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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第30話:Past

爆弾を破壊したエックスはハンターベースに通信を入れて転送してもらおうと立ち上がった時であった。

「ん!?」

殺気を感じて振り返ると、凄まじいスピードで此方に迫ってくるレプリロイドの姿があった。

「あれは…!?」

バスターを構えようとするが、それよりもレプリロイドが跳躍した。

「上…ぐっ!?」

降り注ぐ衝撃波の刃にエックスは直撃は避けたものの、腕に僅かだが裂傷が刻まれる。

「(何て切れ味なんだ。もしファーストアーマーの防御力が無ければ危なかった…!!)まさか、ここのボスか!?うあっ!?」

反応する暇もなく、エックスは体当たりを受けて吹き飛ばされる。

「クァックァックァッ、俺の嫌いな空を剥き出しにした上にミサイルまで撃ち落としやがって。エックスよ~てめえはぁ…」

此方を睨み付けてくるレプリロイドの姿にエックスは目を見開く。

「お、お前は…行方不明になっていた元第7空挺部隊所属のソニック・オストリーグ!?どうして此処に…」

「どうして…だと…?クァックァックァッ…!!エックス…てめえは本当にとことんムカつく野郎だぜぇーーーっ!!!」

血走った目を此方に向けながらオストリーグは突撃し、エックスを自身の刃で斬りつけていく。

「ぐああああっ!?」

「飛べなくなった俺を救ってくれたシグマ様に楯突く奴はぁ、許さねえっ!!死ねええええっ!!エックス!!」

次に両肩の刃を飛ばしてエックスに裂傷を刻む。

「うわあっ!!(な、何て切れ味だ。ファーストアーマーの装甲を斬り裂くなんて…!!)」

「中々頑丈なアーマーだが関係ねえ!!こんなもんじゃ済まねえんだよ!!貴様も同じように百八に斬り刻んでやるぞ!!」

エックスを斬り刻みながらオストリーグの脳裏を過ぎるのは2年前の飛行訓練でのことだ。

飛行訓練中にブースターが故障して高所から墜落するという事故によるトラウマで飛行能力を封印し、イーグリードに第7空挺部隊を辞めることを伝えた。

『……考え直せないか…どうしても空挺部隊を…辞めるのかオストリーグ?』

『すいません隊長……でも…自分は…空が……くっ…空が怖くなったのです!!』

飛行能力を持つレプリロイドとして情けないのは分かっているが、あの落下の恐怖がオストリーグの中で巣食っていた。

『……空が……か…分かった。そこまで言うならもう言うまい。でも俺は何時までも覚えてるぜ。ソニック・オストリーグと言う空の猛者を!!そして信じてる、もう一度共に空を飛ぶことをな!!』

笑みを浮かべて言うイーグリードにオストリーグは感極まったような表情を浮かべる。

『イーグリード隊長…』

『隊長は止めろよ!これからは“友達”だろ』

『ありがとう…イーグリード』

こうしてオストリーグは第7空挺部隊を辞め、シグマによって強力な脚力を見込まれて再評価されたオストリーグは別の部隊で活躍していた。

そしてシグマの反乱の最中、任務によって遠征に出ていたオストリーグの元にシグマが現れ、オストリーグに見せたのは破損したバスターであった。

『こ…これは…そんな…』

『そうだ…イーグリードのバスターだ。』

バスターを見て震えるオストリーグにシグマは誰のバスターなのかを教え、それを聞いて目を見開くオストリーグ。

『形見…になるか…?取っておけ、それしか形を留めていなかったのだ。反逆者“エックス”とその仲間がお前の大切な“友”を百と八に砕いたのだ!!』

『反逆者…エックスぅ?…ぐ…ぐぐ…』

膝をついて項垂れるオストリーグは拳を握り締め、それを床に叩き付け、今度は壁に何度も拳を叩き付けた。

それをシグマが腕を掴むことで止める。

『止めるなぁ…っ!!』

オストリーグの拳は血が滲んでおり、それがオストリーグの怒りを表しているよう思えた。

『止めろ…イーグリードを殺されたお前の今の気持ちは分かるぞ』

『何がっ!!』

シグマの言葉に顔を背けるオストリーグだが、それに構わずにシグマは言葉を続ける。

『どうだ…オストリーグの……同志とならんか?反逆者を潰し、我らの理想の為に共に戦おう。イーグリードの意志を継ぐのだ。』

シグマのその言葉にオストリーグは何かを決意したような表情を浮かべて部屋を後にしようとする。

『形見のバスターは要らんのか?』

『形見?友は何時も“心の中”にいる』

それだけ言い残してオストリーグは今度こそ部屋を後にした。

『くくく…くっくっくっくっくっ…ハーハハハハハハハァッ!!!』

直後にイーグリードのバスターを踏み潰し、嘲笑うような笑い声を上げているシグマに気付かぬまま。

「そうだ!貴様だ!!」

「ぐあ…っ!!」

オストリーグの脚力にものを言わせた鋭い蹴りがエックスの胴体を斬り裂き、そのまま吹き飛ばす。

「貴様だっ!!」

「くうっ!!」

「貴様がっ!!き・さ・ま・がぁーーーっ!!!」

跳躍したオストリーグのソニックスライサーが吹き飛ばしたエックスに炸裂する。

「うわあああっ!!」

オストリーグの猛攻に防戦一方のエックス。

そしてゼロの方も徐々に数に押され始めていた。

「倒しても倒しても、全くキリがないぜ…ゴキブリか貴様ら……」

流石のゼロも新たなボディに慣れていない上に数の差はどうしようもなく、次から次へと現れる敵に疲弊していた。

そして隙を突かれてしまい、メカニロイドに拘束されてしまう。

「っ!!しまった、放せぇ!!」

何とか振りほどこうとするが、その前に攻撃を受けてしまう。

「うわあああっ!!…くぁっ…エッ…クスう…」

ダメージと疲労でふらつくゼロと、オム砂漠でオストリーグに押されているエックスの姿をシグマはモニターで見ていた。

「エックス…ゼロ…過去の遺物共よ…苦しめ…苦しめ…しかしな…まだまだこれからだ。くっくっくっ…私の作った“生き地獄”はまだまだこれからだ!!」

モニターを見つめるシグマはとても愉快そうな笑みを浮かべていた。 
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