許されない罪、救われる心
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27部分:第三話 歪んでいく心その五
第三話 歪んでいく心その五
「だから約束して。ラクロス部だけの話にするって」
「わかりました」
「それで」
それを受けた部員達はだ。その多くが言った。
「絶対に他の人に喋りません」
「それ、約束します」
「有り難う」
皐月は彼女達の言葉を聞いてだ。満足した顔で頷いたのだった。
「それじゃあ」
「はい、それじゃあ」
「絶対に見つけ出して」
「秘密にします」
「御願いするわね」
こんな話をしてから部活に入る。如月達はこの時は何も言わず静かにしていた。そして部活が終わってからだ。マクドナルドで知り合いがいないのを見計らってから。そのうえで小声でこそこそと話をするのだった。
「どうする?」
「どうするって?」
如月が霜月の言葉に応えた。それぞれチキンナゲットやハンバーガー、コーラにマックシェイクといったものを楽しみながら話をしている。
「いじめのこと?」
「そうよ。部長本気になっちゃったじゃない」
霜月は危惧する顔でこう言った。
「若し見つかったら」
「大丈夫よ」
如月はその霜月を安心させるように言った。
「それはね」
「見つからないっていうの?」
「そう、部活ではもうおおっぴらなのは止めてね」
そうするというのだった。
「それでいけばいいから」
「けれどそれでもよ」
今度は文月が言ってきた。霜月と同じ顔になっている。
「クラスでも弥生とか怒ってるじゃない」
「だよな。あいつああいうこと嫌いだしな」
それを長月も指摘する。
「絶対に見つけようとするぜ」
「弥生の性格はあんたが一番よくわかってるでしょ?」
文月はその如月を見ながら話す。彼女は長月と並んでその文月、そして霜月と向かい合う形で席について話をしているのである。
「ずっと一緒にいるんだから」
「勿論よ。よくわかってるわ」
その通りだと答える如月だった。
「それはね」
「じゃあわかってるんだったら」
「どうすればいいのよ、弥生には」
文月と霜月はその怪訝な顔で如月に問うた。
「見つかったら絶対に怒るわよ」
「室生だっているし」
「葉月ね」
如月は室生と聞いて言った。
「あいつもいるわね」
「二人がいるから」
「二人に見つからないようにしないと」
「だよなあ」
長月は如月の横で腕を組んでいた。
「続けるんだろ?いじめ」
「勿論よ」
如月は長月の今の問いにすぐに返した。
「止める筈ないじゃない。絶対に許さないわよ」
「それじゃあ余計に見つからないようにしないとな」
「おおっぴらじゃないといいのよ」
ここで如月は言った。
「そんなゴミとか入れたり落書きとかしなかったらね」
「じゃあどうするのよ」
「一体」
「落書きにしてもね」
まずはそこから話すのだった。
「机とか下駄箱とかロッカーじゃなくてね」
「ええ」
「何処にするのよ」
「教科書とかノートとかね」
そこだというのである。
「他には。最近よくあるネットに書くとか」
「ああ、それいいな」
長月もそれを聞いて言った。
「あれ目立たないうえに効くらしいな」
「そうよ、おおっぴらにやらなくても色々とあるのよ」
如月はどす黒くなっているその笑みで話を続ける。
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