許されない罪、救われる心
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37部分:第四話 岩清水健也その三
第四話 岩清水健也その三
「弟さん大事にするのはよ」
「ただねえ。如月の場合はね」
「そうよね」
ここで三人は少し苦笑いになって述べた。
「少しブラコンの気があるけれど」
「それがね」
「そうかしら」
本人はあまり自覚していない顔で言葉を返した。
「そこまでいかないけれど」
「いや、いってるし」
「そうよね」
文月と霜月がすぐにそれを否定した。
「もう充分にね」
「いってるから」
「そうかな」
如月は二人の返答に首を捻らせた。
「やっぱりそこまでは」
「だからいってるから」
「まあ極端じゃないからいいけれどね」
「弟は弟よ」
線引きする言葉だった。
「大切なね」
「大切か」
「そう来るのね」
「そうよ、この世でたった一人じゃない」
このことを強調してやまない。如月にとってはそうなのだ。
「だからね」
「弟ってそんなに大事かな」
「如月にとってはそうなのよね」
文月と霜月は顔を見合わせて話す。その彼女と睦月のことをだ。
「前からだし」
「そうそう」
「ずっと前からな」
「生まれた時からよ」
如月は三人の言葉に返して述べた。
「それはね」
「言うよな。まあとにかくな」
長月はその彼女の言葉を聞いてまた言った。
「そのお菓子買うか」
「そうよね。弥生もいいっていうし」
「それならね」
こんな話をして朝の時間を過ごした。その後のホームルームである。その時に一人の男子生徒が入って来た。
やや小柄で黒縁眼鏡をかけている。黒い髪を七三にしており何処か神経質な感じを受ける。この学校の制服を律儀に着こなしている。
その彼がだ。自分から名乗ってきた。
「岩清水健也です」
「岩清水かあ」
「宜しくな」
クラスメイト達はその彼をまずは迎えた。
「席はね」
「あそこですね」
「そうよ、あそこよ」
先生がその彼に空いている席を勧めた。そこに座ろうと向かう。
しかしここでだ。彼はふと如月達に目をやったのだった。
「?」
「何?」
如月だけでなく長月達も見る。四人はその視線を感じ取ってふと目をやった。
「何かあるのかしら」
「さあ」
四人にはわからない。岩清水はその間に自分に用意された席に座った。
彼はこの時は何もしなかった。少なくとも如月達は気付かなかった。
だがこの日の放課後だ。彼は自分の従兄である岩清水健一郎と話していた。話をする場所は従兄の部屋だった。パソコンがある。
そのパソコンを前にしてだ。二人は話をしていた。
「怪しい奴はいたかな」
「いたよ」
岩清水はこう従兄に述べた。
「四人ね」
「そうか、いたんだ」
「お兄さんの言った通りだね。気配でわかるよ」
彼はこうも話した。
「何か違うね」
「そうだろ?注意して見ればわかるんだよ」
従兄は穏やかな笑顔で彼に話していた。
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