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遊戯王BV~摩天楼の四方山話~

作者:久本誠一
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ターン3 蕾の中のHERO

 
前書き
前回のあらすじ:裏デュエルコロシアムが開かれる。偶然その情報を手にしたデュエルポリス糸巻は、その現場に面の割れている自分とは異なり顔の知られていない元子役の部下、鳥居を潜り込ませることでの対応を図る。彼がその参加者に名を連ねるため動く裏では、言い出しっぺの彼女もまた動き始めていた。 

 
 オフィスを飛び出た糸巻が一直線に向かったのは、とある小さなカードショップだった。その看板には堂々とした書体で「カードショップ 七宝(しっぽう)」と書かれている。デュエルモンスターズが危険視されて以降、当然ながらどこの町でもカードショップは年々縮小傾向にある。この店が続いているのにはまた別の理由があるのだが、自力で細々とした営業を続けている店を見るたびに、彼女はほんの数年前までどこの店でも毎日のようにたくさんの子供が小遣いを握りしめて目を輝かせカードを物色していた様を思い出してなんともやりきれない気分になる。
 そんな柄にもないノスタルジックを否定するかのように、まさに店内に入ろうとした彼女の向こう側から先ほど閉めた扉が開いた。

「おっと、悪いね」
「いえ、こっちこそすみません」

 年の頃は15、6といったところだろうか、と見当をつける。それとも、もう少し上かもしれない。大人びた黒い目が特徴的な1人の少年が頭を下げ、彼女と入れ替わるようにしてその場を去っていった。

「おや、またお客さんかい?いらっしゃい……ああなんだ、糸巻の」
「相変わらずご挨拶だね、七宝寺(しっぽうじ)の爺さん。客に向かってなんだはないだろうに」

 店の奥から顔をのぞかせたのは、まだわずかに黒いものが混じるとはいえほぼ白髪の小柄な老人。七宝寺と呼ばれた彼が糸巻の姿を認め、小さく笑みを浮かべた。

「ヤニ臭い格好で入ってくるようなのを客と認めた覚えはないよ。ここの敷地跨ぐならせめて1時間は禁煙しろって言ってるだろう?売り物に臭いがうつるし、それに勤務中のデュエルポリスにづかづか入ってこられたらこの近くでの心証も落ちる」
「よく言うよ、どうせ普段から閑古鳥ぐらいしか入ってこないくせに。ピーチクパーチクさえずってる中にこんな見目麗しいおねーさんが入ってきてやったんだ、むしろアタシには泣いて感謝してもらいたいね」
「ひっひっひ、よく言うよ。それに客なら糸巻の、アンタもたった今すれ違ったろ?」

 しわだらけの顔に浮かべたにやにやとした笑みを濃くしながら、先ほど閉めた扉の方を痩せた手で指し示す老人。先ほどぶつかりかけた子供の顔を思い出しつつも、

「ああ、あの子供(ガキ)か。おおかた友達との罰ゲームかなんかじゃないのかい?不気味な爺さんがいる店に1人で入ってこい、ってな」
「ひひっ、まあそういう輩がいることは否定しないがね。きっかけなんてなんだっていいのさ、なあ?私も、アンタも。理由はどうあれ、カードに……デュエルモンスターズに魅入られたからこそ、そこにいまだにしがみついている。私はもう、現役はこりごりだけどね」

 この言葉が示すように、この男もまたかつてはプロデュエリストの1人であった。糸巻よりもはるかに前からプロとして生計を立てていた彼には現役時代から彼女自身も何かと世話になってきたのだが、ちょうど「BV」の発表が行われるほんの少し前に寄る年波を理由に引退を発表。その後は直後に起きた事件のごたごたもありすっかり行方不明となっていた彼にこの町の片隅、懐かしい名前に惹かれふらりと入り込んだ先で出会った時には、さすがの糸巻と言えど目を丸くしたものだ。

「もったいないな、爺さん。アンタならまだまだ現役でもやってけるだろうし、こっちはいつだって人手不足だってのに」
「ひひっ、よしておくれ。今の流行にはついていけない、年寄りの体を危険にさらすんじゃないよ」

 この会話も、もう何度繰り返したことだろう。糸巻が勧誘し、七宝寺がそれを蹴る。まるで変わらない返答に仕方がないと肩をすくめ、ここに来た本題へ気持ちを切り替えた。

「……まあいいさ。爺さん、副業の依頼だ」
「だろうな。新パックも出ないこの時期にアンタがわざわざ顔を出すんだ、どうせまたくだらない話でも掴んできたんだろう?」
「その通りだよ。まず……」
「ああ、少し待っておくれ。その話はまた、もう少し後にしたほうがいいだろうさ。もういいだろう、そろそろ出ておいで!」
「へっ?おじいちゃんいつから気づいて、う、うわぁーっ!?」

 何の前触れもなく大音量で一喝すると、驚きの声と共に七宝寺の背後にあった陳列棚に隠れて聞き耳を立てていたらしい1人の少女がバランスを崩しその場で派手に転んだ。すぐ我に返って2人の大人に見降ろされていることに気づいた少女が、床に倒れたままばつの悪そうな笑みを浮かべる。
 だがこの時、驚いていたのは糸巻も同じだった。彼女にはプロデュエリストとして、肉体的にもかなりの鍛錬を積んできたという自負がある。素人程度の尾行、具体的にはスキャンダル狙いのパパラッチ程度なら彼女1人でも気づいたうえで撒くことも可能だ。しかしその研ぎ澄まされていたはずの彼女の感覚は、目の前のまだせいぜい中学生程度であろう少女の存在を今の今までまるで認識できていなかったのだ。
 だがその驚きは顔に出さないよう努め、目の前の老人に視線を戻す。

「おじいちゃん?爺さんが?」
「ひひひっ、似合わないと思うかい?でも私の孫じゃないよ、第一私は天涯孤独な独居老人さね。この子は姪の……さ、ご挨拶しな。大丈夫。この人はね、私の古い知り合いさね」
「は、はいっ!」

 七宝寺が姪と呼んだその少女が慌てて立ち上がり、びしっと背筋をまっすぐに伸ばし糸巻の目を見上げる。仕事柄というのもあるだろうが、今時珍しいほどに純粋な瞳に見据えられてややたじろいだ彼女にはきはきとした大声で告げる。

「先ほどは失礼いたしました!初めまして、最近おじいちゃんの家に越してきました、八卦九々乃(はっけくくの)と申します!」
「あ、ああ。アタシは糸巻……」
「一昔前は『赤髪の夜叉』なんて恥ずかしい名前で呼ばれてた私の後輩だよ」
「爺さん……別にその名前はアタシが名乗ったわけじゃないっての」

 にやにや笑いを隠そうともせず名乗りに横槍を入れてきた七宝寺に、うんざりしたような表情を向ける。彼女が現役だったかつてのプロデュエリストにはほぼ全員、何らかの二つ名がある。それはデュエリストという職業がまさしくエンターテイナーであったことの象徴であり、その中にあって1人1人の確かな個性を謳うプロとしての誇りの象徴でもあった。自発的に名乗る場合もあれば、そのファイトスタイルや使用デッキからいつの間にかファン内での相性が定着していく場合もある。彼女の場合は後者の典型的なパターンで、男相手でも容赦なく食らいつき叩きのめすデュエルスタイルからいつの間にか名付けられていたものだ。
 彼女にも、そのかつて呼ばれた名前に対する誇りはある。だがプロであることをやめデュエルポリスに再就職した際、それはもはや捨てたものだとも思っていた。自分がプロであった証であるそれを誰よりも大切に思うからこそ、この仕事に身を落とし国家権力の犬となった時に捨てた名前だと。

「糸巻さん、ですね?初めまして!」

 キョロキョロと2人の顔を見比べ、糸巻の苦い顔をどう受け取ったのか名乗った名字の方で呼ぶ八卦。自分の娘と言っても通用するような年頃の娘に気を使われたことを悟り、余計に表情が渋くなる。こんな時に煙草が吸えればいいのだが、さすがの彼女も大先輩の目の前、それも仮にも禁煙な店の中で堂々とそれを取り出すほどの図々しさはない。

「辛い時代だねえ、糸巻の。これぐらいの年の子だと、もはや私たちのことなんて知りもしない。これも時代の流れとはいえ、なんともやりきれないものさね」
「……ああ、そうだな」

 にやにや笑いを引っ込めた諦め混じりの表情で呟かれた言葉に、糸巻も神妙な調子で合わせる。その言葉通り、八卦は糸巻の過去を知らない。だがそれは、彼女が無名だったからではない。「BV」事件の後、テロ活動が小康状態になったほんのわずかな平和期間で世界的な広まりをみせたデュエルモンスターズへのバッシング行為。何冊もの雑誌が廃刊に追い込まれ、媒体はすべて廃棄され、無数のカードショップが焼き討ちにあった、デュエリストの地獄ともいえる暗黒期。八卦ほどの年ならば、あの時失われた当時の記録に関する記憶はもはや忘却の彼方だろう。

「本当に、つまんない話だ」

 そしてその時ほとんどの国は、何もしなかった。幾度もの被害届や陳述書にも関わらずが何かしら声明を出すでもなく、首謀者の検挙に形だけでも乗り出すこともなく、ただひたすらに静観を貫いていた。
 要するにそれは、世界としても「BV」を機に変わってしまったデュエルモンスターズとの新たな関わり方を模索している時期だったのだろう。有識者に言わせれば、そういうことになっている。あわよくばデュエルモンスターズそのものが歴史の闇に葬られ、テロも自然消滅する……そんな甘い期待があったのかもしれない。しかしそれは叶わず、デュエルモンスターズは滅びなかった。そして挙句の果てが、唯一「BV」に対抗する手段としてのデュエルポリス結成、あの地獄の時期の迫害を黙認してきた元プロへの勧誘という名の手のひら返し。
 糸巻自身は、デュエルポリスを激しく嫌悪する元プロの気持ちが痛いほどによく分かる。今更どの面下げてきた、彼女自身もそう吠えた記憶がある。それでも彼女は最終的にこの道を選んだし、それはたとえ記憶を消して100回人生をやり直そうとも変わらない選択だろうと思う。

「あ、あの、私何か失礼なこと言ってしまいましたか……?」
「いいや、八卦ちゃん。アンタは悪くないよ。それはそうと、八卦ちゃんはデュエルやるのかい?」

 ここまで口に出した時点で、自分の声がひどく空虚なものに聞こえた。露骨な話題逸らしだ、と心の中で自嘲する。それは、自分自身が過去の記憶から目を逸らしたがっていることの表れでもある。そしてそんな思いは露知らず、穢れを知らない純粋な目であっさりこの話題に食いついた少女を前にまた胸が痛む。

「私ですか?はい!ルールもおじいちゃんに教えてもらって、今は修行中なんです!」
「へえ、爺さん随分面倒見がいいじゃないか」
「つくづく似合わないだろう?だが、この子はなかなか特別でね。まだまだ荒いが、この子には天性のセンスがある。なかなか面白い逸材になりそうだよ」
「お、おじいちゃん……」

 もじもじと居心地悪そうに照れる少女を、まじまじと見つめる。人間的にはどうにも胡散臭い印象がぬぐえないが、この七宝寺という男は現役時代から人を見る目に関しては一目置かれていた。暗黒の時代に廃刊となってしまったとある雑誌では、毎年プロ入りするデュエリストが出るたびにご意見番として今後の予想を語る専用コーナーまで作られ、その結果次第でスポンサーの付き方や裏賭博の倍率まで影響を及ぼしたほどだ。
 だが糸巻の目には、目の前の少女がそこまで褒めちぎるほどの天才には映らなかった。確かにハキハキとした明るい好印象の少女ではあるが、一目見ただけで伝わるような強者の気配は感じない。
 そんな半信半疑の表情を目ざとく見て、老人がふと思いついたとばかりの軽い調子で声を上げる。

「おお、そうだ。糸巻の、なんなら今からこの子の相手を頼めないかい?」
「え、アタシが?この子の?」
「論より証拠というじゃないか。それに、この私仕込みのデュエリストだ。腕のなまった元プロ風情に、そう簡単に勝たせやしないよ」
「そうは言うがなあ」

 普段の彼女なら即座にOKを出したであろう誘いだが、彼女にも一応ここに来た理由は別にある。今頃は例の兜宅に潜入しているであろう部下の顔を……正確にはその鳥居に後で仕事放り出して遊んでいたことが発覚した場合に甘んじて受けることになる嫌味と愚痴の嵐を思い浮かべて小さく身震いする。

「よろしいんですか!ありがとうございます、是非お手柔らかにお願いします!」
「いや、今はちょっとなあ……」
「私からも頼むよ、もっとこの子には場数を踏ませてあげたいからね。それに糸巻の、ここに来た理由は察しが付くよ。明後日の話がしたいなら、まずこの子の相手をしてやっておくれ。それが、私からの条件さね」
「う……全部お見通しってわけか、わーったよ。八卦ちゃん、デュエルディスク持っといで。おねーさんが胸を貸したげるよ」
「はい!」

 八卦が元気よく店の奥に駆け出し、デュエルディスクを装着して戻ってくるまでのわずかな間。その1瞬の隙に、彼女には聞こえないよう老人が小声で呟いた。

「兜建設か。ま、あとで出場者リストぐらいなら作ったげるよ」
「悪いな、爺さん」

 裏稼業でなければ知りえないはずの、違法行為の詰め合わせである裏デュエルコロシアムの情報。これこそがこの寂れたカードショップがいまだ営業を続け、七宝寺自身の生活を成り立たせている真の理由だった。現役を退いてなお健在な彼の地獄耳は、どこから手に入れてくるのか常に最新の情報を掴んでいる。その理由や情報源について、彼女はいつも詮索しない。準備もなしにうかつに首を突っ込めば、この極めて重要性の高い情報網が絶たれかねないからだ。知らない幸福の存在を、彼女は確かに知っている。

「はあ、はあ……お、お待たせしました!デュエルしましょう、デュエル!」
「この狭い家の中で全力で走ってきたのかい?少し落ち着きな、アタシは逃げやしないからさ」
「す、すみません……ですが、もう大丈夫です!」
「はいはい、若いっていいねえ。それじゃあ……」

「「デュエル!」」

 カードショップ奥のデュエルスペース。テニスコートの片面ほどもあるその広い空間は、現役時代の資産とこの一帯の安い地価のたまものか。先攻を譲ろうか、と提案しようとしたその時には、すでに自分が先攻であるという割り当てがなされていた。少し頭を掻き、仕方がないと息を吐く。

「それならアタシも、本気で相手してあげようかね。アタシのターン、まずはカードを2枚セット。そして牛頭鬼を召喚する」

 牛頭鬼 攻1700

 糸巻がまず繰り出したのは、筋肉隆々な牛の頭を持つ地獄の門番の片割れ。悪くない滑り出しだ、と心の中で密かに呟く。特に、このカードが初手に来たことは大きいと残る手札の1枚に改めて目を落とす。

「まずは牛頭鬼、こいつの効果を発動。1ターンに1度、デッキからアンデット族を1体墓地に送ることができる。アタシが選ぶのはこのカード、不知火の陰者(かげもの)だ」
「不知火の陰者を……?」
「ほう?糸巻の、随分と強気だね」
「爺さん、余計なアドバイスは抜きで頼むよ。魔法カード、命削りの宝札を発動。このターンの特殊召喚と相手に与えるダメージを犠牲に、一時的に手札を3枚となるようカードを引くことができる。アタシの手札は1枚だから、追加で2枚をドロー……またカードを2枚伏せてエンドフェイズ、命削りの宝札のデメリットで手札をすべて捨てる」

 何かを感じたのか、反射的にデュエルディスクを操作してたった今墓地に送られた1枚のカードを糸巻の墓地から確かめる八卦。その表情がこわばり、あっと小さく息をのんだ。

「妖刀-不知火……!」
「伏せは4枚、しかも墓地にはいきなり妖刀かい。ひひひっ、随分大人げないじゃないか」

 非難するというよりはからかうような七宝寺に、ただ獰猛な笑顔をもって応える。彼女に大人げがあったことは35年もの人生1度たりともなく、長い付き合いのある七宝寺はそれを承知したうえでこの姪に彼女をけしかけた。ならば、遠慮する道理は欠片もない。それが彼女の持論であり、哲学でもあった。

「わ、私のターン!」

 干支がひとまわり以上年上の女が平気な顔して初手から敷いてきた手加減などまるで感じられない布陣に緊張感をにじませながらも、恐る恐るカードを引く。

「魔法カード、E-エマージェンシーコールを発動!デッキからE-HERO(エレメンタルヒーロー)モンスター1体、エアーマンを手札に加えます!」
「ほう、HEROか」
「ひひっ、さて、どうかな?」

 初手に繰り出したのは、カテゴリ対応のサーチカード。サーチ先もよほど捻った構築にでもしないかぎりまずデッキの核となるであろうエアーマンと、おおむね無難な立ち上がりである。
 さすがにこれだけではまだ、評価もデッキの方向も見えてこない。沈黙のうちに見つめる糸巻の視線を感じながらも、たった今見せつけたカードをデュエルディスクに出した。

「エアーマンを召喚し、効果を発動!デッキからさらにもう1体、HEROをサーチすることができます。私が選ぶのはこのカード、シャドー・ミストです!」

 E・HERO エアーマン 攻1800

 巨大な扇風機のような翼を背負う風のヒーローが、糸巻の牛頭鬼と対峙する。サーチ先は同じくHEROデッキならば大概の型には投入されるであろう万能下級モンスター、シャドー・ミスト。

「ここは、押してまいります!迷ったときは前を向け、です!魔法カード、融合を発動!手札のE・HERO、シャドー・ミストと同じく手札の地属性モンスター、薔薇恋人(バラ・ラヴァー)を墓地に送り、2体で融合召喚を行います!」
「薔薇恋人……?」

 ぴくりと糸巻の眉が動く。薔薇恋人はそれなりに強力なカードでこそあるが、戦士族を軸とするHEROとはシナジーが薄く両者が共存するデッキは限られる。

「【植物HERO】……それとも【捕食HERO】か……?いや、捕食軸ならあれは入らないか?」

 記憶の中から該当パターンを引っ張り出す間にも、融合は進む。黒い巨体に太い両腕をもつ大地の戦士が、エアーマンの隣に降り立った。

「英雄の蕾、今ここに開花する。龍脈の大輪よ咲き誇れ!融合召喚、E・HERO ガイア!」

 E・HERO ガイア 攻2200

「……初手から随分飛ばしてくるじゃないの。それもおじいちゃんの教えかい?」
「はい!この瞬間、融合召喚に成功したガイアと、その素材として墓地に送られたシャドー・ミストの効果を発動します。ガイアの効果でエンドフェイズまで相手モンスター1体の攻撃力を半分にして、その数値を1ターンの間吸収。そしてシャドー・ミストの効果でデッキのHERO、2体目のエアーマンをサーチです!」

 ガイアがその両腕を地面に叩きつけると、その衝撃のあまり発生した地割れが牛頭鬼に向かって走る。地割れを通して繋がった2体のモンスターのうち片方からもう片方へと、エネルギーの流れが送られていく。

 牛頭鬼 攻1700→850
 E・HERO ガイア 攻2200→3050

「これで2体の攻撃が通れば……!バトルです、ガイアで牛頭鬼に……」
「なるほどねえ。ガイアの効果を使えば確実に2200ダメージ、そしてエアーマンの1800できっかり4000、か。これでまだ初心者だってんなら爺さん、確かにこの子はなかなかの逸材だ……だが、まだまだ温いね。トラップ発動、不知火流 (つばくろ)の太刀!」
「あのカードは!」

 これまたわかりやすいぐらいはっきりとしまった、という表情を浮かべる様子に、あとで覚えていたらポーカーフェイスの指南でもしておこうと心に決める。しかし今は目の前の盤面だとばかりに集中を戻すと、ちょうど力を吸い取られた牛頭鬼が最後の意地を振り絞り2体のヒーローに対し手にした巨大な木槌で殴り掛かるところだった。

「アンデット族をコストとしてリリースし、フィールドのカード2枚を破壊。その後アタシのデッキから不知火ンスター1体を除外する。当然アタシが選ぶのは八卦ちゃん、アンタのフィールドにいるモンスター2体だ。さすがに今のを通してやるほどお人よしじゃないよ、アタシは」
「で、でしたら!チェーンして速攻魔法、冷薔薇の抱香(フローズン・ロアーズ)を発動します!私のフィールドからガイアを墓地に送り、植物族以外のガイアを選んだことでデッキから植物族モンスター1体をサーチします。私の選ぶカードはこの子、捕食植物(プレデター・プランツ)オフリス・スコーピオです!」

 地面から茨の蔦が伸び、ガイアの巨体を縛り付けて地中へと引きずり込む。除去されるモンスターをその寸前にコストとして利用する、一般的にサクリファイス・エスケープとも称される戦術。

「やるね。でも、燕の太刀には後半の効果がある。デッキから不知火モンスター1体を選び、それをゲームから除外……アタシが選ぶのは不知火の武部。そして武部が除外された場合、プレイヤーはカードを1枚引いたのちに手札を1枚捨てることができる。もっともアタシの手札は0、このデッキトップを手札経由でそのまま墓地に送ることになるがね」

 言葉通りに1枚のカードを引き、それをすぐさま墓地へと送り込む。これで互いのフィールドからモンスターは消えたが、いまだ八卦の瞳の炎は消えてはいなかった。彼女に残る手札はオフリス・スコーピオ、そしてエアーマンを含めてもいまだ4枚。

「バトルフェイズを終了します。そして墓地に存在する、薔薇恋人の効果を発動!このカードを除外することで手札の植物族1体を特殊召喚し、さらにこの効果で呼び出したモンスターはこのターンのみトラップの効果を受け付けません。来てください、捕食植物オフリス・スコーピオ!そしてこのカードが場に出た時1度だけ、手札のモンスターを捨てることで私はデッキから別の捕食植物を特殊召喚できます。ロードポイズンを捨てて、ダーリング・コブラを選択!」

 サソリのような形をした半動物の植物が両手の鋏を打ち合わせると、それに呼応するかのように地面から毒々しい色の蔦のような特徴を持つ蛇が顔を出す。

 捕食植物オフリス・スコーピオ 守800
 捕食植物ダーリング・コブラ 守1500

「そしてコブラの効果、か。捻りはないが無駄もない、定石通りの一手だな」
「捕食植物の効果で特殊召喚に成功したコブラは、デッキから融合またはフュージョン魔法カードを1枚サーチできます。私が手札に加えるカードは、ミラクル・フュージョンです。このミラクル・フュージョンをそのまま発動!」
「それにしても、まだ融合する余力が残ってたとはね。若い子はタフだねえ」
「ひひっ、なにせ私が手塩にかけてデュエルを教え込んだ自慢の姪だからね」
「すっかり爺バカになっちゃって、まあ。昔のファンが見たら泣くぜ、爺さん」

 呑気なことを外野と喋っている間にも、八卦の融合戦術は進んでいく。ミラクル・フュージョンは場か墓地の素材を除外するという極めて緩い条件からE・HEROの融合を行うことのできる同デッキの切り札ともいうべきカードであり、当然その恐ろしさは彼女自身も身にしみてわかっている。

「私が選択するのはHEROのエアーマン、そして水属性モンスターのロードポイズン。英雄の蕾、今ここに開花する。氷結の大輪よ咲き誇れ!融合召喚、E・HERO アブソルートZero(ゼロ)!」

 E・HERO アブソルートZero 守2000

 雪の結晶を模した穢れなき純白の衣装に身を包む、ガイアとはうってかわってスマートな第二の融合ヒーロー。しかしその体に秘められた膂力は、ガイアのそれに勝るとも劣らない。なんらかの反撃を警戒してかその表示形式こそ守備表示ではあるものの、その状態であってなお相手を牽制し、威圧するだけの能力がある。

「さらにカードを1枚伏せます。私は、これでターンエンドです!」

 アブソルートZero。その姿を前に糸巻は、無性に煙草が吸いたくなった。ポケットに手を突っ込んだところで、観戦中の老人の非難がましい視線に気づきまた手を放す。仕方がないと観念し、デッキトップに手を置いた。

「確かに、こりゃアタシでもそれなりに覚悟しないとキツイかもな……ドロー!」

 だが、何も手がないわけではない。ちょっと抵抗された程度ですぐ諦めに入るようなメンタルでは、プロなど到底務まらない。すでに彼女の仕込みは進んでおり、あとはそれがどう実を結ぶかだけの話なのだ。にやりと笑い、伏せてあった3枚のカードのうち1つを表に向けた。

「リバースカード、一撃必殺!居合ドローを発動!手札1枚をコストとして相手フィールドに存在するカードの数までデッキトップからカードを墓地に送り、その後カードを1枚ドローする。さあ、何かあるなら今のうちに申告しときな?」
「デッキ操作もなしに?ギャンブルカード、ですか?」
「いいや、そうじゃない。油断しなさんな、九々乃。『赤髪の夜叉』はあれを起点に、何度も自分の不利を力技で跳ね返してきたんだ」
「えぇっ!?そ、それは失礼しました!私からは何もありません、はい!」
「……なあ爺さん。ちょっといい子過ぎないか、この子。本当に爺さんの血縁かこれ?」

 90度に腰を曲げてぺこぺこと頭を下げ、平謝りする姿にまたしても毒気を抜かれる。どうにもやりづらいと文句をつける彼女に対し、問われた本人は軽く肩をすくめたのみで、もはやこの態度にも慣れきったと言わんばかりの調子で答える。

「育ての親は私じゃないよ。それよりほら、何もないって言ってるんだから早く続けたげな」
「あ、ああ。八卦ちゃん、アンタのフィールドにカードは4枚。だから4枚のカードを墓地に送り……ドロー!ドローカードは屍界のバンシー。居合ドロー以外のカードを引いた場合、今墓地に送った数までアタシの墓地のカードをデッキに戻す。今回選ぶのは命削りの宝札、牛頭鬼、燕の太刀、異次元からの埋葬だ」
「た、助かったぁ~……」

 ドローカードを見て、その動きを食い入るように見つめていた八卦がほっと胸をなでおろす。だがそれも無理はない、もし今のドローで同名カードを引いていた場合はその効果によりフィールドのカードはすべて破壊され、墓地に送られた枚数1枚につき2000もの特大ダメージが発生していたからだ。無論彼女のライフは、到底それだけの莫大なダメージに耐えきれはしない。
 だが、それが決して「はずれ」ではないことを、すぐに彼女は身をもって知ることとなる。

「トラップ発動、バージェストマ・ディノミスクス!手札1枚を捨てて、フィールドに表側で存在するカード1枚を除外する。アタシが選ぶのは当然、アブソルートZero。さらにトラップが発動したことでチェーンして、アタシの墓地からバージェストマ・ハルキゲニアの効果を発動。このカードをモンスターとして特殊召喚する」
「ええっ!?わ、私のヒーローが!」

 屍界のバンシーが墓地に送られ、うねうねとした半透明の触手を持つ生物が氷のヒーローに絡みつく。その姿が消えた時、緑色の芋虫状の体から何対もの足らしきものや注水機関を生やす、口はあれど目の存在しない得体のしれない生物が入れ替わるように現れる。

 バージェストマ・ハルキゲニア 攻1200

「ですがこの瞬間、フィールドを離れたアブソルートZeroの効果を発動です。相手フィールドのモンスターをすべて破壊……あれ?」

 氷結の嵐が吹き荒れるが、氷のつぶてを一身に受けながらもハルキゲニアの体はびくともしない。訝しむ少女を前に、大人げない大人が会心の笑みを浮かべた。

「残念だったな、バージェストマは確かに通常モンスターだが、モンスター効果を受けない能力を併せ持つ。まだまだ行くぜ、屍界のバンシーの効果だ。このカードを除外することで、デッキからあるフィールド魔法1枚を直接発動する」
「あるフィールド魔法……?」
「おうおう、随分久しぶりに見るねえ。現役時代を思い出すよ」

 困惑顔の八卦に、どこか嬉しそうな七宝寺。真逆の反応を感じながら、勢い良く1枚のカードをデッキから取り出す。

「生あるものなど絶え果てて、死体が死体を喰らう土地。アタシの領土に案内しよう……アンデットワールド、発動!」

 捕食植物オフリス・スコーピオ 植物族→アンデット族
 捕食植物ダーリング・コブラ 植物族→アンデット族
 バージェストマ・ハルキゲニア 水族→アンデット族

 晴れない黒雲、深き血の沼、穢れた空気、病んだ大地。その中央で1人不敵に笑う赤髪の女に、初めて八卦は背筋にぞくりとするものを感じた。それは強者を目の前にした防衛本能のなせる業だったのか、はたまたその光景から感じ取った破滅的な美によるものなのか。いくら才能があるとはいえいまだ幼い彼女には、その感情を言葉に表すすべは持ち得なかった。言葉を失ったまま目の前の光景を呆然と見つめるその耳に、遠く糸巻の声が響く。

「アンデットワールドがある限り、互いのフィールドと墓地のモンスターはすべてアンデット族に書き換えられる。さらにトラップ発動、バージェストマ・オレノイデス。このカードの効果でゲームから除外されたカード1枚、屍界のバンシーを墓地に戻す。だけどそれで終わりじゃない、トラップの発動にチェーンして墓地のディノミスクスを特殊召喚」

 バージェストマ・ディノミスクス 攻1200 水族→アンデット族

「召喚条件は、アンデット族モンスター2体。右下と左下のリンクマーカーに、このバージェストマ2体をセット」

 8つの印が浮かぶ円がフィールドに現れ、その右下と左下に2体のバージェストマが潜り込む。そしてモンスターの入り込んだ印に、オレンジ色の光が灯った。

戦場(いくさば)に笑う(あやかし)の魔性よ、死体の手を取り月光に踊れ!リンク召喚、ヴァンパイア・サッカー!」

 大量のコウモリが黒い渦と見まごうほどにどこからともなく結集し、その渦の中央から1人の少女が退屈そうに欠伸しながら地面に降りる。その開いた口から覗く歯は死体のように白く、ぞっとするほどに鋭い。だが何よりも彼女が人外であることを印象付けているのは、その背から生えた1対の翼の存在だった。

 ヴァンパイア・サッカー 攻1600

「モンスターとしてフィールドを離れたことで、バージェストマ2体はゲームから除外される。でもな、これでアタシのフィールドには2本のマーカーが向いたわけだ。墓地に存在する馬頭鬼の効果を発動!このカードを除外することで、アタシ自身の墓地からアンデット1体を蘇生することができる。甦りな、不知火の陰者。と、ここでヴァンパイア・サッカーの効果を発動。互いの墓地からアンデット族が蘇生された際、1ターンに1度だけカードを1枚ドローすることができる」

 不知火の陰者 攻500

 引いたカードを一瞥し、さらに次の展開にかかる。元々このドローはおまけ程度、既に十分すぎるほどにこのターン攻め込むための材料は揃っているからだ。

「さらに陰者の効果でアンデット族、陰者自身をリリースしてデッキから守備力0のアンデットチューナー、ユニゾンビを特殊召喚する」

 居合ドローで墓地に送り込んでいた馬頭鬼を足掛かりに不知火の陰者を蘇生し、さらにユニゾンビのリクルート。一度この流れに入った彼女は、もはや誰にも止めることはできない。

 ユニゾンビ 攻1300

「ユニゾンビの効果発動。1ターンに1度場のモンスターを選択し、デッキからアンデット1体を墓地に送ることでそのレベルを1上げる。ユニゾンビ自身を対象として、2枚目の馬頭鬼を墓地に。この効果を使うターン、アタシはアンデット以外では攻撃できないけれど……アンデットワールドにいる限り、その制約は踏み倒したも同然」

 ユニゾンビ ☆3→4

「たった今落とした馬頭鬼の効果を発動。また除外して、もう1度だけ不知火の陰者を蘇生する。レベル4の陰者に、同じくレベル4となったユニゾンビをチューニング!」

 そして始まる、シンクロ召喚。その合計レベルは、8。

「戦場潜る妖の電子よ、超越の脳波解き放て!シンクロ召喚、PSY(サイ)フレームロード・Ω(オメガ)!」

 細かく並んだ0と1のノイズとともに、全身を強化服と脳波増幅パーツですっぽりと包んだサイキック戦士が空間を歪めてワープ着地する。かすかに全身に走るプラズマの名残が、その念動力の強大さを示唆していた。

 ☆4+☆4=☆8
 PSYフレームロード・Ω 攻2800 サイキック族→アンデット族

「あんな状況から、こんなにモンスターを……」
「いいや九々乃、まだ気を抜くんじゃないよ。あれはやっぱり、腐ってもプロさね」
「その通りさ爺さん、それに八卦ちゃん。アタシのフィールドにはまだもう1本、ヴァンパイア・サッカーのマーカーが向いているからね。妖刀-不知火の効果を発動!墓地からこのカードと他のアンデット族モンスターを除外することで、アンデット族のシンクロモンスターを疑似的に呼び出すことができる。そしてアタシが選ぶのは、不知火の陰者!」

 ここで、糸巻は少し思案する。彼女のエクストラデッキには、特殊召喚時に相手の墓地からアンデット族を蘇生できるデスカイザー・ドラゴンが存在し、その効果を合わせればもう少しこのソリティアを続けることもできる。
 だが現在、八卦の墓地に存在する蘇生可能なモンスターはシャドー・ミストのみ。墓地に送られた際に後続をサーチする効果を持つ以上、そこまでやるのはリスクが高いか。音もなく地面に突き刺さった妖刀に、決して消えないこの世ならざる炎が宿る。その炎は妖刀を軸に不可思議な形に膨れ上がり、やがて1人の剣士の姿を模した。そしてその炎の体が不可思議の力によって一時的に肉体へと変化したとき、刀を構える1人の剣豪の姿がそこにあった。

「戦場切り込む妖の太刀よ、一刀の下に悪鬼を下せ!逢魔シンクロ、刀神(かたながみ)-不知火!」

 ☆4+☆2=☆6
 刀神-不知火 攻2500

「まだまだ終われないね。せっかくだ、ここまで来たらもうアタシが満足するまで付き合ってもらうよ。不知火の陰者が除外された時、陰者以外の名を持つ不知火1体を除外から帰還させることができる。もう1度蘇ってきな、妖刀。そしてレベル6の刀神に、レベル2の妖刀をチューニング」

 妖刀-不知火 攻800

 再び地面に突き刺さった妖刀の柄に刀神が手をかけ引き抜くと、再びその刀身が燃え上がる。それに呼応するかのように刀神の全身が元の炎に戻り、2つの炎が共鳴してさらに激しく燃え上がる。その炎を切り裂くように、1匹のドラゴンが不死鳥のごとくアンデットワールドの空に舞い上がった。

「戦場吹きすさぶ妖の烈風よ、水晶の翼で天を裂け!シンクロ召喚、クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン!」

 邪悪に病んだ土地にはあまりにも不釣り合いな、澄んだ水晶の翼。足のない純白の龍が両腕を広げてよどんだ空気を切り裂き、邪悪な少女の騎士であるかのようにその斜め後ろについた。

 ☆6+☆2=☆8
 クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン 攻3000 ドラゴン族→アンデット族

「さあお待ちかね、バトルの時間だ。覚悟しな、まずは雑魚散らしからだ。ヴァンパイア・サッカーでオフリス・スコーピオに、PSYフレームロード・Ωでダーリング・コブラにそれぞれ攻撃!」
「うう……!」

 守備表示の捕食植物2体に、コウモリと電撃が襲い掛かる。2つの死体はアンデットワールドの大地にのみ込まれ、無数に存在する死霊の一部となって闇にまぎれた。

 ヴァンパイア・サッカー 攻1600→捕食植物オフリス・スコーピオ 守800(破壊)
 PSYフレームロード・Ω 攻2800→捕食植物ダーリング・コブラ 守1500(破壊)

「道は開いた。やれ、クリスタルウィング!烈風のクリスタロス・エッジ!」
「まだ退きません!トラップ発動、ガード・ブロック!相手モンスターの攻撃に対し、私の受けるダメージを1度だけ0に。そして私はその後、カードを1枚ドローします!」
「なるほど、つくづくやるじゃないか。まさか、ノーダメージで凌ぎ切るとはね。八卦ちゃん、元とはいえプロのアタシが保証したげるよ。アンタの腕は本物だ」
「本当ですか!?ありがとうございます!」

 守るものなど何もいないかに見えた八卦のフィールドだったが、直前に現れた半透明のバリアが龍の突撃を辛うじて逸らす。プレッシャーのあまりか息を切らせながらも、わかりやすく満開の笑みを浮かべるその顔につられて糸巻もつい微笑む。だが、ときっちり釘を刺すことは忘れなかった。

「本物ではあるけれど、格の違いを教えてあげるよ。ターンエンド」
「私のターン、ドロー!」

 このドローフェイズを迎えてカードを引いたことで、彼女の手札は先ほどサーチしたエアーマン含め3枚となる。だがその瞬間を見計らい、糸巻がダメ押しの一手を繰り出した。

「このスタンバイフェイズ、PSYフレームロード・Ωの効果を発動。互いの除外されたカード1枚を選んで、そのカードを墓地に戻すことができる。このターンアタシが選ぶのは、馬頭鬼だ」

 馬頭鬼を選択することで、さらに次のターンを戦う準備を整える。だが、Ωの効果は二段構え。追撃の準備を整えるのみならず、相手の反撃の芽すらも摘み取っていく。

「そしてメインフェイズ開始時、もう1度PSYフレームロード・Ωの効果を発動。相手の手札をランダムに選択し、そのカードとこのモンスターを次のアタシのスタンバイフェイズまで表側表示で除外する」
「私のエアーマン……」

 この少女に限りそんな卑怯な技は使わないだろうとは思ったが、一応習性として体に染みついた動きで相手の除外ゾーンを確認する。エアーマン、ロードポイズン、アブソルートZero……そして、2体目のエアーマン。

「魔法カード、一時休戦を発動!このカードの発動時に私たちはカードを1枚ドローし、次の糸巻さんのターンが終わるまでお互いにダメージは与えられません!」
「チッ……外したか?」

 1枚のハンデスも空しく希望を残す形となり、やや不満げに唸る。一方で1ターンの安全を確保したことであからさまにほっとした様子をにじませながらカードを引いた八卦だったが、何かそのカードを使用するわけでもなくターンを終えた。

「モンスターは出しません。これでターンエンドです!」
「いいだろう、ドロー。このスタンバイフェイズ、アタシのΩとアンタのエアーマンはそれぞれの居場所に戻る」

 再び0と1のノイズが空間に走り、サイキックの戦士が帰還する。この時に最初に特殊召喚した場所とは別のモンスターゾーンを選択することで、マーカー先を1つ空いた状態にするのは忘れない。大量展開における常套テクニックである。

「……とは言ったものの、どうせ何もできないんじゃねえ。ヴァンパイア・サッカーの効果を使い、八卦ちゃんの墓地からオフリス・スコーピオを守備表示で強制的に蘇生させる。そしてアンデット族モンスターが墓地から特殊召喚されたことで、このターンも1枚ドロー」

 ヴァンパイアの少女が地面に向けて手を差し伸べると、半ば腐って枯れかけたオフリス・スコーピオの死骸が小さな穴をあけて生えてくる。ピクリとも動かないその姿を前に、ご満悦そうにくすくすと小さく笑った。

 捕食植物オフリス・スコーピオ 守800 植物族→アンデット族

「これでアタシの手札は4枚。バトルフェイズ、ヴァンパイア・サッカーでオフリス・スコーピオを攻撃」

 ヴァンパイア・サッカー 攻1600→捕食植物オフリス・スコーピオ 守800(破壊)

「これで……」

 とりあえずモンスターを一掃してメインフェイズに移行しようとした、ほんの1瞬。その隙を、少女は決して見逃さなかった。

「この瞬間、私のフィールドにカードは存在しません。よって手札からトラップ発動、拮抗勝負!」
「何いっ!?」 
「取ったか、九々乃っ!」

 この試合で初めて糸巻の、そして七宝寺の余裕が崩れた。これまでどうにか保ってきた、余裕ぶった大人の態度をかなぐり捨て、罠にかかった獣めいた唸り声を喉の奥から漏らす赤髪の夜叉とは対照的に、老人はその姪が放った大逆転の一手に対し歓喜に目を光らせる。
 この局面で一時休戦を、そして拮抗勝負を引き当てる。それはどれほど訓練を重ねようともそれだけでは決して到達できない高み、それこそがまさに天性の才能。老兵が少女に見出した輝きの原石は、疑いようもなく真実だったと確信したからこその反応であった。

「バトルフェイズ終了時にのみ発動できるこのカードの効果で、相手プレイヤーは私のフィールドのカード数と同じになるように自身のフィールドからカードを裏側表示で除外しなければいけません。さあ糸巻さん、この拮抗勝負1枚分を除く全てのカード、除外していただきます!」
「アタシの選ぶカードは……Ωだ。PSYフレームロード・Ωを選び、後は全部除外してやるよ」
「クリスタルウィングじゃない、のですか?」

 死霊の王国が崩れ、再び元の店内に光景が戻る。その戦闘能力とモンスター効果から単体で高い制圧力を誇るクリスタルウィングに対し、糸巻の選んだΩはトリッキーな効果こそ持ち合わせているものの純粋なカードパワーでは下回る。そう思ったからこその純粋な疑問に答えたのは当の本人ではなく、いまだ興奮冷めやらぬといった面持ちの老人だった。

「いいや、それは違う。あのモンスターの効果なら、維持さえ続ければ裏側での除外さえ一時凌ぎにしかならないからね。しかもまだ、あちらさんには戦線を維持できるだけのリソースが残っている」
「そういうことだよ、八卦ちゃん。メイン2、墓地から馬頭鬼の効果を発動。自身を除外し、ユニゾンビを蘇生」

 ユニゾンビ 守0

「ユニゾンビの効果で、アタシの場のΩを選択。デッキから死霊王 ドーハスーラを墓地に。アタシの領土は滅びない、墓地から屍界のバンシーの効果!」
「また……アンデットワールドが!」

 消え去ったかに見えたのもつかの間、アンデットワールドが即座に再興する。再び場を支配する瘴気溢れる空間で、小さな英雄がたじろいだ。

 PSYフレームロード・Ω サイキック族→アンデット族 ☆8→9

「妖刀はまだ早い、か。カードを1枚伏せて、ターンエンド」
「私のターン、ドローします」
「スタンバイフェイズにΩの効果で、また馬頭鬼を墓地に。さらにチェーンしてドーハスーラの効果発動!毎ターンのスタンバイフェイズにフィールド魔法が存在する限り、墓地のこのカードは守備表示で特殊召喚できる。さあ、ドーハスーラはここのお偉いさんだ。こいつの効果はえげつないぜ?」
「させません!チェーンして速攻魔法、サイクロンを発動!アンデットワールドさえ破壊すれば、ドーハスーラは蘇生できません!」
「これも止められたか……!」

 一度は蘇ったかに見えた死霊の王国がまたしても崩れ去り、彼女のエースの1体でもあるドーハスーラの効果が不発に終わり……このわずかな時間に、糸巻の脳はフル回転した。今のサイクロンは、ドローした直後に放たれた1枚。この限定されたタイミングで、またしても未来をつなぐ1枚を引き当ててみせたのか。
 だが、それはあくまでその場しのぎを積み重ねるだけの後手対応に過ぎない。残る手札は2枚、そのうち1枚はエアーマンであることがわかっている。墓地発動のカードも存在しない以上、不確定要素は残りの手札1枚のみ。

「メインフェイズ開始時、このターンもΩの効果発動!左側のカードとΩ自身を次のスタンバイフェイズまで表側表示で除外する、テレポーション・パルス!」

 2択の賭けだった。不確定の1枚さえ押さえてしまえば、八卦がこのターンできることはエアーマンを召喚しHEROをサーチすることぐらいとなる。だがサーチしたところでその手に融合のカードはなく、すでにエアーマンに召喚権を使用した以上このターンは手札に遊ばせておくだけとなるだろう。数少ない例外は特殊召喚可能なバブルマン、そしてHEROの攻撃力を一時的にブーストするオネスティ・ネオスだが、仮に前者からランク4、あるいはリンク2に繋げたところでこのターンでユニゾンビを排除し彼女のライフを4000削るような動きは不可能だし、後者だとしてもその1度のブーストでこの戦いの大局が動くことはない。そこまで判断したうえで、Ωを離脱させたのだ。すぐさま除外されたカード一覧を確認し……小さく舌打ちする。

「クソッ、またエアーマンかよ?」
「そして私の手札には、このカードが残りました。私の手札が1枚のみの時E・HERO バブルマンは特殊召喚でき、さらにこのカードが場に出た際に私の手札とフィールドにカードが存在しない場合、2枚のドローを可能とします!」
「嘘だろ……!?」

 E・HERO バブルマン 守1200

 極めて厳しい条件をクリアした時のみ使用可能となる、バブルマンのドロー効果。結果論とはいえ自らの発動したΩの効果がその条件を手助けする形となってしまい、一応相手の年齢に配慮して本人には聞こえないよう小さく毒づく。そんなわずかな唇の動きから言葉の内容を目ざとく読み取り眉を顰める老人の視線には気づかないまま、少女の動きに従って茨の蔦が地面から飛び出しバブルマンの全身をがんじがらめに縛り付ける。

「速攻魔法、冷薔薇の抱香の2枚目を発動!戦士族のバブルマンを墓地に送ることでデッキの植物族、ローンファイア・ブロッサムをサーチしてそのまま召喚。そして、そのモンスター効果を発動します!」

 ローンファイア・ブロッサム 攻500

 導火線に火が付いた爆弾をその花の、そして実の代わりに咲かす恐るべき植物。そして、導火線を伝う火がその本体へと届く。

「自分フィールドの植物族モンスター1体をリリースし、デッキから植物族モンスター1体をリクルートします。糸巻さん、ここまでのデュエルはまだまだ前哨戦です!これが私の、八卦九々乃の信じる最強のヒーロー。E・HERO クノスぺ召喚!」

 いまだ固く閉じられた蕾にそのまま手足が生えた、まるでなんでも擬人化するメルヘンなおとぎ話からそのまま飛び出してきたような異色のヒーロー。しかし八卦はその小さなモンスターを、絶対の自信と共に場に呼んだ。

 E・HERO クノスぺ 攻600

「クノスぺ……?」
「はい!これが私のエースモンスター、クノスぺです!そして攻撃力1500以下のモンスターの特殊召喚に成功したことで速攻魔法、地獄の暴走召喚を発動!デッキからさらに2体のクノスぺを攻撃表示で特殊召喚しますが、代わりに相手プレイヤーも自分のフィールドからモンスター1体を選んで同名カードを可能な限り特殊召喚できます!来てください、私のヒーローたち!」

 さらに2体、蕾のヒーローが並ぶ。一方糸巻のフィールドには、ユニゾンビが1体……だが彼女のデッキに、そのカードは2枚しか入っていない。

 E・HERO クノスぺ 攻600
 E・HERO クノスぺ 攻600
 ユニゾンビ 攻1300

「クノスぺの効果適用!このカード以外のE・HEROが場に存在する限り、このカードは直接攻撃が可能となります。3体のクノスぺが存在することでそれぞれがこの効果を適用、そしてバトルです、当然私が宣言するのはダイレクトアタック!」

 E・HERO クノスぺ 攻600→糸巻(直接攻撃)
 糸巻 LP4000→3400

「この瞬間、クノスぺの更なる効果が適用されます。このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時、その守備力100を犠牲とし攻撃力を100アップします!」

 戦闘を行うことで成長を遂げた蕾の戦士のその頭頂部に、ほんのり赤みがさす。まだまだ固く閉じられたままの蕾はしかし、確実に花開くための一歩を歩みつつあった。

 E・HERO クノスぺ 攻600→700 守1000→900

「まだ私のフィールドに、クノスぺは2体残っています。続けて連続攻撃!」

 E・HERO クノスぺ 攻600→糸巻(直接攻撃)
 糸巻 LP3400→2800
 E・HERO クノスぺ 攻600→700 守1000→900
 E・HERO クノスぺ 攻600→糸巻(直接攻撃)
 糸巻 LP2800→2200
 E・HERO クノスぺ 攻600→700 守1000→900

「ちまちまちまちまと……でも、やるじゃあないか」
「ありがとうございます!これが私の必殺コンボ、八卦九々乃のクノスペシャルです!」
「クノスペシャル、ねえ。そりゃまた、随分と大層なネーミングだこって」
「ひひっ、いい名前じゃないか。私の血縁だけのことはあるよ、そう思うだろう?」

 コンボの決まった高揚感からか目をキラキラと輝かせ、満面の笑みで胸を張る少女を優しい目で見る大人が2人。老人の言葉に首を縦に振った糸巻が、だがね、と続けて小さく呟いた。

「まだやっぱり、詰めが甘い。おいおい鍛えていけばいいだろうが、今はそろそろ本気で締めさせてもらうよ、八卦ちゃん」
「えっ?」

 びっくりしたような表情の八卦を前に、口元を歪めて赤髪の夜叉が笑う。服の埃を軽く手で払い、おもむろにデッキに手をかける。

「もうメイン2での展開はないみたいだね?エンドフェイズに速攻魔法、逢華妖麗譚(おうかようれいたん)―不知火語を発動!相手フィールドにモンスターが存在するとき、手札からアンデット族1体を捨てることで別名の不知火1体を蘇生またはリクルートする。2体目の不知火の武部を捨て、逢魔の妖刀-不知火をリクルートする」

 先ほどの妖刀とは似て非なる、存在するはずもないもう一振りの妖刀。より赤黒に近い炎を纏うその刀身が、カードショップの店内にふわりとひとりでに浮かび上がった。

 逢魔の妖刀-不知火 守0

「そして、アタシのターン。まずはスタンバイフェイズに、除外されたΩとエアーマンが帰還する」

 PSYフレームロード・Ω 攻2800

「メインフェイズ。墓地の妖刀-不知火の効果により、自身と刀神―不知火を除外することで再びシンクロモンスターを呼び出す。戦場切り裂く妖の太刀よ、冥府に惑いし亡者を祓え!逢魔シンクロ、戦神(いくさがみ)-不知火!」

 妖刀の隣にもう1本の妖刀が浮かび上がり、先ほどと同じように刀身から柄へ、そしてその先へと炎が宿り徐々に人の形を成していく。そこから現れた長い銀髪を無造作に伸ばす和装の男は、二刀流の……その右手には妖刀を、その左手には揺らめく炎の形を模したかのようなオレンジ色の特殊な形状の剣を握る独特な構えをとった。

 ☆6+☆2=☆8
 戦神-不知火 攻3000

「攻撃力3000……ですが、クノスぺにはもう1つだけ効果があります。自分以外のE・HEROが存在する限り、相手から攻撃対象に選ばれない効果……つまりクノスぺが3体並んだことで、いくら糸巻さんがモンスターを並べても攻撃することはできません!」
「わかってるよ、そんなこと。戦神は特殊召喚時に使える効果があるが、今は使わない。代わりにアタシが使うのは、これだ!刀神が除外された時、相手モンスター1体の攻撃力はこのターンの間500ダウンする。真ん中のクノスぺには、ちょっとばかし火傷してもらおうか」

 E・HERO クノスぺ 攻700→200 

「逢魔の妖刀の効果発動。このターンにアンデット族以外の展開を封じる代わり、自身をリリースすることで除外されたアンデット族2体を守備表示かつ効果無効で特殊召喚する!甦れ妖刀、そして陰者!」

 妖刀-不知火 守0
 不知火の陰者 守0

「また、チューナーモンスターが……まさか!」
「そのまさかだよ。レベル8の戦神に、レベル2の妖刀をもう1度チューニング!戦場統べる妖の太刀よ、輪廻断ち切る刃を振るえ!シンクロ召喚、炎神(ほむらがみ)-不知火!」

 蹄の音が響き、揺らめく炎が形を成したこの世ならざる幽鬼の軍馬が現れる。そしてその上にまたがるのは、長い銀髪を後ろで縛り黒白の和装に身を包む男。不知火流の原点にして頂点ともいえる、焔と共に邪を裂き闇を切り、ついには自らを縛る輪廻の輪すらも断ち切った伝説の剣聖。

 ☆8+☆2=☆10
 炎神-不知火 攻3500

「ついに抜き放ったか、糸巻の。切り札の一刀、炎神をよ」
「ああ。まさか素人相手にここまで熱くなるとはな、アタシらしくもない……だが八卦ちゃん、なかなか楽しかったよ。炎神の効果発動!特殊召喚時にアタシの墓地、または除外されたカードの中からアンデット族のシンクロモンスターを任意の数だけデッキに戻し、その数のカードを破壊する!」
「そんな、それでは!」
「クノスぺの攻撃ロック効果も、効果破壊には無力。刀神、そして戦神の2体をデッキに戻し、両端のクノスぺを破壊。不知火流・霊宝の太刀!」

 炎神が騎乗状態のままその妖刀を天高く掲げ集中すると、色とりどりの炎がその刀身を中心に燃え広がる。その姿は本人の白装束も相まってそれ自体がまさしく1本の樹……白銀の根、黄金の茎、そして白玉の実を持つとされる伝承の存在、蓬莱の玉の枝のごとし。

「きれい……」

 目の前で炎が織りなす幻想的な光景に、八卦が1瞬気を奪われて小さく呟く。まるでその言葉を待っていたかのように、妖刀がその場で振り下ろされた。ただそれだけで、3人肩を寄せ合って攻撃に備えていた蕾のヒーローのうち2人が消滅する。

「これで、邪魔者はもういないね。バトルフェイズ、Ωで最後のクノスぺに攻撃」

 PSYフレームロード・Ω 攻2800→E・HERO クノスぺ 攻200(破壊)
 八卦 LP4000→1400

「うぅ……!」
「ラストだ。炎神でダイレクトアタック、不知火流奥義・蓬莱斬!」

 炎神を載せた馬が、初めて動いた。いななきと共に上体を反らしたのち、妖刀を構える主と共に何物も邪魔をする者がいないフィールドを人馬一体となってただ駆ける。見る間に両者の距離は詰まっていき、そして……1瞬のうちに、勝負は決まった。

 炎神-不知火 攻3500→八卦(直接攻撃)
 八卦 LP1400→0





「よし、アタシの勝ち……ん、あれ?おーい、八卦ちゃーん?」

 音もなく消えていくソリッドビジョンを満足げに見送る糸巻だったが、呆然とその場に座り込んだままの八卦の姿を見て慌てて声をかける。糸巻本人の世代ならばデュエルモンスターズ全盛期であったためにあの程度どうということはないが、彼女のようにデュエルモンスターズとの関わりが薄いままに育ってきた初心者にはこれだけ長い間のソリッドビジョンの注視は荷が重かったかと思ったのだ。
 だが、その心配も杞憂だった。放心状態から我に返った少女はがばりと全力で立ち上がり、今日一番に目を輝かせ頬を上気させて糸巻へと詰め寄る。

「糸巻さん、糸巻さん!私のような未熟者相手に付き合っていただき、ありがとうございました!八卦九々乃、感激しました!凄いです、あれがプロデュエリストなんですね!」
「あ、ああ……」

 あまりの興奮っぷりに百戦錬磨の糸巻も、彼女には極めて珍しいことにやや引き気味になる。しかし興奮のあまり周りが目に入らなくなった八卦の方はそうとも気づかず、その両手で彼女の手を固く握りしめてぶんぶんと強く振った。

「糸巻さん、ご迷惑でなければ、また私にデュエル教えてください!私、もっともっと強くなりますから!」 
 

 
後書き
サブヒロイン出さないとモチベ保てない病。いかに前作が某ニンジャ、というかくノ一に依存していたのかがよく分かりますね。皮肉屋タイプもいいものですが、元気っ子もまたいいものです。

それはそうと居合ドロー以降のソリティア、もっと手順増やせば固い盤面作れましたね。まあ長くなるだけなのでやりませんが。糸巻デッキはベースが私自身ずっと愛用しているものなのですが、いまだに持ち主のタクティクスがデッキのパワーに追い付いていないせいで真の力を解放しきれないのが最近の悩みです。

あ、次はまた鳥居のターンです。 
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