麗しのヴァンパイア
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第百九話
第百九話 博士と文学
天本破天荒博士の学問はあらゆる分野に及んでいる、それは当然ながら文学に関してもそうである。
それで今研究室で源氏物語の原語を読みつつ小田切君に言った。
「久し振りに源氏物語の原文を読んでおるがのう」
「博士って文学にも通じてますしね」
「うむ、文学はよい」
源氏物語を読みながらの言葉だ。
「そこから学べることはまさに宝箱じゃ」
「宝箱みたいに得られるものが多いんですね」
「そうじゃ」
その通りだと言うのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「今も読んでおる」
「源氏物語を原文で読むとか」
小田切君は博士に自分の古典の知識から話した。
「普通出来ないですよ」
「うむ、源氏物語は原文で読むとな」
「かなり難しいんですよね」
「日本の古典の中でもな」
その文章は難解だというのだ。
「だから現代語訳が流行っておる」
「谷崎潤一郎とかですね」
小田切君はすぐにこの作家の名前を出した。
「田辺聖子や円地文子も書いてますね」
「与謝野晶子もな」
「そうでしたね」
「あと英語訳等もあるが」
有名な作品なので海外でも紹介されているのだ。
「原文より遥かに読みやすい」
「そうなんですね」
「一度読んでみるといい、わしだからすらすら読めるが」
実際博士はかなりの速さで読んでいる。
「普通の人には出来んな」
「博士は文学にも強いですからね」
「わからん言語はない」
博士の知能指数二十万の頭脳の前には言語の壁なぞ何の関係もないのだ。
「だからじゃ」
「それで、ですよね」
「普通に読めてじゃ」
そうしてというのだ。
「理解出来る、しかし並の人はな」
「原文で読むよりですか」
「試しに英語で読むとよい」
古典の原文でなく、というのだ。
「ずっと読みやすいぞ」
「それも凄い話ですね」
「それだけ源氏物語の文章は難解じゃ」
そうだとだ、博士は小田切君に話して。
源氏物語を読んでいった、そうしつつ小田切君に語るのだった。
第百九話 完
2018・11・25
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