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許されない罪、救われる心

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4部分:第一話 辛い気持ちその四


第一話 辛い気持ちその四

「いなくなるのは」
「そうね。それはね」
 霜月も文月のその言葉に頷いた。
「やっとね。いなくなるのよね」
「もう少しだな。まあ先輩でよかったんじゃね?」
 長月はここでこう言うのだった。
「だってよ。顧問とかだったらな」
「ずっといる」
「だからなのね」
「ああ、だからまだ先輩でよかったと思うよ、うち」
 霜月と文月にもこう話す。
「それだけはな」
「顧問も酷いのいるらしいからね」
 如月はここでこんなことを話した。
「ほら、斉宮が言ってたじゃない」
「ああ、八条高校に行った」
「あいつね」
「あいつがどうかしたのかよ」
 実は四人は中学も同じだ。ここで中学時代の男友達から聞いた話が出たのだ。
「あいつが言ってたじゃない。体育の平谷は酷いって」
「っていうかあいつそのままやくざでしょ」
「ねえ」
 文月と霜月が如月のその言葉に突っ込みを入れる。
「どう見てもね」
「実際に暴力沙汰で学校追い出されたじゃない」
「そのあいつの話してたから」
 だから話すと。如月は言うのだった。
「それでなんだけれど」
「あいつは確かに有り得なかったよな」
 このことは長月も話す。
「普通の社会なら懲戒免職じゃね?」
「そうよね。教師が生徒いじめてどうするのって話よね」
「全くね」
 文月と霜月は長月の言葉にも頷く。
「いじめって何でするんだろうね」
「いじめてる方って楽しいのかな」
「どうなんだろうね、全然わからないわよね」
「そうよね」
 二人はそのことはまだわからなかった。何一つとして。
 そしてだ。二人のその言葉に長月も頷くのだった。
「うちもそう思うよ」
「いじめられるのはもう嫌よ」
 如月は目を暗くさせてそのうえで伏せながら呟いた。
「本当にね」
「全く。あの先輩いなくなって欲しいよね」
「そうよね」
 こんな話をしていた。四人は今は心からそう思っていた。そんな一学期だった。
 そしてその先輩がいなくなった。夏休み直前に引退したのである。それを受けて如月はほっとした。そのうえで弥生に言うのだった。
「やっとよ」
「もういじめられないのね」
「二年の人は皆いい人だから」
「そう、よかったね」
「うん、もういじめられないで済むから」
 また話す如月だった。ほっとした笑顔で弥生に話す。
「有り難いわ。いじめられないってだけで」
「天国?」
「うん、天国よ」
 まさにそうだというのだ。
「本当にね」
「いじめられないっていうことだけで」
「弥生もそうした経験あるでしょ」
「うん、まあ」
 そう尋ねられるとだった。弥生も心当たりがあった。幼い頃のことを思い出してだ。そのうえで如月に対して話をするのだった。
「小学校の一年の時にね」
「ああ、あんたそういえばその時って」
 長月達とは中学校からだが弥生とはだ。幼稚園の頃からの友人同士なのだ。それだけに二人の絆はかなり強いものである。
 
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