ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第24話:Friend
ヘチマールが保護されてから数日後にシティ・アーベルに再びイレギュラーが出現したと聞いたエックスは現場に部下と共に急行した。
エックスはイレギュラーを発見するのと同時にZXセイバーで一瞬で斬り捨てる。
「他にはいないようだな(大分これにも慣れてきたな)」
ルインの形見であるセイバーを見つめるエックスに歩み寄る者がいた。
「お見事ですエックス隊長。」
腰にまで届く長い金髪を靡かせ、称賛しながらエックスに歩み寄るレプリロイド。
「ディザイア…」
「隊長、どうしましたか?」
「いや…」
彼はエックスに剣の扱いを教えてくれたレプリロイドなのだ。
イレギュラーハンターの人員がシグマの反乱によってかなり減った第17精鋭部隊に新しく配属されたサーベルの扱い長けたA級ハンターてある。
最初は独学でセイバーの訓練をしていたのだが、やはり1人では限界があるため、部下である彼に頼み、剣の教えを受けていた。
隊長であるエックスが部下であるディザイアに教えてもらうなど普通は有り得ないだろうが、エックスはルインの形見を1日でも早く使いこなしたかった。
今では最初は基本的な型すら出来てなかったエックスの剣術もZXセイバーの本来の所有者に匹敵するほどの腕前となっていたのだ。
「ありがとう…君のおかげでこの武器を使いこなすことが出来たよ」
「別に構いませんよ。隊長の命令は絶対ですから」
ディザイアは笑みを浮かべながら言うが、エックスは例え社交辞令でも感謝した。
「どうやらもう此処にはイレギュラーはいないようだ。みんなご苦労様。被害状況の確認が終わり次第撤収!!」
軽く周囲を見回したエックスの力強く凛とした声が響き渡る。
【了解!!】
部下達からの返事を受け、エックスは面会のためにケイン博士の研究所に向かうのだった。
「まさか、あの甘ちゃんハンターがあんな立派になるなんてな…」
「馬鹿、聞こえたらどうするんだ…エックス隊長だぞ隊長…。」
「しかし、隊長はあの戦い以来、目つきが鋭くなったよな…」
「ああ、まるであのゼロのように……」
同じ部隊に所属するエックスの同僚達が今のエックスに対して感慨深げに話す。
エックスはケインの研究所に到着すると、ゼロとルインの元に向かう。
そこには、カプセルに入れられた状態の大破したゼロとルインの姿があり、此処に来たのはあの日以来から一度も欠かしてはいない2人への任務の報告のためだ。
しかし今日は先客がいるようだ。
「あれ?エイリア、お見舞いかい?」
「エックス、ええ…そうよ。」
見舞いの品である造花を容器に入れるとエイリアは微笑む。
「この造花を置いていたのはエイリアだったんだ。ありがとうルインやゼロのために。俺は任務の終わりに来るからそう言うのは持って来れなくて」
「良いのよ。私が勝手にしてることだもの」
そう言うと、ルインが入ったカプセルを見つめるエイリア。
ルインよりもゼロの方が損傷が酷いために、比較的ゼロの方に手が回されている。
ルインもゼロも頭脳チップが奇跡的に無傷だったためにボディさえあれば復活出来るのだが、2人はブラックボックスの塊でケインですら解析出来ない部分が多く、2人の復活は今も難航している。
「そう言えば、エイリアとルインはどうやって知り合ったんだ?今まで聞けなかったけど」
「え?」
思わぬ質問にエイリアは目を見開く。
「いや、エイリアはレプリロイド工学員でルインは戦闘型の上に研究所に興味を示すような人じゃないから」
「そうねえ、研究に興味を示すルインなんて想像出来ないもの」
本人が聞いたら激怒しそうな内容の会話をしながらエイリアはエックスに自分とルインの邂逅話をすることにした。
「私がルインと会ったのは彼女がまだDr.ケインと暮らしてた頃よ。研究資料をDrに渡すために研究所を訪れた時に彼女と出会ったの。初めて会った時は驚いたわよ。あんなに喜怒哀楽が激しい人間みたいなレプリロイドなんて初めてだったし。」
「確かにね」
何となくルインの性格に圧されるエイリアの姿が容易に想像出来て笑ってしまう。
「それからDrが資料を確認し終えるまでの間に色々と話して…気付いたら妙に気が合ったのよ。危なっかしいところがあって放っておけなかったのもあるけど…あれ以来、私にとってルイン…大切な友人だったわ」
クスクスと笑いながら言うエイリアにエックスもそんな2人の姿が容易に想像出来たので微笑む。
そしてカプセルの中で眠るゼロとルインにエックスが語りかける。
「ゼロ、ルイン…今日もイレギュラーを破壊したよ……シグマが復活してから更にイレギュラーによる犯罪は増加する一方で減る気配が全くない…。でも俺は諦めない…君達が望む世界に連れていくために…また来るよ…今度はエイリアのようにお見舞いの品を持ってくるから…それじゃあ俺は失礼するよ。話してくれてありがとう」
「ええ、気をつけて戻るのよエックス」
エイリアと別れてハンターベースに戻るエックス。
次の出動までもう間もなくであった。
そしてとある場所でエックスを監視する者達がいた。
1人は老人、2人目は細身の青年、3人目は大男を思わせるレプリロイドだ。
「これがロックマンXの“力”だ…」
「そんなに気にする相手とも思えませんが」
「…………」
「お…俺の…鉄球でぇ……バラバ…ラ…なんだ…なあ」
老人がエックスの戦いの一部始終を見せた後に青年は無関心そうに言う。
言語中枢に異常か、元から電子頭脳の性能が低いのか大男は見た目に寄らず途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
「侮るなよ、この小僧、“奴”の忘れ形見故にな…」
「老婆心って奴ですか?」
「若造が!口を慎まんかぁっ!!」
青年のからかうような口調に老人は声を荒げる。
「興奮すると回路が切れますよ。大丈夫ですよ、私達はイレギュラーハンターの天敵、カウンターハンターなのですから」
「ふん…」
青年は優雅な足取りで部屋を後にし、老人は鼻を鳴らしながら大男を連れて部屋を後にしたのであった。
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