戦国異伝供書
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第二十五話 天下の政その七
「後ろを確かにしてな」
「天下を治めることもですか」
「考えておる、仕組みとしては執権の中でもな」
室町幕府で将軍を支えていた者達だ、言うならば幕府の宰相と言うべき者達だった。
「力の強い」
「そうした者を置いてですか」
「天下の政にあたらせる、数人の執権の様な者の上にな」
「言うならば摂政ですな」
「それじゃ、それを置いてな」
「織田家が治める天下を護りますか」
「そうしていこうと考えておる、よいな」
信長は息子達に告げた。
「今後はな」
「その様にしてですな」
「天下を治めていきますか」
「これからは」
「そうじゃ、土台を築く土や石は揃った」
今はその段階だというのだ。
「餅ならついた。後はな」
「土台を築いてですな」
「餅ならこねる」
「そうしていきますな」
「そうじゃ、そしてその土台の上にじゃ」
さらにというのだ。
「城を築くぞ」
「天下を築くそれを」
「土台を築いた後は」
「その様に進めていきますか」
「うむ、これより数年新たに領地となった国々を治め」
そうしつつというのだ。
「土台もじゃ」
「築いてですな」
「統一してからは城を築きますか」
「土台の上に」
「そうしていく、お主達もじゃ」
三人もというのだ。
「これからも働いてもらう、くれぐれも身を慎むことじゃ」
「身を、ですか」
「それをですか」
「大事にせよというのですか」
「酒と女にはな」
この二つにはというのだ。
「くれぐれもじゃ」
「そういえば女については」
信忠はこのことについて険しい顔で述べた。
「よく花柳において」
「病があるな」
「随分恐ろしい病ですな」
「あれにかかれば助からぬ」
そうなるからだというのだ。
「間違いなくな」
「身体に紫の斑点、そして瘡蓋が出来て」
「鼻が落ちて身体が腐って死ぬな」
「左様ですな」
「だからじゃ」
「女にはですか」
「男にもな」
即ち色全体にというのだ。
「楽しんでもじゃ」
「迂闊にはですな」
「手を出さぬことじゃ」
病を得ていそうな女と遊ぶなというのだ。
「決してな」
「さもないとですな」
「その病で早死にしますな」
信雄と信孝も言ってきた。
「花柳に行く者では多いですが」
「あの様に死んでしまうからですか」
「お主達も気をつけよ、酒もな」
信長は酒は飲まぬ、だがそれでも言うのだ。
「あれもじゃ」
「ですな、過ぎると毒です」
「それで身体を崩した者は多いです」
「命を落とした者も」
「実に多いです」
「それでじゃ、酒もじゃ」
こちらもというのだ。
「慎むのじゃ」
「わかりました」
「我等も気をつけます」
二人も父に約束した。
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