戦国異伝供書
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第二十九話 安土入りその一
第二十九話 安土入り
遂に安土城が完成した、信長は城の普請奉行であった丹羽長秀からその報を聞いて確かな笑みで頷いた。
「うむ、遂にじゃな」
「築城が成りました」
「わかった、してじゃ」
信長は丹羽の報を聞きつつ彼にこう返した。
「城を見てからじゃが」
「それからですか」
「褒美を取らす」
このことを約束するのだった。
「だからな」
「このことはですか」
「楽しみにしておれ」
こうも言うのだった。
「よいな」
「それでは」
「ではこれよりな」
「安土にですな」
「入る」
そうするというのだ。
「そしてこれからこの岐阜の城はな」
「どうされますか」
「爺に任せる」
傍らに控える平手を見ての言葉だった。
「そうする」
「それがしにですか」
「そうじゃ」
平手にも確かな声で答えた。
「頼んだぞ」
「それでは」
「そしてじゃ」
信長は平手にさらに言った。
「お主はこれからも宿老の筆頭としてな」
「織田家にですな」
「仕えてもらうぞ」
「是非共」
平手は信長に確かな声を返した。
「そうさせて頂きます」
「ではな、そしてじゃ」
「そしてといいますと」
「うむ、お主の屋敷もじゃ」
「岐阜にですか」
「置いてもらうからな」
「そうしてですな」
平手から信長に述べた。
「何かあれば」
「安土に来る様にな」
「その様に致します」
「お主の小言もたまに聞かねばじゃ」
信長はこの言葉は笑って出した。
「退屈じゃ」
「殿、そこでまたそう言われますか」
「駄目か」
「全く、殿はご幼少の頃からですな」
「うつけ者か」
「傾いていますな」
平手は信長については今はこう言っているのだ。
「相変わらず」
「ははは、慶次の様に根っからの傾奇者ではないがな」
「それでもですか」
「わしもやはりな」
「傾奇者ですな」
「だからじゃ」
それ故にというのだ。
「お主にもじゃ」
「傾いてですか」
「そう言うのじゃ」
「それがいけませぬ、全く何時まで傾かれるのか」
「死ぬまでと言えばどうする」
「謹言させて頂きます」
そうするというのが平手の返事だった。
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