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戦国異伝供書

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第三十話 九州攻めに向けてその七

「清州からな」
「名古屋城とあらためて」
「その城は東海道の護りじゃが」
「徳川殿の付け城にもして」
「警戒する、特に江戸城はな」
「東国を治める要で」
「あの地から徳川家にじゃ」
 さらにというのだ。
「北条、武田、上杉とな」
「合わせて四つの家をですな」
「見る城じゃ」
「それだけに大きいですな」
「そうじゃ、北条家には相模と伊豆を預けた」
 北条家の元々の所領である。
「武田家には甲斐、上杉家には越後の真ん中とな」
「それぞれ預けましたが」
「しかし備えは必要じゃ」
 降して家臣にはした、だがそれでもというのだ。
「だからじゃ」
「ここは、ですな」
「あの四つの家にな」
「付け城として」
「江戸城を置いたのじゃ」
「それ故に巨大な城にしていますか」
「安土や大坂に負けぬ位のな」
 そこまで大きな城にしているのだ、実際に。
「その様に築かせておる」
「徳川殿に縄張りをしてもらい」
「竹千代もわかっておるがな」
 縄張りをする家康自身もというのだ。
「その城があ奴の付け城でもあることはな」
「そえでもですな」
「あ奴は律儀じゃ、それにじゃ」
「野心もですな」
「今はない」
 三河と遠江そして駿河の三国で満足しているというのだ。
「だからな」
「ここは、ですな」
「あ奴に築かせてな」 
 そしてというのだ。
「そのうえでじゃ」
「東国の要、四家の付け城としますか」
「左様じゃ、ではな」
「これからもまた」
「様々な政をしていく」
 それを行っていくというのだ。
「よいな」
「茶についても」
「そうしていく、それと堺のことじゃが」
 利休は元々堺の豪商である、信長はこのことを踏まえて利休にこの街のことも聞いたのである。
「近頃どうじゃ」
「商いのことですな」
「うむ、どうなっておる」
「はい、南蛮の船も明の船もです」
「これまで通りじゃな」
「盛んに行き来しておりまする、ただ」
「神戸そして東国だと横浜にも港を開いた」
 南蛮や明との貿易の為のそれをだ、
「それでじゃな」
「負けていられぬとです」
「奮い立っておるな」
「そうなっております」
「よいことじゃ、競い合ってじゃ」
「商いをせよというのですな」
「独り占めでは驕って怠けてしまう」
 そうなってしまうとだ、信長は看破していた。
「それでじゃ」
「これからはですな」
「神戸や横浜に負けるでないぞ」
「そしてやがて長崎や平戸にも港を開きますな」
「そして琉球ともこれまで以上に商いをする」
 この国ともというのだ。 
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