提督がワンピースの世界に着任しました
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第31話 救出作戦
前書き
お久しぶりです、更新を再開します。
「ナガトぉー、まだですか?」
「もう少し待て、金剛」
物陰に姿を隠しながら辺りを伺い、長門と金剛の二人は小声で会話をしていた。彼女たちが向ける視線の先には、ボロボロの布だけで身を包み、首輪を繋がれながら檻の中に入れられた幼い少女達の姿があった。その周りには見張りをしている数人の男達が警戒しながら立っている。
つい先程、飯屋で絡まれ返り討ちにした男たちから聞き出した話。人間オークションの競売に掛けられる商品がある場所という情報を得た長門達は、早速その商品と呼ばれている者たちが居る所へとやって来ていた。
そして見つけた。提督が革命軍から依頼されたという、誘拐されたアマゾン・リリーの少女達を。
これから人間オークションに掛けられる寸前になっている、助け出してほしいと依頼されていた人物。
「あんな姿で……。早く助け出さないと、かわいそうだよナガト!」
「まだ、だ」
今にも飛び出していきそうな金剛を抑えて、長門は冷静にタイミングを見計らっていた。檻の周りに見張りが待機していたから。
普通に戦ったなら人間相手に負けるつもりは1ミリも無いけれど、少女たちを助け出し無事に逃げるためには騒ぎを大きくしたくない。
提督からは、もしも危なそうなら手を引くようにも言われていたので、熱くなっている金剛の代わりに長門が沈着冷静に判断をして指示を出していた。万が一にも任務を失敗してしまったら、傷付くのは自分たちではなく捕まっている少女達なのだから。失敗は許されない。
「よし、行くぞ。そっちの見張りを頼む」
「オッケー、やっとネ!」
見張りの何人かが休憩に入ったのか、人数が少なくなった頃を見計らって行動を起こす。呼吸を合わせて、二人は猛スピードで気づかれる前に見張りに接近した。金剛と長門にとって、ようやく待ちに待った機会。
「ぐぁっ!?」「うっ」「な、うっ!?」「え、うっ」
音を立てず素早く背後から忍び寄り一撃、一瞬の間に4人の男たちが倒された。周囲には他に見張りも見当たらず、しばらく危険は無さそう。
「金剛、少女を」
「わかったネー!」
見張りを倒した後も、長門は周囲への警戒を緩めずに視線を彼方此方に向ける。そして少女達の開放を金剛にお願い。すばやく次の行動に移った。
「大丈夫、私達はあなたを助けに来たんだ。ちょっと待っててネ。そこは危ないかもしれないから、ちょっと離れててネー」
「あ、あなた達は」
首輪を付けられ鉄の檻の中に入れられた少女達。ハンコック、サンダーソニア、マリーゴールドの三人の眼の前に突然現れた二人の女性。仲間を呼ばれる前に軽々と見張りを倒した、長門達に対して警戒心を顕にしながら身を寄せ合っている。
そんな少女達の警戒心を解こうと、金剛は安心するようにと優しい笑顔を向ける。そして、檻の隅に行くように指示を出した。
「一体、何を?」
「ふん!」
困惑するハンコックの疑問には答えず動いた金剛は、普通の人間の力では到底へし折れないような、なかなかに太さのある檻の棒をグニャッと押し広げた。そこからなら、大人でも通り抜けられる広さに檻の隙間が広がった。
「さぁ、早く逃げるヨ!」
「で、でも」
ハンコックは、見知らぬ金剛達が怪しい人間ではなく助けに来てくれたんだと理解して泣きそうになった。だがしかし、ハンコックは立ち上がって金剛と一緒になって逃げ出そうとはしなかった。
「? どうしたの?」
「ソニアとマリーが……」
ハンコックの身体にしがみついていたサンダーソニアとマリーゴールドの二人には意識が無く、動けないでいた。誘拐されてからずっと粗末に扱われ、ここ数日の移送中には逃げ出さないようにと満足に食事も食べられないでいたから。
かろうじて意識のあるのはハンコックだけ。だが自力で立ち上がり、ここから逃げようとする力がなかった。
「なんて酷い……」
少女たちの状況に絶句する金剛。そして、なんとしてでも助け出してあげなければイケナイと思った。
「ナガトォ! 彼女たちは自分で動けないヨ。運んであげないと!」
「了解した」
気付かれないうちに逃げ出すためにと辺りの警戒を続けていた長門は、金剛からの呼び声で状況を把握した。
「二人は私が運ぶ。意識のある、その子は金剛」
「了解ネー」
「あっ、えっ……」
突然の出来事に理解が追いつかない幼いハンコック。
手際よく分担を決めてから、長門はサンダーソニアとマリーゴールドの二人を両脇に担ぎ、金剛はアワアワしているハンコックを背負うと、檻の置かれていた場所から皆で静かに立ち去る。
こうして無事に戦闘も無く、少女たちの救出作戦を成功させた長門と金剛。商品として捕らえられていたハンコック達が逃げ出した事を奴隷商人が知るのは、彼女たちがシャボンディ諸島から逃げおおせた後になってからだった。
後書き
しばらく期間を置いて、暁にて再び創作活動を再開しました。
無謀にも本作以外に、新たな作品を書いてみたりしています。
期待せずに、今後の更新をお待ち下さい。
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