クロスウォーズアドベンチャー
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第63話:強き想いは奇跡を起こす 中編
戦いが始まり、マグナモンが勢いよくベリアルヴァンデモンに殴りかかると全ての力を拳に収束させた一撃を繰り出そうとする。
いきなり繰り出された最大威力の技に目を見開いたベリアルヴァンデモン。
それを横に飛んでかわそうとするが、それを読んでいたマグナモンは軌道を無理矢理変えるとベリアルヴァンデモンの横っ面にエネルギーを纏わせた拳を叩き込む。
「ぐおっ!?」
あまりの威力にそれなりの巨体を誇るベリアルヴァンデモンが転倒した。
「エクストリーム・インパクト。俺の最大の必殺技にして禁じ技のエクストリーム・ジハードのパンチ版だ。拳に奇跡のデジメンタルのエネルギーを一点集中させているから威力はエクストリーム・ジハードを上回る。まあ、全エネルギーを拳に集中させてるから下手すると自爆技になってしまうのが欠点だけどな…どうした?ベリアルヴァンデモン?パンチ1発で戦闘不能か?…つまらないぞ?」
見下すように呟くマグナモンにベリアルヴァンデモンは歯軋りしながら起き上がる。
「調子に乗るな!両世界の王となる俺に対して二度と舐めた口が利けないように…がっ!?」
「一々うるさいんだよお前。喋る暇があるなら攻撃くらいしたらどうだ。それともあっさりと倒されてくれるのか?だったらすぐに倒してやるよ」
ベリアルヴァンデモンの鼻面に跳び蹴りを喰らわせ、仰向けに倒れたベリアルヴァンデモンに拳によるラッシュを叩き込む。
「ぐああああああ!?」
「プラズマシュート!!」
ラッシュの次にプラズマ弾を放って、ベリアルヴァンデモンを吹き飛ばす。
「…………(妙だな…初めにエクストリーム・インパクトを使ったのにまるでエネルギーが減らない。それどころかパワーが上がっている…この世界じゃ、エネルギーが尽きないのか?でもそれだとベリアルヴァンデモンが体力を消耗している理由は…大体今の俺はエクストリーム・ジハードどころかシャイニングゴールドソーラーストームすら使えないはずなのに…何となく使えると思ってやってみたけど…)」
「メルティングブラッド!!」
「おっと!!」
ベリアルヴァンデモンの放った紅い霧がマグナモンの右肩のアーマーに触れると霧が触れた箇所が腐食した。
「この霧…強い酸なのか?」
「ふはははは!!そう、俺のメルティングブラッドは強力な酸なんだ。これでお前をドロドロに溶かして…」
「へえ、そこそこ良い技を持ってるじゃないか。他にも技があるのか?ほれ、見せてみろよ?」
笑みを浮かべ、3本の真ん中の指をちょいちょいと動かして挑発するマグナモンにベリアルヴァンデモンは青筋を浮かべる。
完全に舐められていると感じたのだ。
「王に向かってそのような不遜な態度を取ったことを後悔しろ!!パンデモニウムフレイム!!」
ダークエリアより供給される邪悪なエネルギーを両肩に寄生する生体砲“ソドム”と“ゴモラ”から業火に変えて放つ一撃をマグナモンに直撃させる。
爆発が起き、ブラックウォーグレイモンが盾となって大輔とヒカリ達を庇う。
「はーっはっはっは!!どうだ!!所詮この俺の敵ではな…」
大笑するベリアルヴァンデモンだが、次の瞬間に表情が凍り付いた。
何故なら、煙が晴れた先には自身の必殺技を受けたにも関わらず、殆どダメージを負っていないマグナモンの姿があったからだ。
「成る程、中々の威力だ。あの冒険での経験が無かったら…昔の俺ならかなりのダメージを喰らってたろうな。でも今の俺には大したダメージを与えられないようだな……はああ!!」
気合いを入れると、酸で腐食したアーマー部分が元通りになり、体の汚れと僅かなダメージも消え、全快の状態になる。
「な、何!?」
「大分この世界の仕組みが分かってきたぞ。この世界は想いの強さが力になる世界なんだ。つまりこの世界の恩恵を受けられるのはお前だけじゃない。俺もその対象に入っている。お前を倒す気持ちが強くなればなる程、俺はどんどんパワーアップするようだ…エクストリーム・ジハードが使えるようになったのはそのためか…それじゃあ、早速この世界の仕組みを有効活用するとしようかな?」
マグナモンが凄みのある笑みを浮かべるとマグナモンのアーマーと体が一体化し、身に纏ったアーマーは鋭角的な形状となる。
「…………これがマグナモンの潜在能力を極限まで引き出した姿か……」
大輔が変化したマグナモンの姿に目を細めた。
「X抗体と呼ばれる平行世界のデジモン削除プログラム…Xプログラムに対抗するために生み出し、デジコアに取り込むようになったプログラム…この世界は大した物だな?並行世界の力や知識が簡単に手に入る…ベリアルヴァンデモン…もうお前はお終いだ。特別に見せてやるぞ!!こいつがこの世界で発揮出来るマグナモンXのフルパワーだ!!」
一気に力を放出するマグナモンXの力は暗黒の花の闇すら霞んで見える程の強大な力であった。
「………っ!!」
あまりにも桁違い過ぎるエネルギーに絶句するベリアルヴァンデモン。
「謝るなら今の内だぜベリアルヴァンデモン?まあ、泣いて謝ろうが、土下座しようが許してやる気はねえけどな…」
大輔は凄まじい怒りを瞳に込めてベリアルヴァンデモンを見据える。
「ぐっ…!!」
冷や汗を大量にかいて、一歩一歩近付いていくマグナモンXを見るベリアルヴァンデモン。
「俺はお前を許さねえ。及川のしたことは確かに許されることじゃねえ…でも、友達を失って辛い思いをした及川の気持ちを付け込んで利用したお前を…そして子供達の今よりもっと良くなりたいって気持ちを利用したお前を、俺は絶対許さねえ!!マグナモンX!!遠慮は要らねえ!!徹底的に叩き潰すぞ!!」
「言われなくてもそうするさ!!体力回復の暇なんか与えない!!」
右手を勢い良く突き出し、それによって生じた圧力でベリアルヴァンデモンを吹き飛ばすと吹き飛んだベリアルヴァンデモンをマグナモンXは一瞬で距離を詰め、腹部に左拳による連続打撃を叩き込む。
「ごはあっ!?」
「シャイニングゴールドソーラーストーム!!」
黄金のレーザー光が零距離で炸裂する。
「ぎゃあああああ!?」
弱点である光属性の必殺技を至近距離で喰らったベリアルヴァンデモンが絶叫する。
「まだまだあ!!」
ベリアルヴァンデモンの顔面を掴んで地面に叩き付けるとそのままブースターを最大まで噴かしてベリアルヴァンデモンの顔面を地面にめり込ませた状態で動き回る。
「ぐがあああああ!!や、止めろおっ!!!」
「止めて欲しいか?なら望み通りにしてやるよ!!」
マグナモンXがベリアルヴァンデモンの巨体を勢いよく投げ飛ばし、ベリアルヴァンデモンはいくつかの物質に激突する。
「プラズマシュート!!」
ようやく止まったと思った次の瞬間、プラズマ弾とミサイルの嵐が飛来し、立ち上がることさえ許さないと言わんばかりにベリアルヴァンデモンを吹き飛ばす。
「ぐっ!な、何て奴だ…だが、これくらいでやられる俺じゃあねえ……!俺はやっとの思いで復活したんだ……ここでやられて…」
「どこに逃げるつもりだ?」
隠れて距離を取ろうとしたベリアルヴァンデモンに冷たい声が背後からかかる。
そこには何故かフレイドラモンがおり、冷たい目で自分を見つめていた。
「あれだけでかい口を叩いておきながら、不利になるとすぐに逃げるか…それでよく王を名乗れたもんだな…?」
「ダークナイトモン以上の屑だなお前。あいつの方がまだ根性があったぜ?」
「ベリアルヴァンデモン…お前はもう逃げられないんだよ…俺達を敵に回した時点でなあ!!」
フレイドラモンの背後から何とサジタリモンとライドラモンが現れ、ベリアルヴァンデモンに向けてそれぞれの必殺技を放った。
「ナックルファイア!!」
「ブルーサンダー!!」
「ジャッジメントアロー!!」
フレイドラモン、ライドラモン、サジタリモンの必殺技がベリアルヴァンデモンに炸裂し、マグナモンXに向かって吹き飛ぶ。
「ミラクルグリッター」
マグナモンXは吹き飛んでくるベリアルヴァンデモンに向けて、聖なる光を放った。
「ぐああああああ!?」
「まだまだこんな物じゃねえぞ…お前の下らない野望のために傷付いた賢やデジモン達…そして及川や子供達の苦しみはなあ!!」
次の瞬間、ブイモンのデジクロス体が次々に出現する。
パイルドラモンの各形態やインペリアルドラモンの各形態等もだ。
「くたばれベリアルヴァンデモン!!」
凄まじい威圧感を放つブイモンの進化系とデジクロス体達による一斉攻撃。
それはまるで獲物を喰らおうとする肉食獣の群れのようだった。
「ぎゃあああああああ!!!」
ベリアルヴァンデモンの絶叫が響き渡る。
どれだけ意識が飛びそうなダメージを受けようが、絶え間なく繰り出される攻撃のせいで気絶することすら許されない。
それを見たタケル達は顔を強張らせて見ていた。
マグナモンX達の無慈悲で徹底的なまでの絶え間ない攻撃に頼もしい味方であるはずなのに恐怖を抱く。
「つ…強い…本当なら頼もしいはずなのに…」
「容赦が無さ過ぎて、逆に怖いわ…」
「ベリアルヴァンデモンが哀れに見えてきたよ…怒らせたらいけない人って言うのは大輔君みたいなのを言うんだね…」
闇を憎むタケルですらベリアルヴァンデモンに同情させるくらい今の大輔とマグナモンX達は容赦がない。
「ねえ、賢君…」
「何?ヒカリさん?」
「このまま行けば、ベリアルヴァンデモンは…倒せるよね?」
「え?ま、まあ…あれだけの実力差なら…」
ヒカリの言葉に目を見開きながら賢は答える。
「……本当に…?あんなにしつこいヴァンデモンが簡単にやられるの…?」
ヴァンデモンを良く知るヒカリは不安になる。
インペリアルドラモン達によるポジトロンレーザー一斉発射攻撃を受けたベリアルヴァンデモンは最早ズタボロであった。
「「終わりだな、ベリアルヴァンデモン?」」
大輔とマグナモンXの声が響き渡るとマグナモンXとマグナモンBW、そしてマグナモンが必殺技を放つ。
「「シャイニングゴールドソーラーストーム!!」」
「ダークネスシルバームーンストーム!!」
黄金と白銀のレーザー光がベリアルヴァンデモンに炸裂する。
レーザー光に飲まれたベリアルヴァンデモンは勢い良く吹き飛んだ。
しかしあまりにも威力が強すぎたのか、空間が吹き飛び、ベリアルヴァンデモンは別の空間に飛ばされた。
「追いかけるぞ!!」
「うん!!」
「ほら、みんな。早く!!」
マグナモンX達の無慈悲な攻撃に呆然としていたタケル達だったが、賢に声をかけられたことでハッとなり、すぐに大輔達を追い掛けた。
穴を抜けるとマグナモンXはマグナモンに戻り、ブイモンの進化系達とデジクロス体達は消えてしまい、服装も変化してしまう。
「服が変わった…もしかしてここはデジタルワールドか?」
他の子供達も、さっきまでは冬服だったのにこの世界に来た途端デジタルワールドでの服装に変わっていた。
「ベリアルヴァンデモンは?」
賢が辺りを見回すと、どこからともなく笑い声が聞こえてきた。
そしていつの間にか回復しているベリアルヴァンデモンが岩の向こうから姿を現す。
「惜しかったな、坊や達……もうちょっとでとどめを刺せたのにな。だが、デジタルワールドに来てしまえばこっちのもの。闇の力も思いのままさ」
「何言ってんのよあんた!あんたさっきまでマグナモン達に一方的にボッコボコにされてたじゃない!!」
京が指差しながら言うとベリアルヴァンデモンは腕を真上に振り上げ、闇の力をその体に集めていく。
力が強まるに従って、ベリアルヴァンデモンの体が見る見るうちに巨大になる。
「ヒカリちゃん、賢…大丈夫か?」
闇に敏感なヒカリと賢を見遣る大輔。
ヒカリと賢は一瞬表情を強張らせたが、大輔の声にハッとなって、大丈夫と言うように頷いた。
「お前の思い通りにはさせない!!シャイニングゴールドソーラーストーム!!」
マグナモンがベリアルヴァンデモンに向けてレーザー光を放つが、レーザー光はベリアルヴァンデモンの闇に掻き消されてしまう。
「何?」
「チッ…まだ跳ね返すほどパワーはないか…だが、このまま闇の力を集めれば…!!」
ベリアルヴァンデモンは再び両手を天に掲げ、手から黒いエネルギーを放った。
それはデジタルワールドの空を割って、現実世界すら侵食していく。
「ち、地球が闇に飲まれて行く…!」
「地球のみんなはどうなっちゃうの…!?父さんや母さん、お姉ちゃん達は!?」
闇に飲まれていく現実世界に、子供達は焦りを浮かべる。
「これが…これが本当の目的だったのか!」
「そうだ。俺は現実世界とデジタルワールドを闇の世界に統一させ、両世界を統べる王となるために復活したのだ!!」
「何だって!」
唯一3年前にヴァンデモンと戦ったタケルとヒカリが、嫌悪を込めて言い放った。
「3年前も同じ事を言ってたわ。前とちっとも変わってない!!」
「変わったのは奴のパワーだ!前の何十倍も強くなってる!!」
「みんな、デジクロスだ!!みんなの力を1つに合わせるんだ!!」
【…分かった!!】
マグナモンからブイモンに退化し、エクスブイモンに進化。そして次々に進化し、デジクロスする。
「なっちゃん!!」
「待って、今行くよ!!君達は及川をお願いね!!」
治療が成功したのか、顔色が良くなった及川を子供達に任せてインペリアルドラモンFM達に駆け寄る。
「「「インペリアルドラモンFM!!エンジェウーモン!!ホーリーエンジェモン!!ブラックウォーグレイモン!!シスタモン・ノワール!!アンノウンクロス!!」」」
「インペリアルドラモンXFM!!」
純白の輝きとマグナモンXと同等のパワーを解放するインペリアルドラモンXFM。
「ふん…どんな進化をしようが、今の俺に勝てると思うなよ!!パンデモニウムフレイム!!」
ベリアルヴァンデモンの生体砲から放たれた業火。
インペリアルドラモンXFMは手を前に翳して受け止め、それを容易く握り潰す。
「な、何!?」
「さあ、決着を付けようぜ?ベリアルヴァンデモン!!」
純白の輝きか漆黒の闇か…デジタルワールドで最後の戦いが始まろうとしている。
そして想いを具現化する世界ではマグナモンX達の必殺技の余波で空間に所々罅が入っており、それは並行世界にまで影響を及ぼす。
今から約10年後の並行世界の未来でも、それを確認出来ていた。
「ね、ねえ…タイキ…気のせいかな…?空に罅が入ってるんだけど?」
アカリが、引き攣ったような表情を浮かべる。
あの戦いから1年経ち、舌足らずだったコトネも今では普通に喋れる。
「残念だけど気のせいじゃないな。俺にも見える…もしかして…」
「恐らくデジタルワールドが関係しているのかもしれんな」
タイキが真剣な表情で空を見上げていると、キリハもまた同じように空を見上げながら呟く。
「え!?またデジタルワールドに何かあったってことですか義兄様!?」
コトネが目を見開いてキリハを見遣る。
「デジタルワールド…?それにしては少し違うような…」
「タイキ…タイキ!!」
ネネが疑問符を浮かべながら呟いていたが、Xローダーから聞こえてきた声にタイキは目を見開いた。
「この声…まさか!?」
タイキはXローダーを取り出して、Xローダーから聞こえてくる声に耳を傾けた。
「お前…シャウトモン!?」
「おうよ!!久しぶりだな、タイキ。まさかこんなに早く再会するとは思わなかったぜ。時間がねえから手短に話すぞ。今、俺達のデジタルワールドと人間界の空間に罅が入ってんだろ?ホメオスタシスは言うにはとんでもねえパワーの影響で過去と未来の世界が繋がっちまったらしい」
「過去と未来の世界が繋がった…?」
「そこで、原因を何とかしてくれって、俺達クロスハートとブルーフレアに依頼が来たんだよ。ここまで言えば分かるだろタイキ?俺達がまた一緒に戦う時が来たんだよ!!」
「シャウトモン…!!」
笑みを浮かべるタイキ。
それを見たシャウトモンはタイキ達に質問する。
「お前ら…戦うか?それとも戦わねえか?」
「その二択ならば…答えは1つ!!」
キリハが好戦的な笑みを浮かべながら言うと全員が口を開いた。
【戦う!!】
そう宣言するとタイキ達は光に包まれ、亀裂の中に吸い込まれていくのであった。
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