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『魔術? そんなことより筋肉だ!』

作者:蜜柑ブタ
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SS19 アンリミテッド・ハードワークス(無限の筋トレ)

 
前書き
タイトルの名称は、ハーメルンで、感想欄でいただきました。 

 


「シロウは、私の鞘だったのですね。」

「……その台詞…。なんか妙な感じに感じちゃうわね。」

 士郎の傷の治りの早さの異常性。
 それをちょっと調べてみたら、セイバーのエクスカリバーの鞘が体内にあったことが判明した。
「なるほど。ですから、士郎は、肉体の限界を遙かに超える修行を行っても耐えることが出来たのです。肉体の限界による崩壊を鞘によって防いでいたのですから。」
「じゃあ、この馬鹿の非常識筋肉の元凶ってわけ?」
「…かもしれませんね。」
「けど、ユーリ兄ちゃんには、鞘なんてなかったけど?」
「そりゃ、そいつが異常よ。ある意味でね。」
「先輩? どうしました?」
「……俺自身の力で筋肉魔法を手に入れたわけじゃなかったのか…。」
「いいえ。運も実力のうちって言いますよ? 先輩に鞘がなかったらとっくの昔に身体がダメになってたんです。つまり鞘という運が巡ってきたからこそ、先輩の筋肉魔法が手に入ったと考えませんか?」
「桜…。そうか。そうだな。」
 暗くなっていた士郎だったが、桜の励ましを受け、顔色を明るくした。
「私としては、鞘をセイバーが持つべきだと思うけど……。この状態じゃ…。」
「ええ…。シロウの筋肉に凄まじく癒着していて、摘出は困難です。」
「いや、取る方法はある。」
「あら、アーチャー。」
 そこへアーチャーが来て言った。
「投影魔術だ。」
「投影魔術?」
「そうだ。魔力を使い、無から有を創り出す魔術。それを使い、鞘を投影して再現すればいい。」
「そう言われたって、俺、鞘の形なんて知らないぞ?」
「貴様…、セイバーの記憶を見ていないのか?」
「ん? ああ。なんか見たような気がするけど、別に気にしてなかったから覚えてない。」
「そこにヒントあったというのに!」
 アーチャーが、ワーっと両手で顔を覆って泣き出した。
「あんたよく泣くわねぇ…。」
「これが泣かずにいられるか! コイツの魔術回路は、本来は投影魔術と固有結界に特化した超特殊な特化型なんだ! それが筋肉に塗りつぶされていると考えたら…。うぅぅ。」
「筋肉の何が悪いってんだ!」
「無駄よ。アーチャー…。この筋肉バカは、どこまで行っても筋肉しかないから。」
「では、試してみてはいかがですか?」
 ライダーが言った。
「アーチャーの言うとおり、投影魔術に特化した体質ならば、教えてもらえばできるんじゃないですか? 試しに何か作ってみては?」
「うーん。……じゃあ、筋トレ道具でも作ってみるか。」
「やっぱそうくる?」
「アーチャー。やり方教えてくれ。」
 士郎は、アーチャーに投影魔術のやり方を教えてもらった。
「では……。」
 士郎は意識を集中した。
「投影開始。」
 そして士郎の手の中に、ダンベルができあがった。
「おお! ホントだ、できた!!」
「嘘でしょ!? 教えてもらってすぐじゃない!」
「でも…。」
 しかし、投影されたダンベルは、すぐにボロボロと崩れていった。
「所詮は幻想。本物には及ばんのだ。」
「なんだよそれ…。こんな脆いなら使い道ないじゃねーかよ。」
「鍛えれば、私のアンリミテッド・ブレード・ワークスのように、自分の世界に武器を貯蔵しておける。それが、私とお前の世界であり、力だ。」
「まてよ…。」
「ん?」
「確か、アーチャー、おまえ、あの世界を出すとき呪文を唱えてただろ?」
「ああ…、そうだが?」
「なら、呪文さえ分かれば、俺にも展開できるってことだろ? 今なんか思い付いた。」
「…………………えっ?」
 そして士郎が詠唱を始めた。

『体は筋肉でできている』

「おい…?」

『血潮はタンパク質、心は不屈』

「おい!」

『幾たびの苦痛を超え強化』

「聞いているのか!」

『ただの一度の満足もなく』

「やめろ!」

『ただの一度の慢心もなし 』

「やめろと言っている!」

『担い手はここに1人極限の地へと至らんとする』

「やめろおおおおお!」

『ならば、我が生涯に一片の悔いは残さず』

「やめろと言っているんだああああ!」

『この体は無限の筋肉でできていた!』

「うわああああ!」

『アンリミテッド=ハードワークス(無限の筋トレ)』

 その瞬間、世界が変わった。
 赤土の色は同じだ。
 だが……、問題は地平線の彼方まで並ぶ……。
「筋トレ道具うううううう!?」
「ああ! 空に謎の筋肉の神のような存在が!!」
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「あらあら、とうとう至ったのですね。士郎。」
「これが…、先輩の世界…。」
「ああ! 桜、その姿は!」
「えっ? あれ? なにこれ?」
「なるほど…、おまけで桜が近くにいれば、桜が寄る辺として存在できるわけなのですね。その花嫁衣装がその証拠!」
「じゃ、じゃあ、私、先輩の…。」
 桜は、自分の姿を見て、赤面した。(強いて言うなら、パールヴァティーのちょっと露出が多い版みたいな格好)
「ええ。自他共に花嫁として受け入れられているのですよ、桜。」
「せんぱーーーい!」
「桜!」
「認めないわよおおおおおおおおお!!」
 桜と士郎が抱き合おうとしたとき、凛が間に入って止めた。
「うっ。」
 次の瞬間、世界が元に戻った。
「いきなり固有結界を展開したから、身体に負荷がかかったのですね。」
「ああ…よかった…。このままだったら、あの空にいた筋肉神に染め上げられてるところだったわ…。」
「桜、しっかり!」
 ぐったりし、元の姿に戻った桜をライダーが支えた。
「固有結界のくせに、桜に影響を及ぼすなんて…。士郎! 二度と、絶対に使うんじゃないわよ! 士郎、聞いてるの!?」
「ダメです。力を使い果たして返事ができないみたいです。」
「魔力の濃度はすごくても、量は少ないのね。」
「いいえ。おそらくですが、筋肉に魔力が行きすぎてて、他に回せなくなっているのでは?」
 筋肉魔法からは、微量ながら魔力が含まれている。おそらく魔術回路が筋肉魔法仕様にデタラメに構築されてしまって、他の魔術を使うのに適さなくなってしまったのではないか?
 それがライダーの見解だった。


 士郎は、『アンリミテッド・ハードワークス(無限の筋トレ)』を取得した。


「…お…俺の世界(無限の剣製)が、筋肉に汚染された……。」
 アーチャーは、ひとり、ガクッと両膝と両手をついて、号泣した。







 
 

 
後書き
当初は、筆者が考えた適当な詠唱を載せてましたが、後に素敵な詠唱を頂いたので差し替えたのです。
以下
※頂いた、オリジル詠唱

体は筋肉でできている
血潮はタンパク質 心は不屈
幾たびの苦痛を超え強化
ただの一度の満足もなく
ただの一度の慢心もなし
担い手はここに1人極限の地へと至らんとする
ならば、我が生涯に一片の悔いは残さず
この体は無限の筋肉でできていた!
「アンリミテッド=ハードワークス(無限の筋トレ)」



※自分が書いた原文

身体は、筋肉で出来ている
血潮は、生命の源
幾たびの戦場を越えて不敗
ただ一度の、敗走もなく
幾たびも勝利と敗北の末
担い手は、至るため
担い手は丘にて生命の極限に至るため
ならば、我が生涯は、一片の悔いなし
この身体は、筋肉で出来ている。
アンリミテッド・ハードワークス(無限の筋トレ)
 
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