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アイテム収集家の異世界冒険話

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02話 FF7編スタート

「ふぅ、無事に到着っと」

 世界を超えてやって来た者の言葉とは思えない、気軽な第一声。しかし、志陽にとっては慣れた出来事だったのでお気楽な態度だった。

 彼が降り立った場所は、四方を木々で囲まれた先の見えない暗い森の中だった。志陽が空を見上げてみると、明るく青い空が見える事から時刻は夜では無いと推測できた。しかし、森の中は木で覆われている為に視界が悪く薄暗い。

 志陽の冒険はいつも、こんな風な森の中から始まる事が多かった。彼の住んでいる現代では、なかなかお目にかかることのない深い森の中。まずは、この付近に村か街が無いかどうか人の住んでいるような場所を探す事から志陽は行動を始めた。

 街で情報を集めて、この世界に存在するというマテリアと呼ばれているアイテムを見つけ出す。その他にも珍しい武器や防具、レアアイテム等を探し出してゲットしコレクションに加える。それが、志陽がこの世界へとやって来た目的だった。



「おっと、モンスターが居るな」

 地図が無いため、あてもなく勘を頼りにして森の中を歩いていると緑色をした恐竜型のモンスターや巨大化したカエル数匹と遭遇した。恐竜型の方はともかく、もう一方は見た目がカエルだけれど通常の見慣れたモノより何倍も大きいし魔力を感じる魔生物だ。

 モンスターが睨みを効かせてきたり、歌のような鳴き声を上げて志陽に襲いかかってくる。そのまま受けると石化したりカエル化する攻撃だと分かったので、襲われた志陽はモンスターからの敵意を感じ容赦なく討伐しておくことに決めた。

 なにも無い空間に手を伸ばした志陽は、自身の能力を駆使して武器を取り出してくると戦いに備える。

 志陽が取り出し構えたのは、以前に別の世界にて入手した稲妻の剣というモノだった。反り返った威圧的な形状でありながら、きらびやかな装飾が施された幅広の美しい片手剣だ。

 美しい見た目だけではなく振るうだけで攻撃呪文の効果が発動される、なかなかに便利な武器でもあるので志陽は戦う際に重宝していた。

 目にも留まらぬ速さで剣を振るうと、数秒後には襲いかかってきたモンスターが全て返り討ちにあい絶命。圧倒的な志陽の戦闘能力の高さによって、異世界に到着してから初のモンスター襲撃を軽々突破する。



「お兄さん、とっても強いんだねぇ!」

 モンスターとの戦いが終わって危険が無くなった直後、モンスターを倒したことによってドロップしたアイテムを回収している志陽の眼の前に女の子が飛び出してきた。妙にデカイ手裏剣を持った姿が目立つ美少女。そんな彼女は、戦闘でモンスターを圧倒した志陽の強さを褒め称えながら、ゆっくりとした足取りで志陽の側に歩き近づいてきた。

「ん?」
「いやいや、アタシは敵じゃ無いよ! とっても強いんで感心してたんだ」

 戦いが終わった志陽が武器を手に持ったまま、視線を少女に向けたのを敵対したと勘違いしたのか、両手を上げて敵意無しと弁解しつつ少女は近寄ってくる。ただ、彼女の瞳が怪しく光ったのを志陽はハッキリと認識していた。

「スキあり!」
「甘いな」

 歩いて近づいてきた少女は突然、地面に倒れ込むような低い姿勢になってスピードを上げながら志陽に接近する。そして、稲妻の剣に手を伸ばして奪い取ろうとした。だが、その目論見はアッサリとかわされる。



 少女の素早い動きは常人なら見失ってしまうだろう、なかなかのモノだった。けれども、志陽にとっては脅威では無く対処可能だったのでアッサリと身体を傾けて、伸ばされた少女の手を避けたのだった。

「ム、やっぱり只者じゃないね。でも、本気を出したアタシ程の強さじゃない! 痛い目に合いたくなかったら、その手に持っている剣と今の戦いで手に入れたアイテムを全部を置いて行きな! 見逃してあげる」
「追い剥ぎ、か」

 隙を狙って志陽の持ち物を盗もうとしたが失敗した少女は次の手として、なぜか自信満々で実力行使に打って出てきた。彼女は戦ったら負けるつもりは無いと自信たっぷりになって、「シュシュシュ!」と言いながら拳で風を切り威嚇してくる。

 小娘と侮って戦ったりしたのならば、たしかに厄介そうだけれど油断しなければ負ける要素は一切無い。そう思った志陽は、少女の言葉に従うつもりはこれっぽっちも無かった。

「俺の大切なコレクションを奪うつもりなのだとしたら、容赦はしない」
「ちょ、ちょっと……じょーだん、冗談だって!」

 アイテムをコレクションするのが趣味の志陽にとって、苦労して集めてきたコレクションを奪われる事は何よりも嫌だった。たとえ、それが女子供相手でも許さない。奪おうとしてくる者は、みんな敵だ。本気になった志陽の姿を見て、これはヤバイと危険を感じた少女は慌てて降参する。

「そうか。じゃあ、俺は行くぞ」
「え? ちょっと、待ってよ!」

「まだ何か用か?」
「それならお兄さん、アタシと組まない?」

 体の向きを変えて、別れようとする志陽を呼び止めた少女。面倒臭そうな表情を浮かべつつも対応する志陽に彼女は、パーティーを組まないかという提案をした。提案を聞いた志陽は顎に手を当て少し考えてから、答えた。

「ん……、まぁ良いだろう」
「ホントに! アタシの名はユフィ、ひとつヨロシク!」

「志陽だ」
「ショウね! お宝を目指して、一緒に頑張りましょう!」

 まだ、やって来てから間もない異世界にて情報を得る為に原住民の協力は都合が良いだろうと考えたから。アイテム収集の為の旅仲間として、一緒に同行することを承諾した。

 一方、強力な戦力を手に入れたとほくそ笑むユフィと名乗る少女。

 こうして二人は出会って、二人一緒に旅をすることとなった。



「へへへ……うまくいったよ。あとはアレをナニして……。クックックッ……」
(全部、聞こえてるんだがなぁ……)



***


「へー、いちばん最初に出会ったのがユフィちゃん、か。珍しいと言うか何というか」

 最初は、主人公であるクラウドらと一緒に旅に出たのだろうと予想していた栄一の考えは大きくハズレていて、ファイナルファンタジー7でも隠しキャラクターとして知られているユフィ・キサラギと旅を始めたと聞いて驚いていた。

「ほら、この娘だ」
「うわぁ、やっぱり可愛いなぁ」

 志陽が向こうの世界に持ち込んだデジカメで撮ったユフィの写真を、栄一に見せる。海を背景に、楽しそうに笑顔を浮かべている美少女が写っている。それを見た栄一は、「ふぉぉぉぉ」と大興奮。

 異世界に渡れる能力について知っている栄一は旅の土産話と共に、志陽には旅の間に出会ったり仲間になった可愛い女の子達の写真を撮って持ち帰ってくれないかと、事前にお願いをしていた。それを聞き入れて毎回しっかりと写真を持ち帰ってくる志陽。

「それで、続きは?」

 じっくりたっぷりとユフィの写真を堪能した栄一は、それからどうなったのかと話の続きを促す。

「あぁ、それから」

 前のめりになって興味津々の栄一に尋ねられた志陽は、異世界であった旅の話についての続きを話し始める。 
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