クロスウォーズアドベンチャー
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第65話:戦いの終わり
ベリアルヴァンデモンを消し飛ばした2体は分離・退化し、それぞれのパートナーの元に。
「やりましたね」
「ああ…それにしてもまさか、大輔の時代に繋がっちまったなんてなあ。とんでもないパワーのせいで一時的に次元が繋がったらしいけど…」
大輔とタイキがハイタッチをして笑みを浮かべる。
しかしタイキは想いを具現化する世界を見遣りながら呟く。
「ああ、多分トリプルマグナモンの必殺技だな。シャイニングゴールドソーラーストームもダークネスシルバームーンストームも空間に影響を及ぼすからなあ…」
「トリプルマグナモン?」
「あそこは想いが力になる世界なんですよ。あそこでパイルドラモンやディノビーモンとか…取り敢えずブイモンの進化系とかデジクロス体は全部出してベリアルヴァンデモンをボコりました。」
「お前、それもう虐めの域だぞ」
ブイモンのデジクロス体1体だけでも敵からすれば厄介なのに、複数掛かりとは想像もしたくない。
「それにしてもここが過去のデジタルワールド…並行世界とは言え、随分と荒れ果てているな…」
キリハが周囲を見渡しながら言う。
「ベリアルヴァンデモン達の暗躍のせいでデジタルワールドの環境が乱れ、その上…世界中の選ばれし子供達をデジタルワールドに転移させたせいでエネルギーが枯渇しかかっている…そう簡単には戻らないだろう」
「ゲンナイさん…」
大輔達がゲンナイに気付く。
デジモンカイザーによるデジタルワールドの破壊。
ダークタワーによる環境変化。
ベリアルヴァンデモンの暗黒エネルギーによる現実世界とデジタルワールドの汚染。
最後は世界中の選ばれし子供達を一気にデジタルワールドに転移させるなど、デジタルワールドは見た目以上にガタガタである。
「未来の選ばれし子供達。君達には感謝している。君達が加勢してくれたおかげでベリアルヴァンデモンを倒すことが出来た」
「いやあ、それほどでも…」
「あんた大したことしてないじゃない」
照れるゼンジロウにアカリがツッコむ。
「デジタルワールド……これが、デジタルワールドか……」
なっちゃんに支えられた及川が周囲を見渡しながら呟く。
長い長い年月を費やしてようやく行くことが出来た自分にとっての夢の世界。
「そうさ、及川。ここがあんたの来たかったデジタルワールドだ…なあ、及川…デジタルワールドが…大人になったあんたを拒絶していたんじゃないんだよ。逆にあんたがデジタルワールドを拒絶していたんじゃないのか?」
大輔が及川の目を見つめながら言う。
「俺がデジタルワールドを…?」
「ああ、あんたはデジタルワールドを大人は受け入れないとか勝手に思い込んで、自分は行けないんだって、そう思い込んでいただけだったんだ。デジタルワールドは、本当はずっと近くにあったんだ。大人でも、信じる心を忘れなかったら、後はきっかけさえあればきっと行けるはずだった。実際あんたはデジタルワールドに来れて…パートナーデジモンと会えたじゃないか」
大輔は及川に抱かれている及川のパートナーデジモンのピピモンを見つめながら言うと、及川は目を見開く。
デジタルワールドもパートナーデジモンも、本当はずっと近くにいた。
ただそれに気付かなかっただけで。
「さてと、この荒れ果てたデジタルワールドを元に戻さねえとな」
「元に戻すってどうやってよ?」
「あそこでさ」
大輔が指差したのは想いを具現化する世界。
「あの玩具箱世界で何をするんですか大輔さん?」
コトネが複数の疑問符を浮かべながら尋ねる。
「想いが力になるなら、あの世界の力でデジタルワールドを復活させるのさ。」
「そんなこと、出来るの?」
ヒカリの問いに大輔は笑みを浮かべた。
「俺達全員でやるんだ。楽勝だろ?何たって俺達には無限大の夢と希望があるんだからさ」
「…そうだね!!」
「全員の想いをデジタルワールド再生の力にすれば…」
「過去のデジタルワールドも元通りになるのね!!」
賢の言葉にアカリが言うと、全員の表情が明るくなる。
「よし、一世一代の…人間とデジモンの共同作業だ。やろうぜ!!」
ブイモンが拳を天に突き上げながら叫ぶと、大輔達や子供達が想いを具現化する世界に入る。
流石に全員は入りきれなかったが、出来るだけ近くに。
「さあ、みんな…覚悟はいいな?もしかしたら、凄え疲れるかもしれねえぞ?」
「やってやるわよ、ここまで来たんだから絶対に!!」
「うん、絶対にデジタルワールドを再生しよう!!」
大輔の言葉に京とタケルがそう返し、及川は子供達と共に立ちながら静かに口を開いた。
「……俺は、夢を持つ力が自分にある事を信じる事が出来なかった。人は誰でも挫けてしまう時がある。けれど、俺はそれを乗り越える事が出来なかった……俺にも、夢を叶える力があったら……君達のように、デジタルワールドを冒険する事が出来たんだろうか……?」
「出来ますよ」
「?」
及川が振り返ると、そこには親友の忘れ形見が優しい笑みを浮かべていた。
「夢を叶える力ならあなたにもありますよ。だって、現にこうして、デジタルワールドに来られたじゃないですか…パートナーデジモンに会えたじゃないですか」
「…そうだね。これが終わったら、俺は俺なりに罪を償おうと思っている。今までしてきた罪を…」
「殆どアルケニモン達がやったとは言え、あんたにも罪が無いってわけじゃないからな」
「ああ…許されるとは思っていない。だが、俺は…」
「確かにあなたは罪を犯しました。ですが罪を償おうというのは間違っていないと思います。大切なのは償おうという気持ちなんですから」
昔の自分なら、多分及川を許せないと思ったかもしれない。
でもこの冒険のおかげで自分は成長出来た。
「ありがとう。流石、浩樹の息子だ。」
「はい。あの…」
「ん?」
「前にお祖父様が言っていたように僕と友達になってくれませんか?お父さんのお話を聞かせて下さい。お父さんが子供の頃どんな人だったのか…」
「ああ、勿論。」
及川は自然に笑みを浮かべ、もう絶望に染まってはいなかった。
夢を、希望を持つ者の表情をしている。
「みんな、みんなの想いを力に変えてデジタルワールドに解き放つんだ。最後の最後まで諦めるな、絶対に何とかするんだ」
全員が目を閉じて想いを強める。
全員の体から輝く光の粒がデジタルワールドに流れていき、黒く染まった世界が再び色を取り戻していく。
「(…最後まで諦めたりしないことで可能性が生まれる。太一、大輔達を見ていると思い出すよ。君とファイル島とフォルダ大陸を冒険し、ネオ達やデーモンと戦った時のことを)」
タグを巡って完全体や究極体とそのテイマー達。
最強最悪の存在とパートナーと共に戦った日々がアルフォースブイドラモンの脳裏を過ぎる。
「(世界が違っても根本的な物は変わらない。大輔も、こっちの大輔も…最後の最後まで諦めない強い心を持っていた。)」
「(私達の冒険の時もそうだったわね、私達が諦めかけた時。“最後まで諦めないで何とかしよう”…その絶対に変わらない姿勢のおかげで私達は戦ってこれた)」
マグナモンと並行世界のテイルモンも懐かしそうに胸中で呟いた。
全員の想いのエネルギーはデジタルワールドを完全に元通りにする。
「ふう…」
全員が溜め息を吐いて、デジタルワールドを見つめた。
世界を救えたことに胸が一杯になりそうだ。
「あ、そうだ。暗黒の種は取り除かなくていいの?」
「この世界の力を使えば暗黒の種の除去は簡単ですよ京さん」
心配そうに暗黒の種を植え付けられた子供達を見遣りながら賢に尋ねる京だが、賢が微笑みながら言う。
「まあ、子供達が希望を取り戻したことで暗黒の種は発芽しないでしょうけど万が一と言うこともありますから」
「そうね、賢君の種も取らないとね。私の想いで取り除いてあげるわ!!」
「京、賢に重い物を押し付けんな」
「黙んなさい!!」
大輔と京の遣り取りに全員が笑った。
「なあ、大輔。一時的にとは言え世界が繋がったんだ。一緒にまた冒険しないか!?」
「いいですねタイキさん。クロスハート全員で冒険しましょうよ」
「それじゃあ行こう!!」
タイキ達が現れた亀裂に飛び込んで、未来のデジタルワールドに。
何故か京達までついて来てしまったが構わない。
全員が未来のデジタルワールドを駆け回ったのである。
…こうしてデジタルワールドでの戦いは幕を閉じた。
人の心の中にも、そして世界中にも光と闇がある。
これからも、ずっと光と闇は戦い続けるだろう。
しかし、心の中の光を…夢を実現する力を忘れなければ大丈夫だ。
何故なら人とデジモンには無限大の可能性が眠っているのだから。
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