許されない罪、救われる心
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168部分:第十五話 許される心その九
第十五話 許される心その九
「もう少し落ち着いたら戻ってきていいわよ」
「えっ、それって」
「本当ですか!?」
「私達が」
「部活に」
「私が嘘を言ったことがあるかしら」
驚く四人にだ。こう返す弥生だった。
「そんなことがあったかしら」
「いえ、それは」
「一度も」
「そうよね。なかったわね」
皐月は強い声で四人に話す。
「誰かが何を言ってもその時は気にしないで」
「ですが」
「それは」
「戻ってきたくなかったらそれでいいわ」
その時はともいうのだった。
「けれど戻ってきたら」
「その時は」
「その、何が」
「私はいじめとかそういう陰湿はことは許さないわ」
きっぱりとした断言だった。
「それは誰についても同じよ」
「誰についてもですか」
「だから私達も」
「誰がするのもされるのもね」
落ち込もうとする四人への言葉だった。
「言っておくけれどね」
「えっ」
「それって」
「ええ、そうよ」8
また言う皐月だった。
「貴女達がされるのもね。許さないわ」
「そうなんですか」
「それが先輩の」
「考えよ。だからいいわね」
皐月の言葉は続く。
「そういうことはね」
「また。部活に」
「戻っても」
「その時はもう絶対にいじめはしないこと」
条件も出してきた。
「とはいってももうできないわね」
「痛いですから」
如月が俯いて言った。
「とても」
「痛かったのね」
「こんなに痛かったのははじめてです」
そうだというのだった。
「ですから」
「だから二度としないのね」
「はい」
皐月の言葉に対してこくりと頷いてみせたのだった。
「何があっても」
「そうしなさい。それじゃあね」
「部活に」
「貴女達が決めるといいわ」
皐月はだ。優しい顔になっていた。
「いいわね。それじゃあね」
「はい」
「若し戻ったら」
「その時は。ですね」
「いじめは許さないからね」
これが皐月が四人に告げる言葉だった。四人は皐月の言葉を受けてそのうえで自然と涙を流していた。それは傍にいる弥生も同じだった。
その夜だ。極月はこっそり家を出ようとした。手には何か如何にも重そうで細長いものを持っている。それを持って家を出ようとする。
しかしだ。玄関の扉を開けたところでだ。後ろから声がしてきた。
「何処に行くの?」
「何だ?」
「今から何処に行くの?」
神無だった。彼女が兄の背に声をかけてきたのだ。
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