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戦国異伝供書

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第二十六話 検地と刀狩りその十二

「そのことは」
「拙者もそう思っていますが」
「真田殿は茶の道については」
「茶を飲んだことも稀で」
 それでというのだ。
「茶器を使ったことなぞ」
「ありませぬか」
「椀で茶を飲んだ位です」
 茶器を使ったといえばというのだ。
「それこそ」
「左様ですか」
「はい、ですから」
 それでというのだ。
「どの茶器をどう使えばよいか」
「わかりませぬか」
「全く」
 まさに何一つ、というのだ。
「わかりませぬ」
「それで困っておられますか」
「そうなのです、今度利休殿にお聞きしますが」
「利休殿にお聞きすれば」
 どうかとだ、慶次もすぐに答えた。
「まさにです」
「茶のことはですな」
「わかります、それで万事解決します」
「ではその時まで待てばいいですか」
「そうですが」
 しかしとだ、慶次は幸村に笑って話した。
「茶を飲みたくはないですか」
「茶をですか」
「茶自体はありますか」
「はい、近頃結構手に入り」
 茶自体はとだ、幸村も答えた。
「拙者の屋敷にも多くです」
「ありますな」
「ですから」
 それでというのだ。
「飲むことは出来ます」
「それは何より」
「しかし茶器を使える者がおりませぬ」
 茶を飲めてもというのだ。
「肝心のそれが」
「だからですな」
「飲めませぬ」
「ではです」
 慶次はここまで聞いて言った。
「僭越ながらそれがしがです」
「茶をですか」
「煎れて宜しいでしょうか」
 こう申し出るのだった。
「それでは」
「宜しいですか」
「はい、そしてです」
 慶次は幸村にさらに言った。
「茶器を使いますので」
「それの使い方ですな」
「宜しければ」
「見せて頂きます」
「それでは」
 こう話してだ、そしてだった。
 慶次は幸村に茶を煎れることにした、そのうえで話すのだった。


第二十六話   完


                 2018・11・16 
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