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戦国異伝供書

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第三十話 九州攻めに向けてその二

「大きな力は持たせぬ」
「あまりにも大きくは」
「そうじゃ、大き過ぎる力はな」
「天下布武の邪魔ですな」
「それでじゃ」
「島津家についても」
「九州統一は許さぬ」 
 絶対にというのだ。
「薩摩と大隅と。特別に明や南蛮との交易も認めるがな」
「それはその二国が貧しく」
 黒田が言ってきた。
「侍があまりにも多いからですな」
「そうじゃ」
 それでというのだ。
「その侍達を養わせる為にな」
「特別にですな」
「あの家にも交易を許すが」
 しかしというのだった。
「九州の統一は許さぬ」
「左様ですな」
「それでじゃ、あの家が九州を統一する前に」
 まさにというのだ。
「必ずじゃ」
「出陣し」
「島津家を抑える」
「その様にしますな」
「お主達はその用意を怠るでないぞ」
 このことは決してというのだ。
「必ず戦になるからな」
「だからですな」
「島津家の状況を見れば」
「九州に最早敵はない」
「だからですな」
「そうじゃ、あの家と戦をしてな」
 そうしてというのだ。
「必ずじゃ」
「あの家を降し」
「九州も公儀の中に収める」
「そうしますな」
「その通りじゃ、無論検地も行い」
 このことは忘れない信長だった。
「刀狩りもじゃ、そして銭を取る様な関所はなくし」
「楽市楽座も進め」
「天下の政に入れていきますな」
「そうじゃ、刀狩りも行い」
 そしてと言うのだった。
「城も減らずぞ」
「余計な城は壊し」
「必要な城だけ残しますな」
「その様にしますな」
「そうする、そして城を新たに築きなおしたり修繕する場合もな」
 こうした場合についてもというのだ。
「公儀の許しを必要とする様にな」
「定めますな」
「これからは」
「その様にしてですな」
「九州も治めていきますな」
「その様に」
「そういうことじゃ、城を築くのは公儀が行う」
 即ち織田家ひいては信長がというのだ。
「よいな」
「はい、では」
「その様にしてですな」
「九州もですな」
「治めますな」
「そうする、そして島津家の者達じゃが」
 戦う彼等についてはというと。
「前から言っておる通りじゃ」
「暫し蟄居はさせるにしてもですな」
 柴田が問うてきた。
「それでもですな」
「うむ、誰もじゃ」
「腹を切らせることはしませぬな」
「それはせぬ」
 絶対にとだ、信長は柴田に確かな声で答えた。 
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