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戦国異伝供書

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第二十七話 幸村と茶その四

「そしてお話したことも」
「それではです」
「お会いしてですな」
「お話された方が」 
 まさにというのだ。
「いいと思います」
「左様ですか、では」
「はい、真田殿はご自身の見聞を広められることがお好きですな」
「それも生きがいです」
 己をひたすら高めることを目指す、それが幸村なのだ。だから鍛錬も学問も日々欠かすことはないのだ。
「何といいましても」
「ではです」
「ここはですな」
「はい、是非」
 この度はというのだ。
「宜しければそれがしか羽柴殿が共にいますので」
「松永殿とですな」
「お会いして下さい」
「それでは」
 幸村は慶次のその言葉に頷いた、だが利休から茶のことを伝授してもらっている時に慶次の話をするとだった。
 するとだ、利休は幸村に眉を顰めさせて言った。
「どうにも」
「利休殿としては」
「賛同しかねます」
「松永殿とお会いすることは」
「やはりあの御仁はです」
「天下の大悪人ですか」
「そうとしか思えませぬ」
 どうしてもというのだ。
「若しお会いすれば」
「茶に毒が」
「妖術を備えていることも」
 この危惧もあるというのだ。
「そしてその術に惑わされることもです」
「有り得ますか」
「それがしそうも思いまする」
「松永殿は妖術も備えているのですか」
「そうした話はまだ出ていませんが」
 それでもというのだ。
「あの御仁です」
「多くの謀を用い悪を為してきた」
「そうした方ですから」
 それだけにというのだ。
「まさにです」
「何をされるかわからないからですか」
「妖術だのを使ってもおかしくはありませぬ、そもそも」
 利休はさらに話した。
「あの御仁は氏素性がわかりませぬ」
「急に、ですな」
「三好家に仕官して」 
 そうしてというのだ。
「それまでのことはです」
「わかりませぬか」
「はい、一切」
 まさにというのだ。
「年齢はあの通り結構な高齢ですが」
「六十を越えておられるとか」
「左様ですが」
「その他のことはですか」
「何処でどういった生まれなのか」
 そうしたことがというのだ。
「わかっておりませぬ」
「謎に包まれた御仁ですか」
「それでいて古今東西の書にも茶にも通じ茶器も持っている」
 平蜘蛛をはじめとして天下の名器をというのだ。
「こうしたことも謎ですし」
「わからぬことばかりですか」
「そうした御仁なので」
 だからだというのだ。
「余計に妖しいのです」
「それがしにもですか」
「それがしは薦めませぬ」
 利休はまた幸村に話した。
「松永殿に会われることは」
「そしてこのことは」
「慶次殿の他は羽柴殿だけですな」
「反対せぬのは」
「はい、蠍には決して近寄らぬことです」 
 利休もまた松永の仇名を口にした。
「何時毒針で刺されるかわかりませぬ」
「そして命を奪われる」
「そうなりますので、蠍は音もなく近寄って」 
 そうしてというのだ。 
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