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五徳猫

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第五章

「この子が来てからね」
「私の結婚の話が進んだっていうのね」
「本当にね、普通の猫じゃないのよね」
「この前貴女に話したでしょ」
「内緒ってことでね」
「この子化け猫よ」 
 麻紀はわかりやすく話した。
「五徳猫っていうね」
「そうだよ」
 その諭吉も言ってきた。
「この小娘の家に入ったんだよ」
「叔母さんのお家にね」
「昔はヤクザ屋さんの家に住んでてな」
「その人が殺されて」
「こっちの小娘の家に住んでるんだよ」
 諭吉は麻紀を右の前足で指し示しつつ佐紀に話した。
「そうしてるんだよ」
「それはわかったけれど」
「何だよ」
「叔母さんを小娘って言うなんて」
 それがとだ、佐紀は麻紀を見つつ言うのだった。
「私にも言うし」
「当然だろ、俺は明治元年生まれだぞ」
「だからなの」
「その俺から見れば今のご主人もあんたもな」
「小娘なのね」
「そういうことだよ、それとあんたもな」
 諭吉は今度は佐紀にも言った。
「恋愛のことで何かあったらな」
「その時はっていうのね」
「俺に相談しろ、俺は長く生きているだけあってな」
「人の恋愛も見てきて」
「アドバイス出来るからな」
「そうなのね」
「黒猫は福を招くっていうだろ」
 俗に言われていることだ、ただしこれは大阪の話であって佐賀では鍋島の化け猫ということで忌み嫌われている。
「だからな」
「私の恋愛もなのね」
「ちゃんと実らせるからな」
「じゃあその時はね」
「何でも言えよ」
「それじゃあね」
「さて、これから結婚準備よ」 
 麻紀はにこにことして述べた。
「忙しくなるわ」
「花嫁衣裳は金襴緞子か?」
「それもこれからよ」
「そうか、じゃあその話も何でも言えよ」
「頼りにしてるわね」
「おう、任せておけよ」
 笑ってだ、五徳猫は麻紀に応えた。そうして結婚に向けて準備をはじめた麻紀を佐紀と共に笑顔で見守るのだった。


五徳猫   完


                    2019・1・30 
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