許されない罪、救われる心
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55部分:第五話 エスカレートその十一
第五話 エスカレートその十一
「如月って優しいし面倒見がいいし。話せると思うけれど」
「御免なさい」
また謝るだけだった。
「だから」
「何かわからないけれど」
本当にわかっていない言葉だった。
「それじゃあ仕方ないわね」
「うん・・・・・・」
神無はまた力なく頷いた。
「けれど一人にならない方がいいわ」
「一人は」
「幾ら何でも最近酷過ぎるし」
気付いていなくともこうは考えていたのだ。弥生にしても許せないことだった。
だが今は何もないようだった。机には落書きもゴミもない。それで弥生は安心していた。しかしここで、であった。それは裏切られた。
神無が安心して座るとだ。何とだ。
「えっ・・・・・・」
「嘘っ、何これ」
神無だけでなくだ。弥生も驚くことになった。
何と机と椅子には接着剤がこれでもかと塗られていた。それで座った神無は動けなくなった。そして机に着けた手にもべったりと貼り付いた。
「接着剤!?」
「そんな、こんな・・・・・・」
「ちょ、ちょっと待って」
さしもの弥生もこれには我を失っていた。
「これは」
「私、やっぱり」
「椎葉さん、落ち着いて」
また落ち込もうとする神無をまずは宥めた。
「早く。何とかしないと」
「何があったの?」
ここでだ。葉月も登校してきた。
「また椎葉さんに?」
「大変なのよ、接着剤が」
「接着剤?」
「そう、それなのよ」
まさにそれだというのである。ここで葉月も今の神無を見た。
そしてだ。酷い憤りを見せるのだった。
「こんなことまでするなんてね」
「どうしたらいいの、これ」
「大丈夫だよ。何とかなるから」
しかし葉月は冷静だった。
「接着剤もね」
「何とかなるの?」
「引き離す薬があるから」
「それでなの」
「うん、安心していいよ」
こう弥生と当の神無に話す。
「とにかく落ち着いてね」
「うん・・・・・・」
励ましの言葉だ。だがそれでも神無の言葉は力ない。
「すぐにそれを持って来るから」
「有り難う」
「とにかく今は落ち着いて」
またこう告げる神無だった。
「すぐに取って来るから」
「それにしても。間違いなく同じ人よね」
弥生は落書きをしていた人間と今の接着剤を塗った人間は同じだと察した。そのうえでその顔を顰めさせていた。そうなっていた。
「これって」
「そうだね」
いいタイミングでだ。岩清水も来た。
「これはね」
「岩清水君もそう思う?」
「間違いないよ。しかもね」
「しかも?」
「これは椎葉さんをかなり嫌っている人のやったことだね」
「何で椎葉さんを嫌うの?」
弥生にはこれがわからなかった。だがこれも彼女からの主観でしかない。
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