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許されない罪、救われる心

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97部分:第九話 全てを壊されその六


第九話 全てを壊されその六

「それで」
「どうもね。岩清水君って警察が手出しできないっぽいんだよ」
「どうしてなの?」
「何か抗議の前に警察に電話してから行くらしいんだ」
 そうしているというのだ。
「それも警察だけじゃなくて相手の会社や学校に同時に集中豪雨みたいな抗議の電話が来て動けなくなるらしいんだ」
「それって誰か支援団体でもあるの?」
「みたいだね。どうやらね」
 従兄が関係していることは二人は知らなかった。
「それでそういうことができるみたいなんだ」
「じゃあ岩清水君って」
「相当やばいかも知れないよ」
 ここで葉月の顔が顰められた。
「ひょっとしたらだけれど」
「そうなの。そういう人かも知れないのね」
「うん、それに」
 葉月は弥生にさらに話す。
「四人のことだけれどね」
「ええ」
「幾ら何でももう充分じゃないかな」
 こう話すのだった。
「どう思う?いや、僕達も絶交したけれどさ」
「そうね。もう友達じゃないわ」
 この言葉には頑ななものがあった。
「ただ」
「ただ?」
「あれってもう糾弾じゃないわよね」
 岩清水が皆を煽りそのうえでさせていることを指し示しての言葉だ。
「もう。それどころじゃないわよね」
「四人が椎葉さんにしてきたことは確かに酷過ぎるよ」
「ええ」
「けれどあれは」
 葉月はここでまた顔を顰めさせた。そのうえで言うのだった。
「それ以上だよね」
「そうよね。もうあれはね」
「いじめなんてものじゃない」
 彼は今言った。
「そう、あれはね」
「あれは?」
「虐待とか。それでも済まないかな」
「もっと酷いものなのね」
「家族まで巻き込むなんて有り得ないよ」
 彼が問題にしているのはこのことだった。
「本人達に対してやっていることもね」
「椎葉さんにしてきたことよりもね」
「ずっと酷いよ。死んでも許さないとか有り得ない」
 葉月の考えではそうであった。彼はそこまで執念深くも極端でもない。死体に鞭打つということは彼の考えの中には存在しないのだ。
「そう思わない?」
「けれど」
「そうだよね、誰かがそれを言おうとしたら」
「そうなのよ」
 弥生は俯いた顔で話す。
「岩清水君あの動画とか。如月達が過去に何をやっていたか言うから」
「それで怒りが湧き起こってね」
「どうしても」
 彼女も思考を止めてしまうのだった。しかしである。思考を止めるだけで済ませている彼女はまだましなのであった。他の者はだ。
「また怒りを爆発させる子も多いわよね」
「そう、あの動画がネットでも流れていてね」
「そうらしいわね」
「もう四人への怒りの声がネット中でも沸き起こっているんだ」
 無論それをわかっての岩清水の行動である。
「どうやら彼はそれで皆の怒りをその都度引き起こしているみたいなんだけれど」
「じゃあ如月達はこのまま」
「そう、死んでもね」
「確かに許せないけれど」
 それでもだった。弥生は葉月の言葉を聞くうちに考えを次第に変えていっていた。
「幾ら何でも」
「僕も四人は許せないよ」
 それは彼も同じだった。
 
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