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『魔術? そんなことより筋肉だ!』

作者:蜜柑ブタ
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SS8 ライダーのマスター

 
前書き
桜が、ライダーの本当のマスターであることを、告白。 

 

 凛が帰った後、士郎はセイバーから、ライダーが使った結界について聞いていた。
「おそらく、アレが、ライダーの宝具のひとつでしょう。」
「ほうぐって?」
「英霊とは、過去の英雄です。宝具とは、その武勇で使われた武器や、逸話です。」
「なるほど。例えば、セイバーは、剣とか?」
「はい。」
「けど、学校丸ごと飲み込むような宝具か……。あっ、そうか宝具が分かれば、サーヴァントの正体が分かって、攻略もしやすくなるってことか。」
「その通りです。自身の真名を知られること…、それは諸刃の剣です。」
「相手にとって脅威にもなるが、逆に対策を取られて負ける可能性もある。」
「そうです。」
「セイバーって何の英霊だ? 不可視の剣なんて聞いたことない…、イヤ違うな…隠してるんだな?」
「よく分かりましたね。その通りです。」
「剣を見ればそれだけで正体が分かるほどの有名どころか…。例えば、アーサー王とか?」
「そうです。」
「あっ。当てちまった…。」
「いいえ。いいのです。マスターは、サーヴァントを使う上でその性質と宝具を知っておく必要がありますので。」
「けど、アーサー王って男だったはずじゃ…。」
「史実ではそうでしょうが…、私の真名は、アルトリア・ペンドラゴン。生まれた時から女であり、男として性別を偽っていました。」
「は~。なるほどなぁ。遠坂の奴が必死になってたのも分かるわ。そんな有名どころの英霊なら喉から手が出るほど欲しいだろうな。」
 士郎は、納得したと頷いた。
「けど、今の問題は、ライダーだ。あんな宝具使えそうな英霊ってなんだ?」
「すみません…。心当たりはありません。」
「俺もない。」
 話は固着してしまった。
「もっと…他のヒントとなる宝具を使わせれば、分かるかもしれません。」
「ライダーを見つけないことには、意味ないだろ?」
「それは、そうですね…。」
 そしてまたシーンっとなる。
「俺が囮になるか?」
「ダメです! そんな危険なこと、できません!」
「だけど、このままじゃ埒があかないだろ?」

「あの……先輩。」

 そこへ桜が入って来た。
「どうした、桜? もう身体はだいじょうぶなのか?」
「はい…。あの、ライダーのことで、話が……。」
「桜?」
「桜…、あなた、初めから知っていたのですね?」
「!」
「ごめんなさい!」
 桜が深く頭を下げた。
「…桜。そこに座って、話を聞かせてくれ。」
「はい…。」
 桜が座り、話し始めた。

 ライダーは、触媒もなしに召喚したサーヴァントであり、本来は自分がマスターであったことを。

「つまり、あなたがライダーのマスター? 本来は? では、今は別の人間が?」
「はい…。」
「桜。だいじょうぶだ。俺は怒ってるわけじゃないんだ。怖がらせてごめんな。」
「先輩…。本当に…ごめんなさい!」
 桜の目からポロポロと涙がこぼれ落ちた。
「……では、今はいったいが誰が? それを教えてください。」
「………兄です。」
「慎二が?」
 士郎は、あり得ないと思った。
 なぜなら、慎二には、魔術の才能が無いからだ。それは、直感だ。
「いいえ。兄です。兄は、ある方法でマスターになりました。その方法を使えば、魔術の才能がなくても魔術を行使できるのです。」
「その方法って?」
「間桐には、魔術の書があります。その中に、偽臣の書という秘伝があって…、他者の契約下にある従僕を一時的に従わせることができるんです。しかも、それを使えばライダーの魔力を使って魔術を行使することも……。」
「なるほど……。つまり、慎二は、桜を生け贄にしてライダーを召喚させて、この聖杯戦争に参加したってわけか?」
「そうです…。」
「慎二…あいつ……、一回絞める。」
 ゴッ!っと、士郎が拳と拳をぶつけた。
「しかし、そうと分かれば慎二とやらを止めることができます。」
「そうだな。」
「あの…先輩。」
「だいじょうぶだ、桜。ちょっとお仕置きをするだけだから…。」
「は、はい…。」
 ニッコリとそれはそれは良い笑顔で親指を立てた士郎に、桜は、兄・慎二の末路を想像して青ざめた。
「セイバー、行くぞ。桜はここにいろよ。いいな?」
「…はい。」
「じゃあ、行くぞ。」
「はい、シロウ。」
 士郎とセイバーは、準備をして出発した。





***





 間桐邸に行く途中だった……。
「セイバー。」
「ええ。何かがいます。」
「誘ってるな…。」
「えっ? シロウ!」
「こっちだ!」
 そう言って士郎が駆け出す。セイバーは慌てて追いかけた。
 そしてやってきたのは、公園だ。
 周囲に木々が生えているが、そこだけ開けた場所となっていて芝生が生えている。
「ここは?」
「ここで……昔でかい火災があったが。ここはその時の跡地を改装して公園にした場所だ。そして…、俺が切嗣爺さんに助けて貰った場所でもある。」
「!」
「来るぞ!」
 すると、周囲から骨の兵隊が現れ襲いかかってきた。
「シロウ! さが…。」
「おおおお!!」
 シロウが拳を振るい、蹴りを繰り出し、脆いそれらの敵を粉砕していった。あまりの速さにセイバーはポッカーンとしてしまった。
 その時。
「セイバー!」
「あっ!」
 セイバーが腕を掴まれて引かれ、爆発が士郎を包んだ。
「シローーーウ!!」
「おやおや……、まさかサーヴァントを庇うなんて…。ずいぶんと変わったマスターですこと。」
「貴様は!」
 そこに現れたのは、紺色のローブをまとった女性だった。その手にしている杖と、その周りに控えている骨の兵隊達を見れば、彼女が普通ではないことは明らかだ。
「あー、びっくりした。」
「なっ!?」
「シロウ、さすが…無事ですね…。」
「おう! 鍛えたからな!」
 士郎は爆発を防ぐために膨張させた筋肉でポージングを取った。
「ひ、ひ…ひいいいいい!」
「ん? どうしたんだ?」
「様子が変です…。」
「筋肉ーーーー!?」
 魔術師クラス、キャスターが悲鳴を上げながら魔術を放ってきた。
 しかしそれを筋肉を膨張させていた士郎が難なく防ぐ。
「なあ…、どうした?」
「ひっ! こ、来ないで、来ないで来ないで!」
 キャスターが攻撃を乱発してくる。しかし流れ弾を含めて、全部喰らっても士郎は倒れない。むしろ無傷だ。
「遠坂のガンドよりは強いな。けど、俺の筋肉魔法を破るにはほど遠い! さあ、殺るならもっとこいやぁぁぁ!!」
「いぃいやああああああああああああ!!」
「あ…、消えた。」
「逃げましたね。」
 キャスターが消えると同時に、骨の兵隊達も消えた。
「何しに来たんだろ? アイツ…。」
「あれは、おそらくキャスターですね。」
「きゃすたー?」
「魔術師クラスのサーヴァントです。魔力を行使する能力に最も長けたサーヴァントです。」

「士郎! あんたもいたの?」

「遠坂。お前こそどうしたんだ?」
「やられたわね…。そっちも傀儡だったなんて。」
「どういうことだ?」
「ほら、あそこ。」
「あっ。」
 そこには、宝石のような石が落ちていた。
「これは、キャスターが作った分身よ。どうやら、キャスターのやつ、私とあんたに同時に攻撃を仕掛けたようね。」
「あ、そうだ俺…。」
「最近のガス事件とかって覚えてる?」
「ああ、最近頻発してるらしいな。」
「それって、明らかに魔術の痕跡がある。つまり……何者かがサーヴァントに魂食いをさせた証拠。」
「つまり、キャスターが?」
「おそらくわね。ライダーのあの魂食いの結界は肉体もろとも溶かすものだったけど、キャスターは違う。…今、アーチャーが、魔力の動きを見てくれたわ。魂食いしても、その流れた魔力をどうやった運ぶ? 簡単に言えば、この冬木市の土地の霊脈を使えばいいのよ。この冬木市には、霊脈が集まる霊格が高い土地がいくつかあるわ。」
「それを辿っていけば…。」
「ええ。キャスター本体にたどり着けるはずよ。アーチャーが今、向かっている場所がそこよ。行くわよ!」
「ちょっと待て。俺は協力するなんて言っていないぞ?」
「じゃあ、あんたは、関係の無い人達が死んでいくかも知れないのを見過ごしていくつもり? あんたって非道ね?」
「……分かった。その代わり、貸し一つだからな。」
「分かってるわよ。」
「セイバー、変更だ。行くぞ。」
「はい!」
 そして一行は、柳洞寺へ向かった

 
 

 
後書き
キャスターって、筋肉嫌いなんでしたっけ? 
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