらがどうなっても知らへんで?わしは別にマイヤールビーさえ無事ならこいつらがどうなってもええんやけどな」
クラブロスの言葉にエックスは構えていたバスターを下ろすと何とか状況を打開するために考える。
「(ここから飛び出しても船員の人達が同時に攻撃を受けてしまう。何とか奴の注意を引かないと…その為には…)」
エックスの視線が一瞬だけ向けられたのは悪趣味な蟹型の貯金箱。
「こいつだ!!」
チャージショットが貯金箱に向けて放たれ、クラブロスは突然のことに反応出来ずに貯金箱を破壊されてしまう。
「!?ちょ…っ、わしの貯金箱!!わしの金がーーーっ!!!」
「喰らえ!!」
続いてZXセイバーを抜いてチャージセイバーの衝撃波でクラブロスを吹き飛ばす。
「金!金!!金ーっ!!わしの金~~~っ!!」
吹き飛ばされながらも金への執着は凄まじく、金や宝石を掴もうとするが、エックスの攻撃で再び吹き飛ばされる。
「見苦しいぞクラブロス!!曲がりなりにも特A級ハンターだった男が!!」
人質から大きく離されたクラブロスはエックスとの1対1の状態となる。
「エックス…!!」
「よくもあんな卑怯な真似を!!許さないぞ!!」
正義感の強いエックスからすればあのような行為は到底許せるものではなかった。
「生意気なー!!バブルスプラッシュ!!」
泡を吐いてエックスの左腕にぶつけると、エックスの左腕が溶解した。
「なっ!?左腕が…」
「忘れたんかエックス!?わしのバブルスプラッシュは強酸の泡やで!!水中ではバブルスプラッシュの攻撃範囲も広がり、どんなレプリロイドもドロドロに溶かして来たんや!!良くもわしの貯金箱を破壊してくれたもんやな!!お前もドロドロに溶かしたる!!」
小型メカニロイドを射出し、エックスに突撃させる。
エックスはそれをセイバーで弾いていくが、クラブロスは肩のビームシザーでエックスを捕まえて挟みこんだ。
「ぐああああっ!!」
「捕まえたでえっ!!このままバブルスプラッシュで…」
「ストライクチェーン!!」
「ぐへえっ!?」
クラブロスがバブルスプラッシュを放つ前にエックスが顔面にストライクチェーンの鎖を叩き付けることで何とか離脱した。
「簡単にはやられないぞ!!」
「くう~っ、人がせっせと集めた金をばら撒きおって、このくそボケーっ!!お前は原型も残らへんくらいドロドロに溶けてまえーっ!!」
怒りの形相でバブルスプラッシュをエックスに向けて放つクラブロス。
先程よりも出力を上げているのか泡の量と規模が桁外れだ。
「待っていたぞ、お前が全力のバブルスプラッシュを放つ時をなっ!!」
ダッシュで床すれすれに移動するエックス。
「なっ!?バブルスプラッシュが何で当たらへんのや!!」
「自分の技を過信し過ぎたなクラブロス!!確かにお前のバブルスプラッシュの酸は強力だが、所詮は泡だ。床すれすれで移動すれば当たりはしない!!」
「そ、そんなあ~っ!!」
「ストライクチェーン!!」
再び鎖を射出してクラブロスを雁字搦めして一気に引き寄せると左手に構えたセイバーを振るった。
「これで終わりだクラブロス!!あの世で銭勘定をしてるんだな!!」
チャージセイバーでクラブロスを斬り上げて一刀両断するエックス。
しかしクラブロスが死んだことで基地の自爆装置が作動してしまう。
「どうやら、クラブロスが死ねば基地の自爆装置が作動する仕掛けのようだな…急いで人質を解放して脱出しなくては!!」
急いで人質を解放して深海基地を脱出するエックス。
しかし、基地の崩壊には巻き込まれなかったものの、爆発の余波を受けて気を失ってしまう。
『…クス…エックス!!聞こえる!?』
「ん…エイリア……?」
エイリアからの通信によって意識を取り戻したエックスは周囲を見渡した後、通信に応対した。
「生きているのか…エイリア、こちらエックス…イレギュラー・クラブロスを処分は完了した。マイヤールビーは…残念ながら回収出来なかった」
『そう…貴重なエネルギー物資だけど悪用されるよりはマシね。お疲れ様エックス…今から迎えを…』
「ああ、頼むよ……あっ!?」
『どうしたのエックス!?』
驚いたような声を出すエックスにエイリアは驚きながらも尋ねる。
「エイリア、今から俺の視覚情報を共有する!!凄い物が見れるよ!!」
『凄い物…え?嘘…?』
そう、エックスが見せたかったのはこの時代では絶滅したはずのイルカであった。
『そんな…イルカは既に絶滅しているはずなのに…』
「多分、まだ僅かに生き残りがいたのかもしれない。そして姿を現した原因はマイヤールビーだよ。マイヤールビーが基地の破壊で粉々になったことでマイヤールビーのエネルギーがこの海域の生命体に力を与えたんだ…」
『そんなことが…マイヤールビーにそんな力があったなんて…』
「確証はないけどね…近い内にここの生物は保護した方が良いかもしれない。彼らを未来に遺すためにも…この奇跡を無駄にしないためにも」
『奇跡…そうね、後で海上警備隊に連絡を入れておきましょう…』
エックス達は跳び跳ねるイルカを見つめる。
この奇跡を目に焼き付けるように。
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