| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

この素晴らしい世界に文明の鉄槌を! -PUNISHMENT BY SHOVEL ON THIS WONDERFUL WORLD!-

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

八丁

カァーン! カァーン! カァーン!カァーン!

朝早くから鎚と金床の音が響く。

「…………………ふぅ」

「頑張ってくださいパパ!」

「おう」

フェイベルが生まれてはや二年。

にゃんにゃんは家の裏に作った作業場で鍛冶をしていた。

叩いているのは、赤く光る大人の掌大の金属片。

「くっそ…! 硬すぎんだろこれぇ!」

その金属片は、鱗のような形をしている。

「ふふん。もっと誉めてもいいんですよパパ?」

そう。それは龍体のフェイベルから剥がれた鱗だ。

作業場の炉の中では生え代わりで抜け落ちた鱗が熱されている。

現在にゃんにゃんは鱗をインゴットにするために叩いている。

「フェイベル。本当に刀でいいんだな?」

「はい! パパの言うカタナ・ブレードを使ってみたいです!」

「まぁいいけどさ…。この素材なら易々と折れないだろうし」

にゃんにゃんは叩く手を止めると、鱗を再び炉に放り込んだ。

「クリエイト・コロナタイトシャベル」

グローブを着けた手の、指の間三本に赤熱する小さいシャベルが生まれた。

にゃんにゃんはそれを炉に入れる。

「もうちょう追加しとくか…」

そのあと同様にして六本、計九本のコロナタイトを炉に入れた。

室温が一気に上がる。

「パパ!、火を見てていいですか?」

「まぁ…いいけど…」

にゃんにゃんは炉の前から退くと、そこに服を脱いだフェイベルが横たわる。

「はふぅ…」

「すげぇなお前。そこの温度2500はあるぞ」

「パパも平気なのでは?」

「俺はスキルと魔力量でなんとか持ってるだけさ」

それはフェイベルの刀を作るのが進まない原因でもあった。

「そうなのですか?」

「まぁ…その鱗を持ってるお前なら大丈夫か……なんせ7000度の高温でも変化しないからな…間違って蒸し焼きになるなよ?」

「大丈夫ですよ」

そういうとフェイベルは片手を炉に入れた。

「ほら、大丈夫です」

炉からぬかれた白く細い幼女の手は何も変わらずそこにあった。

「俺の心臓に悪いからやめれ」

「はーい」

にゃんにゃんは作業場から出て、居間の行くとバタリと倒れた。

「うぁー………」

「あらにゃーちゃん。フェイベルは?」

そう言いながらリーアがにゃんにゃんに水を渡す。

体を少し起こして受け取った水を飲むと、また倒れこんだ。

「また炉の前で寝てる」

「裸で?」

「こないだ服が燃えただろ…」

「そうよねぇ…」

「少し休憩したらもどるわ…」

「大丈夫なの?」

「コロナタイト九個だぞ。これで加工出来なけりゃ里ではどうにもならん」













休憩を終えたにゃんにゃんが作業場に戻ると、フェイベルが尻尾を炉に入れて寝ていた。

「フェイベルにとっちゃ炬燵みたいな物なのかねぇ…」

にゃんにゃんは保護魔法を自分にかけ、フェイベルを起こした。

「ふぁぁ…ぱぱ?」

「いまから続きをやるから、そこを開けてくれないか?」

にゃんにゃんがそう言うと、フェイベルは直ぐに退いた。

にゃんにゃんが炉の中を覗く。

「やってみるか…」

にゃんにゃんが鱗を取り出す。

鎚で叩くと、僅かにへこんだ。

「うん…いけそうだな」

「パパ、一ついいですか?」

「どうした?」

フェイベルが炉を指差す。

「なんと私ここに体を入れると魔力が回復します」

「ほうほう」

「故に私が尻尾を入れて、私がドレインバイトでパパに魔力を流し続ければずっと作業できます」

「まぁ…やってみるか…」

にゃんにゃんが上着を脱ぐ。

フェイベルは炉に尻尾を入れて、にゃんにゃんの左首筋に噛みつく。

カァーン!カァーン!カァーン!

鱗が徐々に形を変えていく。

にゃんにゃんはその上から別の鱗を乗せ、一つにまとめていく。

延ばしては折り曲げ、延ばしては折り曲げを繰り返す。

炉に入れたり出したりしながら約半日。

ついにインゴットが完成した。

「ふぅ……」

「できたの?」

いつの間にかいたリーアが尋ねる。

「いや、インゴットにしただけだようやくスタート地点に立てた感じかな」

「そう。それにしても犯罪的な絵ね」

上裸でポニテの男の娘の首に噛みつく幼女。

犯罪的である。

「ん? あぁ……。おいフェイベルそろそろ離せ」

「ZZZ……」

「マジかよ。こいつドレインバイトで魔力流しながら寝てやがる。器用だな」

フェイベルをひっぺがしたにゃんにゃんがコロナタイトシャベルを消失させた。

一気に部屋の温度が下がる。

「ふー………メシ食って寝よ…」

「汗臭いからお風呂入りなさいよ」

「……クリーン」

にゃんにゃんが自分とフェイベルに魔法を使うと、汗の匂いや土が消えた。

「まったくこの不精物は……!」

結局リーアに連行され風呂に入れさせられる二人だった。 
 

 
後書き
次回からめぐみんのターンです。
まぁ…すでに崩壊してますが…。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧