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戦国異伝供書

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第二十九話 安土入りその三

「だからじゃ」
「このことはですか」
「橋のことは問題ない」
 これが信長の考えだった。
「関所は置くはな、勿論関所には人を置いてな」
「出入りを確かめますな」
「おかしな者の行き来はそうして防ぐぞ」
「さすれば」
「そして船もじゃ」
「考えがおありですか」
「あまり大きな船は民も他の大名も造らせぬ様にする」
 船の話もだ、信長は平手に話した。
「織田家は水軍で持つがな」
「若し大きな船を持てばですな」
「そこに大軍を乗せて謀叛を起こしてな」
 そのうえでというのだ。
「海から大坂や江戸を攻めてきたりする」
「だからですな」
「そこはじゃ」
「大きな船を造らせぬ様にですな」
「する」
 確かにというのだ。
「そこもな」
「しかと定めますか」
「そうじゃ、水軍は大きくしていきたいが」
「それは織田家が持ちますな」
「そうする、そしてその水軍で海から敵が来ても守るが」
 本朝をというのだ。
「他の大名や民達にはな」
「持たせぬ為に」
「あまり大きな船にはさせぬ、帆は一本にして五百か千石位の大きさにさせる」
「そして織田家はですな」
「より大きな船を造って持つ」
「そうされますか」
「明や南蛮との交易で儲けた銭で造るぞ」
 そうした大きな船をというのだ。
「そうする」
「それでは」
「そのことは二郎にも話す」
 九鬼、彼にもというのだ。
「その様にする」
「あの者が水軍を使うからこそ」
「定めるぞ、水軍は久助や新五郎も使うしな」
 滝川や林もというのだ。
「だからな」
「余計にですな」
「しかとじゃ」
 船のこともというのだ。
「定める」
「そうされますか」
「鎌倉の幕府の御成敗式目があったが」
「あれをですか」
「よりよく吟味してじゃ」
 そのうえでというのだ。
「法度を定めたい」
「法を」
「禁中及び公家にもな、無論寺社や民にもじゃ」
「法を定めますか」
「法なくして国は定まらぬ」
 到底というのだ。
「これまで領内は織田家の領国法で治めていたが」
「公儀となったからには」
「しかとじゃ」
 法もというのだ。
「定めてな」
「治めるのですな」
「そうする、法がないとな」
「世の中は成り立ちませぬ」
「そうじゃ、法のない世なと有り得ぬ」
 到底と言う信長だった。
「だからじゃ」
「天下を統一してですな」
「その後でな」
「御成敗式目からですな」
「遥かに整った諸法度を作る」
 そうすると言うのだった。
「天下の為にな」
「それでは」
「皆で話していくぞ」
「さすれば」
 こうした話もした、そしてだった。 
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