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吸血鬼になったエミヤ

作者:炎の剣製
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030話 没カット(本編ではありません)

 
前書き
30分遅れて更新。

030話を読み切ってからこちらをお読みください。
暗い過去です。
こんなん本編にしてしまったら色々と普通の中学生たちのメンタルがヤバイ! 

 
「私に、似ている…」

その呟きは小さいながらもシホから発せられた。
それにエヴァとタマモは気づき「記憶を思い出したのか…?」と聞いたがシホは無意識で言っていたらしい。
もう忘れていた。
そしてそれすらにも気づかない一同はネギに寄っていき口々に「探すの手伝う」と言って聞かなかった。
ネギはエヴァに助けを求めるも「まぁ、私も協力してやっても構わん」とグズッと鼻を啜っていた。
そして夜にまた宴会騒ぎになった。

シホはこれを冷めた目で見て「余計魔法に足を突っ込む要素を増やしてしまったわね…」と誰にも聞こえない呟きをしていた。





それから一同がまた一眠りをするかどうかを話していたが突然夕映がシホの前に出て、

「シホさん、お願いがあります」
「ん? なに夕映?」

夕映の皆にも聞こえる声でいった言葉は全員を振り向かせるには十分だった。
それでなになに?と興味を示しだした。

「私に…私にあなたの現実を見せてくださいです。」
「ッ!?」
「シホさんの…現実…」

ネギ、カモ、アスナ、このか、刹那はシホになにがあったのか知っている為に顔を強張らせている。
だがのどかと古菲、朝倉はまだ聞いた事がなかったために純粋に知りたいという欲求が出ていた。
エヴァは「こいつらにはいい薬かもしれんな…」と呟き、タマモは見せる事でシホがどうなるのか予想し心配げに表情を暗くする。

「魔法に関わるという事はもしかしたら後悔をするかもしれないです。
ですがそれでも知りたいという興味は尽きません。それ相応の覚悟も辞さないと思っています。
そして私に何度も魔法に関わるという事はどういうことか?という事を考えさせてくれたシホさんのいう魔法世界の現実…。
ネギ先生の見せてくれた事もそうですがシホさんの事も知らなければ私はいけないと思うです」
「……………、…正直言って私の記憶はまだあなた達が見るには過ぎたものよ。はっきり言って毒物と同意。
現実世界と魔法世界両面から見ても魔法使いの一部に嫌悪感を催すものだわ。それでも見たい…?」
「シホさん…無理してはいけません」

そこで刹那が声をかける。
エヴァ達を除いてシホがされてきた事を言葉だけだが伝えられ知っている刹那はおそらく全部を見終わる前にシホは頭痛を起こしてしまうと思い心配なのだろう。

「せっちゃんはシホがどんなことをされたのか知ってるん?」
「はい。私はある事がきっかけで知りましたが…壮絶の一言です」
「桜咲刹那がいう壮絶という言葉はまだ生ぬるいぞ? どんなに綺麗に着飾っても魔法使いの醜い欲望が見え隠れしてくるからな。
一応言っておくが麻帆良にいる魔法使いどもはシホの記憶の内容を聞いて嫌悪感をあらわにし怒りに身を震わせていたらしいな」
「タカミチも…?」
「ああ、ぼーや。タカミチはシホを犠牲に助かったものだからな。一番後悔している奴といっても過言ではない」
「高畑先生が…」
「それでも貴様らはシホの記憶を見たいか? クソッタレな現実をその目で見たいか?」

エヴァの雰囲気が少しずつ一変していき威圧感が半端ではなく一同は震えていたがそれでも覚悟の目をしていた。

「…いいわ。見せてあげる。でも一応言っておくわ。私の脳への負荷も相当のものだから途中で終わってしまうと思うわ。
でも、それでも嫌なものを見せることになるから見たくなくなったら言ってね?」
『はい』

そしてエヴァが呪文を唱えて全員をシホの記憶の中へと誘う。




◆◇―――――――――◇◆




記憶に潜った一同を最初に迎えたのは予想していたものとは違っていた。
そこではナギを含めて詠春から譲ってもらった写真に写っていた全員が一緒に鍋をつついていた。

『なぁシホの姉貴。そっちの料理を取ってくれ』
『はい、ナギ。他に欲しい奴はいる?』
『じゃ俺にもくれ』
『それでは私にも頂けますか?』
『だから待てラカン。お前は鍋というものをまったく分かっていない』
『また鍋将軍が出たぞ』
『ご主人様ー。お野菜が切れましたよー』
『わかったわタマモ』
『シホ姉さん。ナギさんとラカンさんが暴走しそうです』
『やれやれ…まったく騒がしいな』

そこではシホとタマモが調理などをしていて、若い詠春が鍋について語り始めていて、中性的な男性がにこやかに笑っていて、ラカンと呼ばれる肌黒い大男がナギと一緒に暴れようとしていて、子供っぽい白髪の男の子がシニカルに笑っていて、渋いおじさんがやれやれとかぶりを振っていて、若いタカミチが皆が暴走しようとするのを見て慌てている。

「わぁ、父さんです! 若い!」
「ホンマやー。お父様も若いな」
「これってもしかして高畑先生…!?」
「これが赤き翼のメンバーだったのですか」
「皆強そうアルな。戦いたいアルよ」
「惜しい…! 写真が持ち込めれば…」

皆がそれぞれ言葉を発している中、記憶の中では、

『やるかてめぇ!?』
『おう! こいやナギ!』
『全員料理をすぐに撤収させなさい! バカ二人が暴れだすわよ!』

シホの指示でそれぞれ速やかに自分の分と近くにあった料理を運び出す。
そして始まるナギとラカンの凄まじいバトル。魔法と剣が入り乱れ拳同士が衝撃波を生み出す。
それによって地形がどんどん変わっていき、その勢いは止まらず予備の食材にまで及び、シホがキレる。

『あんた達はー! 被害は自分達だけで抑えなさい! タマモ、行くわよ!!』
『はいです!』

そしてシホにタマモが憑依し錬鉄魔法を発動し、黒いオーラがシホを包み込み争っている二人に殴りかかる。
それによってナギとラカンも「やべぇ…!」と叫ぶがそれすらも遅く殴り飛ばされる。
そんな光景が続いているとそこにシホの声が聞こえてきて、




―――恥ずかしい光景を見せたわね。ちょっと進めるわね?




「…すごい戦いでしたけどそれと普通に争えるシホさんもかなりの実力ですね」
「シホって昔は過激だったんだねー」
「今より若かったんですから当然だと思いますが」
「思っていたより楽しそうなパーティーだったんですねー」
「おい、お前ら。暢気にしていられるのもそろそろ終わりだぞ?」
『え?』

エヴァの言葉に全員が当然のように反応する。

「シホの記憶がこんな生易しいものだと思っていたのか? これからが地獄だぞ」

エヴァの言うとおり記憶は戦いの連続となっていき、シホ達は敵と何度も戦っている光景がまるで映画のように流れていく。
そしてシホの人生の分岐点が訪れる。

『あれ? タカミチはどこにいったの』
『彼でしたら今は単独で偵察に出ていますよ』
『そう…でも「完全なる世界」も敵は減ってきたけどまだ油断は出来ないわ。アル、私はちょっと見てくるわ。嫌な予感がするし』
『でしたら私もついていきます、ご主人様』
『お気をつけてくださいね、シホ、キャスター』

二人はタカミチが偵察に向かったという遺跡近くまで来ていて、

『タカミチはどこまでいったんでしょうね?』
『さぁ…でも帰りが遅い。なにかと遭遇しているかもしれない。まだタカミチ本人は私達に比べると力不足だから早く見つけないと…見つけた!』

見つけた先ではタカミチが息をきらせながらもなにかから逃げている光景が目に映った。

『なんですか、あの黒い影は…?』
『とりあえず倒しましょうか。タマモ、錬鉄魔法を使うよ』
『はい、ですが制限時間を忘れないでください。時間が過ぎたら副作用で動けなくなってしまいますから』
『分かっているわ。いくわよ!』

そしてシホは赤いオーラを纏い炎を体から噴出させタカミチの前に出て、

『タカミチ、早く逃げなさい!』
『シホ姉さん! 助かった!』
『ここは私が食い止めるからタカミチは皆に知らせてきなさい! 謎の敵がいるって…!』
『はい!』

タカミチは皆のいる場所まで戻っていきシホは一人で食い止めようとするが謎の影の群れはシホの周りを何度も地面を削りながら旋廻していく。

『なにをしているの!?』
『ご主人様! こいつらは地面に魔法陣を形成しています! 早く脱出を!』
『ッ!?』

だが遅く築かれた魔法は発動してしまいシホは幾重にも出現した魔法の帯に体を絞めつけられ拘束されていく。

『こんなもの! 引きちぎって…! なに? 体から魔力が抜けていく!?』
『ご主人様! いけません! この魔法陣は魔力吸収と力の封印を兼ね揃えた魔法です! ルールブレイカーで解呪を―――…』

しかしそこでタマモとの念話も途切れてシホは魔力をほぼ吸収されてしまい気を失ってしまった。


……………

…………

………


次に目を覚ましたときには薄暗い部屋だった。
手足は拘束され、魔力がないためにタマモとの念話もままならない。
そこに黒尽くめの集団がシホを取り囲み、

『ようこそ我らが研究の庭へ。剣製の魔法使い…シホ・E・シュバインオーグ』
『お前達は…!?』
『何者か、と聞きたいかね? しかし無駄な事よ。今よりお前は我々魔法使いの研究材料になってもらう』
『研究材料!? いったいなにをするつもり!?』
『おや? お気づきでないか。お前はある昔に存在したという秘術の真似事で吸血鬼になったのだよ』
『…!?』
『いや、いい顔をしている。歪んだ顔はより一層研究心を燻らせる』

その光景を見ていたネギ達は、

ネギは「なんてことを…!?」と叫び、刹那は「外道が…!」古菲は「最低な奴らネ!」と怒り、アスナは「シホ…!」と悔しそうに歯軋りしていて、他の面々はこれから行われようとしている事を想像し顔を青くしていた。
だが記憶の中の光景は止まらない。

『しかし実験は難航を極めてね…。成功者は君が初めてなのだよ。他の実験者は、ほれ見なさい』

指差した方へと顔だけ向けるとそこにはたくさんの死体の山が積まれていた。

『お前ら! この実験の為に何人を犠牲にした!?』
『さて、ね…しかしお前は適合者だが、先ほども言ったように秘術の真似事で不完全すぎて吸血鬼の不死性はあるものの弱点はたくさん持っている』
『なにが、いいたい…?』
『お前を我々の完璧な操り人形にするためには免疫をつけなければいけない。だからこその実験なのだよ。まずはこれだ』

パチッと男が指を鳴らすと突如としてシホの真下の地面が燃え上がった。

『ぐあ、あああーーー!?』
『まずは火葬の免疫をつけようではないか…。順に首の切り落とし、流水、十字架、白木の杭などを試していこうと思うのだが、どうだろう?』

男の声にシホはただ苦しむ声を上げるしかできないでいた。
その時、シホの本当に苦しむ声も聞こえてきた。



―――ぐっ、うぐ、あーーーッ!!



「いかん! シホの頭痛と苦しみがもう限界に達しようとしている! 中止だ!!」

エヴァの言葉により記憶を見る魔法は解除され一同は現実に引き戻される。
引き戻されてネギ達は、最初に見た光景に絶句するしかなかった。
シホは頭を割れんばかりに押さえて地面に震えながら蹲っていたのだ。いつも冷静で信頼のおける姿は今はなく、ありとあらゆる絶望を味わった儚い少女の姿がそこにあった。
それをエヴァとタマモが必死に宥めていて薬を口にいくつも投与する。
しだいにシホは落ち着いてきたがそのまま気絶した。

「…もう分かったと思うがこれが、こいつが麻帆良に来る前までの20年の長い期間受けてきた屈辱の光景だ」
『20年!?』
「お前ら、これ以上見なくてよかったな? 私は最後まで見たがこの魔法使いどもの所在は一切掴めなかった。知ったときには私の全能力を駆使して殺してやるというのに…」

エヴァはそう啖呵を切りながらも歯ぎしりをしていて、一同はそれはもう青い顔をしていたのであった…。


 
 

 
後書き
型月クロス的にはこっちもいいのでしょうけど、私のメンタルが持ちません。 
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